日本がこの先もずっと低成長しか望めない理由

労働力が減って実質成長率はせいぜい0.6%

将来予測が深刻な問題を覆い隠してしまってはいけません(写真:makaron*/PIXTA)
昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する――。野口悠紀雄氏による連載第7回は、前回「日本はこの先もずっと経済成長を維持できるか」(2020年1月19日配信)に続いて、日本の経済成長の未来を大胆に予測する。

日本の労働力は2060年までの期間に年率約1%で減少する見込みです。このため、日本の実質成長率は0.6%程度にしかなりません。これより高い成長率を想定するなら、その根拠を明示する必要があります。そうでなければ、将来の深刻な問題を覆い隠すことにしかなりません。

IMFは0.7%だが、日本政府は1.4%

2020年の日本の成長率に関して、さまざまな機関が予測を発表しました。 

この連載の一覧はこちら

政府の経済見通しでは、2020年度実質成長率は1.4%です。

日本銀行が公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、実質成長率を、2019年度は0.8%、2020年度は0.9%、2021年度は1.1%としています。

国際通貨基金(IMF)は、世界経済見通し(WEO)で、2020年の日本経済の実質GDP成長率を0.7%としました。2021年は0.5%ですが、これは潜在成長率に近い値だとしています。2020年は、政府の経済政策によって、これより高い成長率が実現するとしているのです。

以上をまとめると、下の図のとおりです。

(外部配信先では図表やグラフを全部閲覧できない場合があるので、その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

日本政府の見通しがかなり高いこと、それに対してIMFの見通しがかなり低いことが注目されます。

次ページ際立って高い政府の成長見通しで、税収が「過去最高」
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  • 流されないロスジェネa12a7d05d99c
    民主党が財政健全化しようとしたけど、自民党の交付金・補助金行政に頼り切っている地方が、民主党の経済政策にダメ出しをして最大のチャンスを失った。
    地方を交付金・補助金漬けにしている限り政権は安定だけど、財政は悪化する一方だよ。
    up68
    down14
    2020/2/2 12:22
  • 名無権兵衛33c0a7096002
    筆者のデータの解釈は妥当だと思うが、政策への提言は妥当とは思えない。

    >財政収支試算は、「いつになっても目標は達成できず、むしろ赤字は拡大する。財政危機は深刻化すると」と読むべきです。
    これは妥当。

    >そして「財政健全化は、消費税の増税や社会保障費の思い切った削減を行わない限り、実現できない」と読むべきでしょう。

    これは妥当ではない。何故なら消費税の増税や社会保障費の削減による税収への悪影響が発生しないことを前提にしているから。

    私の結論としては「日本の財政赤字は緊縮政策では解決しないレベルであり、経済成長しない場合はどのような政策を取っても破綻回避は不可能である。」

    また、公的年金財政検証も同様で、所得代替率や支給開始年齢を70歳に引き上げる等の措置を行った場合の消費活動への悪影響が試算されておらず、非常に軽薄な結論であると言わざるを得ない。
    up60
    down17
    2020/2/2 10:57
  • H232390b5393a37e5
    私の知識で筆者のデータ・結論にあれこれいうことはできないが、今の日本社会で成長率が向上する要素が少ないと言うのは理解できる。そして楽観的な見通しで現在の政策を続けていても「見たくないものに蓋をする」状態になってしまっていることもわかる。

    このままズルズルと現状肯定と既得権益の保護に終始していれば、国民の生活レベルは少しづつ確実に低下していく。不採算の企業への保護を減らし、新しい産業への切り替えを促進していくしかない。

    戦争のような「大規模リセット」はこの先暫くはないだろう。しかし大災害のような大規模リスクは存在する。国力を維持していかないと、若し首都圏で大災害が起これば日本は後進国へ急降下するのは目に見えている。与野党共に支持団体への忖度を捨て、日本の百年の計を論議すべきだろう。

    up35
    down1
    2020/2/2 14:51
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