一日午前八時十分ごろ、臓器移植のための心臓を搬送中の県警ヘリコプター「あづま」が郡山市三穂田町下守屋の田んぼに不時着、横転して損壊した。搭乗していた県警職員五人と医療関係者二人の計七人のうち四人が重傷、三人が軽いけがをした。県警によると、操縦士は「機体が風にあおられた」と話している。東大付属病院で予定していた心臓移植手術は中止になった。提供された臓器の移植手術が事故により実施できなかった前例はない。県警ヘリによる人身事故も初めてで、運輸安全委員会は航空事故として調査に入る。
県警などによると、ヘリに乗っていたのは、県警本部地域企画課の村上祐司課長(59)=警視=、総合運用指令課の小池健貴操縦士(38)=警部=、村上明彦副操縦士(50)=警部補=、斎藤澄人整備士(41)、石川翔也整備士(27)、東大付属病院の医師井戸田佳史さん(39)、臨床工学技士の加賀美公一さん(43)。このうち村上課長、斎藤整備士、井戸田さん、加賀美さんが、胸や腕の骨折などで重傷。周辺の住民や人家への被害はなかった。
ヘリは一日午前七時十分ごろ、福島市の県警機動センターを出発した。同七時四十分ごろに会津若松市の会津中央病院のヘリポートに到着し、移植用の心臓を受け取って同八時ごろに離陸した。次の受け渡し先の福島空港に向かっていた途中で不時着した。
県警によると、風にあおられて操縦が不安定になったが、操縦士が人家などがない場所まで機体をコントロールした。当日出発前の点検では機体の異常は確認されず、気象条件を含め飛行に問題はないと判断したという。
県警は同日、実況見分を行った。業務上過失致傷容疑なども視野に入れ、事故原因を詳しく調べる。機体の後部が破断し、メインローターが折れるなどの損傷があり、国土交通省は航空事故に認定した。運輸安全委員会は航空事故調査官二人を現地に派遣する。
日本臓器移植ネットワークによると、搬送していた心臓は、会津若松市の竹田綜合病院で脳死判定を受けた五十代男性から一日午前に摘出された。福島空港経由で運び、東大付属病院に入院している五十代男性に移植する予定だった。
事故後、心臓はパトカーで福島空港に運ばれ、羽田空港などを経由して東大付属病院に到着したが、臓器の保存期限や不時着で心臓が受けた衝撃の影響などを考慮し、移植を断念したという。五十代男性の容体は安定している。
現場はJR安積永盛駅から西に約十一キロの農村地帯で、北側に笹原川が流れている。
福島地方気象台によると、一日午前八時の郡山市は、西北西の風五・三メートルだった。冬型の気圧配置となったため、気象台は郡山市を含む中通りに強風注意報を出していた。