時のある間に薔薇を摘め   作:AXIA BOX

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アニメ オーバーロードのとある回のアインズ様の心を慮って初投稿。お目汚し失礼。




「じゃあ、また明日。モモンガさん」

 

「はい、また明日。エミヤさん」

 

 

―――――――――

 

 

西暦2000年近辺は、地球は多少の紛争や国家間の格差があったにしろ空は、海は青く。自然は緑豊かに。

動物はその生命を謳歌していたと言われる。それが、その時代のありかただったらしい。

現代ー西暦2138年、空は度重なる環境悪化に伴い常に灰色。大気汚染も人口肺がなければ満足に呼吸すら出来ない。

 

幸いにして僕の勤める企業のおかげか、アーコロジー内は比較的平穏かつ最低限生きるのは十分だ。

―――そう、最低限には、だ。

 

現実では富裕層は何不自由ない生活をし、義務教育が撤廃され貧困層から抜け出せない者達は外の世界でヒトとは思えない生活をしている。衣食住全てが貧困層には与えられていない。

 

だが、富裕層だがらといって満ち足りている者もほんの一握りだろう。

 

僕のように巨大複合企業に勤めている者の大半は、企業間の争いに難儀し、企業内での足の引っ張り合いに辟易し、部署内の人間関係に嫌気がさしていると思われる。

 

・・・そんな毎日を過ごしていた僕は文字通り現実から逃避した。

 

 

体感型大規模多人数オンラインロールプレイングゲーム。

 

 

通称DMMO-RPGは、一口に説明すればゲームの中で望んだ新たな人生を送るようなものだ。

ログインすれば眼の前には美しい自然が広がり、多くの人間と交流ができ、会社への不満は戦闘で鬱憤を晴らすことが出来る。自宅から一歩も出ずに現実では失われた多くのことが出来るDMMO-RPGは、プレイヤーたちにとってもはや現実そのものと言える。

 

本当にのめり込んだ。それこそ胡蝶の夢のように現実とゲーム、どちらが本当の自分かと思うくらいに。

大自然生活を満喫できるモノから勇者となり魔王を倒すというコテコテのモノ、変り種では美食家という職業になりトンデモ食材を捕獲するかと思いきや、食義という謎の技術を身につけ、敵組織とガチンコバトルを行うというモノまで。

 

 

しかし、本当にのめり込んだのはやっぱり『ユグドラシル』だろう。

 

 

「無限の楽しみを追求できる。」そんな宣伝文句さえあった、日本でDMMOと言えば『コレ』と呼ばれるほどの大人気ゲーム―――『ユグドラシル』 

 

職業選択、種族選択、能力選択、プレイスタイル等々。挙げればキリが無いほどの圧倒的自由度があった。

 

数少ない趣味のひとつ、レトロゲの知識をフル導入して、僕は『ユグドラシル』にエミヤ―――アサシンとして降り立った。

 

 

  Fateシリーズという西暦2000年近辺に確立された一種の神話体系がある。

 

 

野菜菌類作の聖杯戦争という根幹を持ち、サーヴァント―――英霊と呼ばれる神話、古代、近代等の英雄と呼ばれる者を各々の性質に乗っ取り、

 

 

  クラス―――

 セイバー・・・剣士のサーヴァント

 アーチャー・・・弓兵のサーヴァント

 ランサー・・・槍兵のサーヴァント

 ライダー・・・騎兵のサーヴァント

 キャスター・・・魔術師のサーヴァント

 アサシン・・・暗殺者のサーヴァント

 バーサーカー・・・狂戦士のサーヴァント

 

 

と呼ばれる7つの基本クラス(エクストラクラスという例外も在る)に振り分け聖杯を求め死闘を繰り広げる伝奇活劇の金字塔である。

 

シリーズと称しているとおり、派生作品もいくつもあり、エミヤ―――アサシンも『Fate/stay night』『Fate/Zero』『Fate/Grand Order』に登場している。が、綿密には登場しているのは『Fate/Grand Order』のみで『Fate/stay night』では名前のみ『Fate/Zero』では生前の姿である。

 

 

・・・Fateシリーズの話をするとそれこそ時間が足りないので、何故『ユグドラシル』でエミヤ―――アサシンでのなんちゃってビルドに至ったのかの説明をば。

  

 

一言、暗殺者・・・格好いいよね

 

