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第5回 山陽道でそれぞれの時代を形成してきた岡山東商、広島商、宇部商2020年02月01日
【目次】
[1]昭和を代表する名門校広島商
[2]昭和の甲子園を彩ってきた宇部商と岡山東商
昭和の甲子園を彩ってきた宇部商と岡山東商
甲子園を彩ってきた宇部商※写真は九州国際大進学の田中未来(2年)
広島から、山陽道をさらに西へ進んでいくと山口県の工業都市の宇部市がある。その地の名門校として宇部商が存在する。男子バレーボールの強豪校としても全国的に有名で日本代表選手なども輩出している実績がある。野球部が最初に強烈な印象を残したのは、初出場となった66年春だった。
この大会では三重、金沢などを下して準決勝進出を果たしている。そして準決勝では、優勝する中京商(現中京大中京)と延長15回の死闘を戦うことになる。結果的には、4時間35分の大熱戦の末敗れるが、この記録は今もなお破られていないセンバツ最長試合となっている。
以降、それまで山口県では先陣を切っていた存在の下関商を抑えて常連校となっていくが、83年夏にはベスト8進出。そして、85年夏には初戦で銚子商に打ち勝って勢いに乗り、準決勝でも東海大甲府との乱戦を7対6で制して決勝進出。決勝では桑田真澄や清原和博などを擁して当時全盛を誇っていたPL学園と大接戦の末3対4で敗れはしたが、その戦いぶりは大いに評価された。
昭和になってすぐの1927(昭和2)年に市立宇部商業実践学校として設立され、44年に県立に移管。36年に創部していたが、甲子園初出場は前述の66年春までかかった。その後の躍進は、前記の通りである。
広島から、山陽道を大阪方面へ向かうと岡山県となるが、岡山県の高校野球、戦前は広島県などに押されてほとんど全国への出場がない(岡山一中=現岡山朝日の1回のみ)。そして、戦後になって倉敷工と岡山東商が歴史を築いてきた。最初に倉敷工が台頭してきたが、60年代になって岡山東商が主導権を握るようになってきた。夏2回目、通算4回目の出場となった63年夏の第40回記念大会で初勝利を果たして2勝して3回戦進出。
そして、65年春には後に大洋ホエールズで剃刀シュートを武器に巨人キラーとして名を馳せることになる平松政次投手を擁して快進撃。コザ、明治、静岡、徳島商をすべて完封して決勝進出。決勝戦では4回に1点を失って連続無失点は39イニングで止まったものの、試合は延長13回の末に2対1で勝利して初優勝を果たしている。もちろん、岡山県勢としても初の決勝進出での栄冠だった。
こうして、しばらくは岡山東商時代を作っていくこととなる。平成時代になって伝統の倉敷商や関西の復活、岡山理大附の躍進がある。さらには創志学園やおかやま山陽、岡山学芸館といったところが甲子園に近いが、岡山東商も健在であることは忘れてはいけない。
文=手束 仁
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- 手束 仁
- 生年月日:1956年
- 出身地:愛知県
- ■ 経歴
愛知県知多市出身。半田高→國學院大81年卒。大映映像事業部など映像会社で、映画・ビデオなどの販売促進、営業等を経て、編集プロダクションに10年勤務後独立。
99年に『熱中!甲子園』(双葉社)を仕掛け、を刊行。同年に『都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社・刊)で本格的にスポーツ作家としてデビュー。99年12月に、『アンチ巨人!快楽読本』(双葉社)を企画編集・執筆。その後、『ふたりの勇気~東京六大学野球女子投手誕生物語』、『高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)などを相次いで刊行。さらに話題作となった『甲子園出場を目指すならコノ高校)』(駿台曜曜社)、『野球県民性』(祥伝社新書)、『プロ野球にとって正義とは何か』、『プロ野球「黄金世代」読本』、『プロ野球「悪党」読本』(いずれもイースト・プレス)などを刊行。
さらには『高校野球のマネー事情』、『スポーツ(芸能文化)名言』シリーズ(日刊スポーツ出版社)、『球国愛知のプライド~高校野球ストーリー』などがある。
2015年には高校野球史を追いかけながら、大会歌の誕生の背景を負った『ああ栄冠は君に輝く~大会歌誕生秘話・加賀大介物語』(双葉社)を刊行し18年には映画化された。
スポーツをフィルターとして、指導者の思いや学校のあり方など奥底にあるものを追求するという姿勢を原点としている。そんな思いに基づいて、「高校生スポーツ新聞」特派記者としても契約。講演なども國學院大學で「現代スポーツ論」、立正大で「スポーツ法」、専修大学で「スポーツジャーナリズム論」などの特別講師。モノカキとしてのスポーツ論などを展開。
その他には、社会現象にも敏感に、『人生の達人になる!徒然草』(メディア・ポート)、『かつて、日本に旧制高等学校があった』(蜜書房)なども刊行。文学と社会風俗、学校と教育現場などへの問題提起や、時代と文化現象などを独自の視点で見つめていく。 そうした中で、2012年に電子メディア展開も含めた、メディアミックスの会社として株式会社ジャスト・プランニングを設立。新たなメディアコンテンツを生み出していくものとして新たな境地を目指している。 - ■ 著書
『都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社)
『甲子園への助走~少年野球の世界は、今』(オーシャンライフ社)
『高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)
話題作となった
『甲子園出場を目指すならコノ高校(増補改訂)』(駿台曜曜社)
『スポーツ進学するならコノ高校』
『東京六大学野球女子投手誕生物語~ふたりの勇気』(三修社)
『三度のメシより高校野球』(駿台曜曜社)
『スポーツライターを目指す人たちへ~江夏の21球の盲点』(メディア・ポート)
『高校野球に学ぶ「流れ力」』(サンマーク出版)
『野球県民性』(祥伝社新書)
『野球スコアつけ方と分析』(西東社)
『流れの正体~もっと野球が好きになる』(日刊スポーツ出版社)NEW! - ■ 野球に限らずスポーツのあり方に対する思いは熱い。年間の野球試合観戦数は300試合に及ぶ。高校ラグビーやバレーボール、サッカーなども試合会場には積極的に顔を出すなど、スポーツに関しては、徹底した現場主義をモットーとしている。
- ■ 手束仁 Official HP:熱中!甲子園
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