このほど、米司法省は、ハーバード大学化学・化学生物学部の学部長を中国政府との関係の申告義務を怠ったとして刑事起訴した。なぜ、ノーベル賞候補にもなるハイレベルの米専門家が、国の重要な知的財産が共産党政権に渡るリスクを顧みず、罠に足を踏み入れてしまったのか。その経緯が、司法省の起訴状で明らかにされた。
ノーベル化学賞候補者の逮捕
司法省は1月28日、ハーバード大学化学・化学生物学部の学部長チャールズ・リーバー(Charles Lieber)教授を「重大な虚偽、架空請求、詐欺」の容疑で刑事起訴した。
文書によると、教授は米国国防総省(DoD)と国立衛生研究所(NIH)から研究資金を受け取っていた期間と重なって、中国共産党中央組織部が率いる海外ハイレベル人材招致「千人計画」に加わっていた。中国側から報酬や研究資金を受け取っていたが、そのことを米国側に報告しなかった。
司法省は、「外国政府または外国企業からの支援は財政的利益相反にあたるため、情報開示が必要」としている。
「千人計画」は、共産党政権が科学発展、経済繁栄、国家安全保障を前進させるため、海外から、先駆的な技術を持つ科学者や研究者を厚遇で招き入れる、人材計画のひとつ。
中国当局は、千人計画で迎え入れた外国研究者に対して、海外での研究成果や技術情報を中国側に渡すことを要求する。このため米司法省は、千人計画が知的財産と技術の窃盗に繋がるとみなしている。米ニューヨーク・タイムズによると、米捜査当局はこれまで米国71機関で、千人計画に関する180件の知的財産窃盗の調査を行っている。