 

本当は初代様(山の翁)との2択で迷ったけど骸骨姿は悪名高きギルド・・・アインズ・ウール・ゴウンのモモンガさんと丸被りだったのでエミヤを選択。まぁ、首狩剣士と魔法詠唱者という違いがあるけどこんだけ自由度の高いゲームなのに姿が似通うのも面白くないしなぁ。それに初代様は攻撃方法が大剣一本onlyなのも、範囲攻撃が欲しいこのゲームでもモノ足りない。

その点エミヤならナイフ近接ワルサー範囲Time Alter魔法と手数に富んでいるのもグッド。

 

・・・まぁ、種族に英霊が無かったのと肌の色を再現するために選択肢が死者―――デッドマンしかなかったのが本当に残念だが。

 

 

さて、エミヤ―――アサシンとして『ユグドラシル』をプレイしてからは本当、現実が希薄になるくらい濃密だった。ゲーム開始初期は暗殺者よろしくソロプレイでPVPで暗殺キメたり、目当てのガチャが来たら気が狂ったように回したり、抑止の守護者よろしく世界の危機を救う・・・という名目のアインズ・ウール・ゴウン討伐に駆り出されたり(2敗)暗殺組織ギルド『ラビットハウス』に在籍したり、街中でベールを取ったら異形種とばれて追い回されたりしたっけ。

 

 

色々やってるうちに異形種狩りから助けてくれたたっちさんの誘いでアインズ・ウール・ゴウンに御呼ばれして、すっかり意気投合して在籍することになったんだよなぁ。モモンガさんに初代様の説明してモノマネしてもらったらペロロンチーノさんがユリ・アルファの首を出してやまいこさんにものすごく怒られたり、ブルー・プラネットさんと大自然でのキャンプがもし出来るなら、カレーとバーベキューのどちらがベストか朝まで討論したり、ぶくぶく茶釜さんにたっぽいたっぽい言ってもらったりと悪名高きギルド?何それおいしいの?

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

でも、そんな楽しい時間も、やっぱり、いつかは、終わりを、迎えてしまう―――

 

 

 

『ユグドラシル』も開始当初から随分経ち人気に翳りが見えてきた。ギルドのメンバーのログインも徐々に少なくなっていき、いつしか僕とモモンガさんの2人だけになった。

 

 

「やっ。早いねモモンガさん」

 

「こんにちは、エミヤさん。あっ、もうこんばんはですかね?」

 

「ん~、18時まわったからこんばんはかな?でも、社会人ならお疲れさまです、がベストかな?」

 

「それをいうならエミヤさんこそ、やっ。早いねって映画で見た飲み屋にやってきて常連に声かけるおっさんみ いじゃないですか~」

 

「むぅ・・・さすがギルド長。口が達者でござる」

 

「会って早速キャラがブレブレですよね?アサシンでも小次郎になってますよ?」

 

 

いつもとおりの挨拶という名の掛け合いから僕ら2人の日常が始まる。小次郎と分かるあたりモモンガさんがFateシリーズの知識を徐々に身につけているのがちょっぴり嬉しい。

 

 

「今日はどうしようかねぇ・・・素材狩り?金貨確保?そ・れ・と・も・・・PVP?」

 

「・・・PVP以外ならなんでもいいですよ・・・まだ、Time Alter対策が出来てませんから」

 

「時間停止+即死魔法は僕と相性最悪だからね~。時間加速にもう死んでますんで」

 

 

そう、エミヤのスキルと死者の組み合わせでギルド内PVPではモモンガさんに随分勝ち越しているのだ。

抑止の守護者ですから(適当)

 

 

「では金貨確保に向かいましょう。・・・──また汚れ仕事か。まあいい。いつもの事さ」

 

「ちょ、いきなりエミヤロールしないで下さいよ!普段とのギャップがありすぎて本当に驚くんですから!」

 

「普段?僕はいつもどおりだ、僕を誰かと勘違いしてないか?」

 

「・・・分かりましたよ・・・、では抑止の守護者エミヤよ!ナザリック地下大墳墓統治者たる我が命令に従い、往くぞ!!」

 

「はい、モモンガさんの悪の魔王ロールいただきました~www」

 

「ここは、了解だ、マスター。って返すところじゃないですか!?・・・もう、いきましょうエミヤさん!」

 

