ヒロイン・喜美子役の戸田恵梨香さんが、毎週の放送の中から印象に残ったシーンやエピソードについて語ります。
家族を壊してでも突き進もうとする喜美子に、天才になる人の片りんを見ました
事前に計算した窯焚きの日数より多くかかったものの、なんとか目標温度の1200度まで達することができた穴窯。しかし望んでいた色が出ず失敗。ばく大なお金がかかる穴窯を続ける前に、賞を取って、女性陶芸家としての名を上げるべきだという八郎(松下洸平)の提案を振り切り、喜美子は2度目の穴窯に挑戦します。しかしまたしても失敗。炎にとりつかれた喜美子は、とうとう武志(中須翔真)のために積み立てた貯金にまで手を付けようとします。喜美子は必死に止める八郎のことばにも聞く耳をもたず、とうとう八郎は武志を連れて家を出ていってしまいます。
「穴窯を作る前は、『必ずいい作品を作ります』と言っていた喜美子ですが、1度目失敗したあとからは、売れなくてもいい、なんとしても自分の作りたいものを作る、という気持ちが強くなっているんです。今までお金を大事にして、家族のために一生懸命やってきた喜美子の中に、家族が離ればなれになってでもやり続けたいという狂気にも似た熱意が生まれているんですよね。本当にやりたいことに出会った時、これまで積み上げてきたものを壊してでも突き進もうとする喜美子に、天才になる人の片りんを見ました。凡人には分からない世界ですよね。私自身は凡人なので、八郎さんの考えが正しいのではないかと思ってしまいますし、『喜美子、八郎さんの言う通り、今ちょっと待てばいいんじゃないの?』って思うんですけど(笑)、喜美子は少しの時間も待てなくなるんですよね。そこまでのものに出会えた喜美子がうらやましくもあり、少し怖くもあり、なんとも言えない複雑な気持ちで演じています。何かに飛び抜ける人は、その代償として何かを捨てるということがあるんですね」
「ひとりも、ええなあ」というセリフを台本で読んだ時、涙が止まりませんでした
家を出た八郎は武志と共に照子(大島優子)のところに身を寄せています。怒った照子が喜美子のもとに飛んできて説得を試みますが、喜美子は照子の忠告にも耳を貸しません。
「『ひとりも、ええなあ』というこのセリフが、17週までで一番衝撃を受けたセリフでした。台本を読んだ時、涙が止まりませんでした。今までずっと家族のために生きてきて、それが喜美子の幸せでもあったのに、『ひとりも、ええなあ』って言うなんて...。このセリフを言う時、武志を含め、家族みんなの顔が浮かんできました。こんなにも重いことばがあるんだなと思うと鳥肌が立ちました。これから先の喜美子は孤独を選んでいくのかなと想像して、正直なところ重い気持ちにもなりましたが、女性陶芸家の人生を体現する、ということがこれから本格的に始まるんだと思うと、身が引き締まる思いでした」
喜美ちゃんでいられる心地よさ。荒木荘の人たちは心の支えです
百合子(福田麻由子)と信作(林遣都)のはからいで、気分転換に大阪にいるちや子(水野美紀)を訪ねることになった喜美子と武志。ちや子は喜美子には内緒で、荒木荘の懐かしい人たちを呼び寄せてくれました。
「久しぶりに荒木荘の人たちと会って思ったことは、みんな変わって進化し続けているけれど、変わらない部分があるということ。そのことが、喜美子の心の支えになっているんです。『スカーレット』の本格的な撮影が始まったのは荒木荘からなので、『あ、この感じ!』という安心感と、"喜美子"ではなく"喜美ちゃん"でいられる居心地のよさを感じました。自分の幼かった頃を知ってくれている人たちで、なおかつ進み続けている人たちに再会できて『負けちゃいけないんだ』と背中を押してもらった気持ちになりました。
大久保さん(三林京子)の『まだそんなんやないんやったら、そんなんになるまで気張んなはれ』ということばは心にグサッと刺さりました。こんなにも救いになることばってあるんですね。それは大久保さんだから響くことばなんでしょうね。ちや子さんだから響くことば、雄太郎さん(木本武宏)だから響くことばもそれぞれあります。そして、さえずりのマスター(オール阪神)の底抜けな明るさ。本当にいとおしかったです。
それにしても、さださん(羽野晶紀)のことは話題になったのに、だれも圭介さん(溝端淳平)のことは口にしないんですね(笑)。それから、雄太郎さん。どうも一発屋で終わりそうな雰囲気の髪形、服装でしたね(笑)。あか抜けた雄太郎さんが少しさみしくもありました」