封鎖の武漢に決死の「単身突入取材」公民記者・陳秋実とは何者か

当局の圧力を振り払いながら

最終列車で武漢入り

1月24日、夜10時を過ぎた武漢市・漢口駅前で、1人の男性が語り出した。

「私の責任は公民記者(市民ジャーナリスト)であること。記者として、災難が起きたら、まず現場に駆けつけなければ、どうして記者と言えるだろうか? 私は武漢行きの最後の高速鉄道に乗った。車掌は私に、今後少なくとも1カ月は列車の運行をしないと告げた。つまり、私は今後1カ月武漢を離れることができない。」

こう語る動画をアップしたのは、弁護士で公民記者として活躍する陳秋実氏、彼はその後、武漢市内の病院の様子など、数々の動画をネットに掲載、台湾など中華圏のテレビのほか、日本でもNHKが「フリージャーナリストの映像」として彼が撮影した動画をニュース番組で紹介した。

 

武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎、いわゆる「武漢肺炎」は、31日時点で死者は213人、感染者は9692人と、1万人に迫っている。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)と比べても強い感染力を持つという恐ろしい病気の“震源地”に、単身乗り込むなど、「決死の行動」という以外の言葉が思いつかない。

彼とこの2週間前、東京で初めて会った筆者にとっても、予想すらしない動きだった。

陳秋実氏を初めて知ったのは、昨年香港で発生した大規模な抗議デモの様子を中国国内に伝えるために、当局の規制を振り切って乗り込み、デモ参加者の様子を伝える動画を発表した時だ。

その話は2019年9月2日公開の「品格を疑う…中国人留学生の『反香港・愛国』パフォーマンスが激化中」の中で「真実をネットで伝えた男性」として取り上げた。