 

 

2人ぼっちになったけど、これが僕とモモンガさんとの日常だ。ナザリック維持のためにあれこれしたり、モモンガさんが寂しくならないように馬鹿やってみたり(平常)。

本心では、僕もギルドメンバーのログインが無くなって・・・寂しいし、悲しい。でも、それでも、皆と過ごしたナザリックをまだ思い出にしたくない。まだ、この『ユグドラシル』の人生を終わらせたくない。

だから、抑止の守護者としてナザリックを守護る!守護って行く!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、また明日。モモンガさん」

 

「・・・エミヤさん、すいません。俺、明日はかなり仕事が入っててログイン出来ないかもしれないです・・・」

 

「ん~、そっか。じゃあじゃあ、また明日。モモンガさん」

 

「いや、ですから・・・」

 

「あ、そうか・・・ごめんモモンガさん、あと5分だけいい?」

 

「?はい、大丈夫ですけど・・・?」

 

 

モモンガさんが不可思議な顔(っぽい骨顔)している。ん~・・・でもこれ言うのはなぁ・・・凄い自己中っぽいってか押し付けっぽく思われないかなぁ・・・不安だ・・・

 

 

 

「モモンガさん、僕はね・・・また明日。って言葉が別れの言葉で一番好きなんだよね」

 

「・・・」

 

「ゲームを引退したメンバーは良く『次の』ゲームで。とか、『また今度』とか、『機会があれば・・・』

みたいな言葉で別れの挨拶をしてたっしょ?」

 

「・・・はい・・・」

 

「まぁ、他の人がそういう挨拶になるのは分かるんだけど、僕自身からはそういう別れの挨拶ってしたくないというか・・・」

 

「?」

 

「うぐぅ・・・だーかーらー!次とか今度とか機会があればとか!!そういう消極的な!!ホントに次あるの~、そういってもう会わないジャン!!!みたいな別れの挨拶が嫌いなの!!!

そんくらい『ユグドラシル』が好きなんだよ!!アインズ・ウール・ゴウンが大好きなの!!!

もう、こっちが僕の人生なのってくらいに!!!!」

 

「!!」

 

「だからさ、今日が終わって別れてもまた明日会えるドン!!って気持ちで別れの挨拶はしたいんだよ!!」

 

「・・・こっちが人生・・・明日・・・」

 

 

・・・あー、恥ずかしい。冷静に考えれば廃人発言+自己中丸出しの発言じゃんか・・・目の前の骨格丸出しの骸骨(豪華ローブ付属)もそりゃ引きますわ。まぁ、相手もログイン連続日数ではドッコイの廃人だけど。

 

 

 

「・・・エミヤさん・・・ありがとうございます・・・凄く、嬉しいです・・・」

 

「ちょ!モモンガさん!?何故泣いてる!?今はドン引きするシーンでは!?」

 

「俺も・・・現実世界は、好きじゃなくて・・・本当に、『ユグドラシル』が俺の全てってくらい全部を捧げてて・・・でも、引退した皆はほんのゲームの一種とか思ってる人とかいて・・・なんだよ、皆で作ったナザリックじゃないか・・・なんだよ、次のゲームって・・・とか思ってて・・・でも、こんなこと言ったら引かれるとか思ってて・・・」

 

「・・・モモンガさん・・・」

 

「でも!エミヤさんが、俺と同じ気持ちだって分かって、凄く・・・凄く・・・」

 

「悔しいです!!」

 

「嬉しいんです!!!」

 

 

 

空気の読めない渾身のギャグが流された(テレ隠し)。取りあえず目の前で泣いてる骨(涙腺どこさ?)をなだめ数分後・・・

 

 

「すまんなモモンガさん、5分以上貰っちゃって。落ち着いた?」

 

「こっちこそすいません・・・感極まっちゃって」

 

「こっちも取り乱しちゃってすまんね。まぁ、簡単に言うと、本当に明日会えなくても明日会うくらいの気持ちで別れの挨拶しーまっしょ!」

 

「言い方!・・・でも、俺もその気持ち、良く分かりますよ。その挨拶のほうが本当にすぐ会えるって気持ちになります」

 

「だろ?」

 

「はい」

 

「だから、僕たちの別れの挨拶は明日会えなくても」

 

 

 

 

                    「「また明日!!」」

 

 

 

