「仏教・儒教・旧約思想」が同時期に生まれた理由

「資源・環境の限界」で考える「地球倫理」思想

旧約(ユダヤ)思想(キリスト教やイスラム教の源流)・仏教・儒教などが同時期に生まれたことをご存知ですか? (写真:GummyBone/iStock)
多くの企業や経済団体などが「SDGs(持続可能な開発目標)」について言及する機会が増えている。こうした流れの象徴的出来事として前回記事ではグレタ・トゥーンベリさんの発言を取り上げた。
このたび『人口減少社会のデザイン』を上梓した広井良典氏が、今回は、同じような資源・環境問題に直面していた紀元前5世紀頃の「枢軸時代/精神革命」を切り口に、人類史的な視点から「地球倫理」が企業行動や経営にもたらしている変化を論じる。

「枢軸時代/精神革命」をめぐる構造

前回、スウェーデンのグレタさんをめぐる動きを手がかりに、現在という時代が人類史の中での3度目の「拡大・成長から成熟・定常化」への移行期にあたること、またそこでは「地球倫理」とも呼ぶべき新たな思想や価値が求められていることを述べた。

『人口減少社会のデザイン』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ここで「地球倫理」の内容を考えていくにあたり、1つの手がかりとなるのは、紀元前5世紀頃の「枢軸時代/精神革命」をめぐる動きである。

なぜなら、1万年前に始まった農耕文明が、その発展に伴って人口や経済の規模が大きくなる中で資源・環境制約にぶつかり、「物質的生産の量的拡大から文化的・精神的発展へ」という方向に移行する際に生じたと考えられるのが紀元前5世紀頃の「枢軸時代/精神革命」であり、それは工業文明が資源的・環境的制約にぶつかっている現在の状況とよく似ているからだ。

そこでは、前回も少し述べたように、地球上のいくつかの場所で“同時多発的”に、現在につながるような普遍的な思想(ないし普遍宗教)が生まれた。

具体的には、ほぼ同時期に、ギリシャではいわゆるギリシャ哲学、インドでは仏教、中国では儒教や老荘思想、中東ではキリスト教やイスラム教の源流となった旧約思想(ユダヤ思想)がこの時代に生成したのである。

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  • といざヤす9fb97ee2a27b
    京大の先生に申し上げるのも恐れ多いのですが・・・

    孔子の思想、老荘思想(ただし、老子の実在性には疑いあり)、儒教、道教は内容的にもまるで別物です。成立年代も違います。ちょっと「妄想」入っていませんか?

    長文最後まで読んでみましたが、結局は「日本スゴい」「神道的アニミズム万歳」でしたね。

    up18
    down4
    2020/2/3 06:14
  • cicero513b5170a733
    昔、神々の沈黙、という、本があった。紀伊国屋からだったかな?まあ、ネタは同じで、紀元前五世紀頃に、東西文化圏で同時にユニバーサルな思考が記録されるようになったこと、を元にしていろいろ風呂敷を広げる本だったと思う。
    こういう話はとても面白くて好きなのだけれど、歴史をマクロに概観しているはずが、自分の話に都合が良いトピックスだけを引っ張ってきて並べているだけ、にならないように注意しなくてはならない。これがひどすぎると、いわゆるトンデモ本になる。
    筆者についてというより、これは、読み手の注意点。
    こういう話を説得力と重さを持ってするためには、その時代の背景にある生活や文化の出来る限り定量化されたデータや多くの研究文献の参照で裏付ける必要がある。
    グレタさんについては、ベッソンのジャンヌダルクという映画を思い出す。肯定的にも否定的にも。
    up7
    down0
    2020/2/3 07:56
  • Woo51b437742ce1
    まぁ、話は分からんでも無いが、グレたが出て来たとたんに胡散臭くなるね。
    up8
    down6
    2020/2/3 08:16
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