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新型肺炎が日本経済と安倍政権の「致命傷」になってしまう可能性

これはSARSの比ではない

間の抜けた日本政府の対応

新型肺炎の勢いが止まらない。とうとうフィリピンで死者が出た。中国国外で感染者の多いのは日本である。感染者数は検査方法などの環境にも依存するため、実際の感染者の多さとは必ずしもリンクしないとはいえ、これから日本で死者が出ても不思議ではない。

まず、日本の水際対策や「指定感染症」指定に問題はなかったのか。

 

政府は1月28日、新型肺炎を感染症法上の指定感染症に指定する政令を閣議決定し、公布した。ここまではよかったが、その政令の施行日は2月7日だった。これには流石に驚いた。

政令を閣議決定するには、内閣法制局による法令審査が必要だ。実際の政令は官報に掲載されているので、見てみたら5ページもある。ほとんどが技術的な読み替え規定(別の事柄に関する政令の字句を読み替えて適用すること)だ(https://kanpou.npb.go.jp/20200128/20200128t00004/20200128t000040000f.html)。

新型コロナウイルスのような感染症には前例があるとはいえ、内閣法制局による法令審査にもそれなりの時間がかかっただろう。内閣法制局は極めて几帳面だが、こういう非常事態にはスピード優先の対応でいいはずだ。

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慎重な法令審査をするにしても、まだやれることはあった。

一般に、政令の公布日と施行日が異なるのは、罰則などの周知期間や行政側の準備期間が必要だからだ。内閣法制局による審査の時間があるなら、厚労大臣が事前に新型肺炎を感染症法上の指定感染症に定めると宣言すればよい。これで一定の周知期間を確保できるので、政令の交付即施行が可能になる。

ちょっと頭を使えばいいものを、厚労省は漫然とやっていたと言わざるを得ない。28日の閣議決定の前日、27日に総理からアナウンスとはちょっと間が抜けている。あれだけの分量の政省令ならスタートはかなり早かったはずであり、その時に厚労大臣が宣言しておくべきだった。そして、28日に政令公布・即施行すべきだった。

次期首相候補とも言われる加藤勝信厚生大臣が、ここ一番でこのような大胆な意思決定をしていれば、多くの国民は拍手喝采だっただろうし、株も上がったはずで、残念だった。