節分とは季節の変わり目、特に立春の前日を指します。今年の節分は2月3日。子供の頃、豆まきをした記憶のある人も多いでしょう。
節分の行事食には地域性がありますが、西日本の定番は「イワシ」です。柊にイワシの頭をさした柊イワシを飾り、身を食べることで邪気を払います。煙で良くないものを追い払うという意味があったので、昔はイワシを焼くのが定番でしたが現代の住環境ではそれは避けたいもの。そこで今回はイワシの唐揚げを提案します。
イワシの唐揚げ
イワシ…2尾
醤油…大さじ1
塩…小さじ¼
レモン
1.イワシを水洗いする。まな板の上に新聞紙(コピー用紙でも)などを敷き、イワシの頭を左にして置き、表面を包丁でなでるようにしてウロコが残っていないかたしかめてから、頭を落とす*。腹を縦に切り、内臓をとりのぞく。お腹の内側まできれいに水洗いする。
*イワシはウロコが落ちやすい魚でたいてい残っていませんが、
2.イワシの水気を拭き取り、醤油と塩をまぶして3〜4分置く(これを醤油洗いという)。
3.汁けを拭き取り、小麦粉をまぶす。小麦粉はお腹の内側にもしっかりとまぶすようにする。
4.フライパンに高さ1cmほどの量の揚げ油を注ぎ、中火にかける。イワシを並べ、揚げ焼きのようにして加熱する。泡が立ち、音がしてきたら弱火に落とす。スプーンで油をかけるようにすると全体に火が通る。5分ほどゆっくりと揚げ、両面がこんがりとしたら、キッチンペーパーのうえなどにとり、油を切る。
5.器に盛り付け、レモンを添える。
塩焼きよりも簡単な唐揚げ
魚は焼くのが一番おいしく、臭みもないとされます。その理由は表面の焦げ色=メイラード反応によるものです。しかし、魚を焼くことは、煙が出る、匂いが部屋につくなどの理由で昨今は敬遠されがち。
煙は特にサバやイワシのような青魚を焼くと気になります。その理由は魚自身が持つ脂肪分。七輪で焼くとよくわかりますが、魚から落ちた油が下に落ち、それが燃えることで煙がたくさん出ます。煙は一緒に匂いも拡散するので、部屋にそれがついてしまう、というわけ。
そこで今回は油で揚げることにしました。油で揚げれば焼いたのと同様に焦げ色がつきますし、魚自身の脂は揚げ油の温度以上になることはない=燃えないので、煙は出ません。揚げている最中は魚の匂いがするかもしれませんが、換気扇で対応できるはず。
まずはイワシの下処理から。頭を落としたイワシは小骨の多い腹の部分をまっすぐに切り落とします。
次に腹のなかを丁寧に洗います。魚の臭みの原因は血液や内臓。丁寧に洗うことで、いわしはおいしくなります。
表面の水気を拭き取ったら次の工程に移りますが、ここにおいしさの秘密があります。揚げる前にさっと醤油を絡めるのです。これを料理用語で「醤油洗い」と言います。醤油に含まれるメチオノールという成分には魚や肉の臭みを抑える働きがあります。さらに醤油は弱酸性のため、アルカリ性の魚表面の臭み成分(トリメチルアミン)を中和するので、臭みを抑えてくれるのです。
鶏の唐揚げの場合は片栗粉を使いましたが、魚の場合は小麦粉を使います。片栗粉と違って、小麦粉にはタンパク質が含まれているので独特の香ばしさがでるからです。あとはじっくりと揚げるだけ。イワシは脂の多い魚なので、揚げすぎの心配はそれほどありません。
たっぷりの油をつかったほうが全体を均一に加熱でき、簡単なのですが、今回は少なめの油を使い、揚げ焼きのような形で揚げています。お財布に余裕がある方はぜひ、たっぷりの油で揚げてください。そのほうがずっと楽です。食べ方は焼き魚と同じ。中骨と背中の硬い骨以外の部分が可食部位ですが、中骨も長く揚げると食べることができます。
また、「揚げ油に梅干し入れると再利用できる」や「いやいや冷えたご飯を入れれば……」という話がよくありますが、それらはすべて迷信で、魚を揚げた油には魚の匂いがついているので、再利用できません。魚の匂いが部屋にではなく、油についたと考えれば、コストも高くはないはず。
揚げ油は冷えたら牛乳パックなどに移して燃えるゴミに出します。大量に使った場合には市販されている油凝固剤も便利です。以前にも書きましたが、揚げるという調理法は焼くよりもずっと簡単で、合理的なのです。