「・・・さっきのエミヤさんの告白聞いて思ったんですけど、一人称は俺のほうしっくりくるんですけど・・・」

 

「いや、エミヤ―――アサシンの一人称が僕だから。今はエミヤの口調ボロボロだけど、僕は何故か定着した」

 

「雑っ!!」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、そんな楽しい時間も、終わりを、迎えてしまう―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ユグドラシル』―――サービス終了最終日

 

 

 

「こんばんは、モモンガさん」

 

「こんばんは、エミヤさん」

 

「・・・ついに、サービス終了か・・・」

 

「・・・最近、アップデートが滞ってましたし、ある程度の予感はしてましたけど・・・」

 

「・・・終わる・・・消える・・・僕の・・・命が・・・」

 

「・・・死者だからもともと命ないですよね?」

 

「フッ、流石ナザリック地下大墳墓統治者殿だ。僕の考えはお見通しか」

 

「今思えば、エミヤさんがおどけていたのは俺に寂しい思いをさせないためだったんですかね・・・」

 

 

おや、いつものキレのあるツッコミが来ない。・・・やっぱりモモンガさんも相当堪えてるのか。モモンガさんも。

 

「最終日だからメンバーは誰かしら来たのかい?」

 

「はい、何人か。ついさっきまではヘロヘロさんが居たんですけど・・・」

 

「ありゃ、タイミングが悪かったか・・・」

 

「残業続きで名前と一緒で本当にへろへろみたいでしたよ。ナザリックが残っていたことに驚いてました。

最後にまたどこかで。と」

 

「凄いなモモンガさんは。僕なら、どこでゴザる~?いつでゴザる~?えーっ本当にゴザるかぁ~?と言ってしまいそうだ・・・」

 

「俺も、以前のエミヤさんとのことが無ければきっと今頃愚痴を零していたかもしれません」

 

「・・・大丈夫か?モモンガさん?」

 

「サービス終了までエミヤさんとこのナザリックをきちんと残せましたし、それに・・・1人じゃなかったですから・・・」

 

「・・・」

 

「エミヤさん?」

 

「こっちこそ途中参加だったけど、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーとして、こうして最後までナザリックに貢献出来て、モモンガさんと最後まで一緒に『ユグドラシル』が出来て嬉しく思うよ」

 

「・・・はい・・・」

 

「でもさ」

 

「はい?」

 

「『ユグドラシル』が終わっても、この人生が終わっても・・・最後じゃない」

 

「・・・」

 

「僕にとって、モモンガさんに次会うのは 明日 だから」

 

「それは俺にとってもですよ、エミヤさん」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「じゃあ、ギルメンが居ないなら、NPC達に最後の挨拶でもしますかね?」

 

「と言っても時間もあと僅かですかから玉座の間にいる者くらいにしか出来ませんよ?」

 

「じゃあそこで最後は盛大に、厳かに、いつもとおりに締めますか」

 

「はい、いきましょう」

 

 

 

 

玉座の間には老執事と戦闘メイド―――プレアデス達が控えていた。

・・・こいつらと一緒にいるとモモンガ城に侵入して発見された間抜けな暗殺者という構図になってしまう。

解決策は・・・むぅ、無い。

 

「結局誰もここまで侵入できなかったんだよな」

 

「はい。これも使う機会がなかったのが悔やまれます」

 

そう言ってモモンガさんが軽く金杖(略称)を軽く掲げる。重そう。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「なぁ、モモンガさん・・・ 明日 会わないか?」

 

「エミヤさん?」

 

「現実世界でさぁ、僕の家でいいかな?」

 

「?」

 

「今はまだ心がごっちゃになっててうまく伝えられないんだけど、『ユグドラシル』が終わってもまだまだモモンガさんと一緒にいろいろなことがしたい。まだ足りないんだ」

 

「エミヤさん・・・」

 

「だから、こっちの人生は今日でお終い。明日からはあっちの世界で。だ」

 

「はい・・・ありがとうございます」

 

 

今にも泣き出しそうな豪華骸骨。こっちもいまにも泣き出しそうなベールフード付暗殺者。

そして迫りくるサービス終了のカウントダウン・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、また明日。モモンガさん」

 

「はい、また明日。エミヤさん」

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サービス終了直後、僕は、1人で、見たことも、ない、荒野に、いた。

 



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