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スマートフォンを選ぶときに最も気になるのはカメラスペック、という時代になっています。CPUの高速化も毎年進んではいますが、今やミッドハイレンジクラスの製品でも必要十分な性能を有しているとなれば、無理してハイエンドフォンを買う必要も薄れていくでしょう。カメラの性能をどう上げていくか、これがどのメーカーにとっても重要な開発ポイントになっています。
一方、スマートフォンの背面にカメラをどのようにデザインして配置するかも各社の腕の見せ所になっています。ところがOnePlusはそのカメラを隠す技術をCES 2020で披露しました。これはカメラレンズの上を覆うカバーガラスに「エレクトロクロミックガラス」を採用したもの。エレクトロクロミックガラスは電気をかけることで透明度を変えることのできるガラスで、最近では飛行機の窓の遮光用途にも利用されています。
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OnePlusがこの素材をスマートフォンに採用したのは、マクラーレンとのコラボによりその技術に気が付いたからかもしれません。カメラが隠れるこの端末「Concept One」はコンセプトモデルながらマクラーレンとのコラボ製品になっていますが、これは2018年に発売した「OnePlus 6T McLaren」から3機種目となる両者共演の製品です。
マクラーレンは2019年に発売したオープントップタイプのスポーツカー「720Sスパイダー」のルーフにエレクトロクロミックガラスを採用し、ドライバーの視野を確保しています。この技術を応用すればスマートフォンの背面カメラを見せたり見えなくすることもできるわけです。しかし自動車や航空機のガラスと比べるとスマートフォンのカメラを覆うディスプレイの厚みは薄いため、開発は簡単ではなかったことでしょう。ですが増え続けるスマートフォンのカメラを背面にすっきりとデザインするためには、この技術の採用は最適なソリューションなのです。
またガラスの透明度を変えられるということは、ガラスに色をつけフィルターにすることも可能になります。デジカメなら様々なフィルターを付けることができますが、スマートフォンでは簡単ではありません。クリップ式のフィルターも出ていますが、わざわざそれを買って使う人はわずかでしょう。
Concept OneのカメラはNDフィルター機能を持っており、明暗の差の激しいライトなどの撮影も苦にしません。カメラのプレビューを見ながらワンタッチでNDフィルターをONにできるので、写真撮影の幅を簡単に広げることができます。
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カメラが隠れるだけではなくフィルター機能も持たせることができるエレクトロクロミックガラスは、これから多くのスマートフォンに使われるようになりそうです。
さて、すでにフロントカメラのほうもディスプレイの中に隠して埋め込んでしまう技術をOPPOが発表しています。フロントカメラはスマートフォンの見た目の美しさを損ない画面表示の障害となる「ノッチ」を完全に無くしてくれます。OnePlusの技術と合わせれば、スマートフォンの表面も裏面もカメラの存在を全く意識させない製品の実用化が可能になるわけです。
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フロントカメラ側のカメラを隠す技術は、カメラを覆うガラス部分が普段はディスプレイとしても機能するため実用化はまだ先かもしれません。しかしリアカメラ側を隠すほうは早いうちに商用化されるでしょう。2020年のスマートフォンはカメラの数やサイズがさらに増加していくはず。背面が「穴だらけ」のスマートフォンは2019年で終わりをつげ、2020年にはカメラを使うときだけレンズが見えるスマートフォンがいつの間にか増えているかもしれません。