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【社説】

復興庁設置延長 痛みに向き合ってこそ

 復興庁の設置を十年延長する関連法改正案が今国会に提出される見通しだ。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で地域と人々の心が受けた傷は深い。支え続け、教訓は全国で共有すべきだ。

 復興庁は、省庁の縦割りを排除して復興事業を実行するための内閣の直属組織として、震災後十年までの期間限定で設置された。二一年三月以降も、さらに十年延長する基本方針が昨年末、閣議決定された。

 岩手、宮城などの地震・津波の被災地域では今後五年で復興事業を完了することを目指す。福島の原発事故被災地は中長期的な対応が必要として当面十年間、本格的な復興、再生に向けた取り組みを行うとしている。

 被災地を二つに分けざるを得ないのは、原発事故は放射能による汚染があり、いまだ帰れない地域もあるからだ。

 福島県の避難者数は、約十六万五千人から四万人余に数字上は減っている。しかし減少分には自主避難者向けの住宅無償提供を県が打ち切ったために、避難者とみなされなくなった人たちも含まれる。避難先で仕事や学校など新たな生活を始め、故郷に帰らない決断をした人たちも「避難者」ではなくなる。

 事故前には、三世代、四世代で暮らしていたのに、避難指示が解除されても故郷に帰るのは高齢者だけという家族も多い。「国が前面に立って取り組む」と位置付ける福島の復興では、コミュニティーを再生していけるのかという、重い課題に向き合う必要がある。

 これまでに蓄積したノウハウを関係行政機関などと共有して、活用する機能も組織には加えられる。成功事例だけでなく、解決できていない課題についても、議論提起の役割を果たしてほしい。

 避難所のあり方もその一つだ。東日本大震災の震災関連死は被災三県で三千六百人を超える。その後の災害でも同様の事態は繰り返されている。

 土地区画整理事業では空き地が生じている事例もある。人口減少の局面に入っているだけに、なおさら事業手法も検討していく必要があるだろう。

 東京で開かれていた政府主催の追悼式は発生十年の来年で終わりにするという。東北の復興は道半ばで、十年は一つの通過点ではあっても「区切り」とはいえない。被災地の痛みを丁寧に受け止め、ともに修復していく歩みを止めてはいけない。

 

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