よく仕事で「論理的思考」という言葉を耳にしますが、どんなに理路整然とした説明ができても、それだけでは相手に「動いてもらう」ことはできません。たとえ「明らかにあなたが正しい」という場合でも、あなたが望むものを得たいのであれば、それを押し付けるべきではありません。この最初のセクションでは、時代が変わっても変わらない人間の普遍的な心理について学びましょう。人は理屈ではなく「感情」の生き物であることを学び、それを踏まえてどう対応するかを身に付けましょう。これを学ぶことであなたは、たとえ「気難しい相手」であっても、その相手と協力的な関係を築くことが簡単になります。
ちょっと周りを見渡してみてください。あなたが知っている経営者・営業パーソンの中で、最も大きな成功を収めているのはどんな人でしょうか?その人が成功している要因は、優れた頭脳や専門技術でしょうか?少し考えてみれば、事業で大成功を収め、家庭でも幸せな人生を送っている人に共通するのは「人間関係の技術」に長けていることだとわかるでしょう。
事実、著名な心理学者のアルバート・ウィガム博士が、失業した4000人の労働者の実態を調べたところ、仕事ができなくて失業したのは全体の1割に過ぎず、残りの9割は、他人と上手く関わることができなくて失業したことがわかりました。
また、パーデュー大学を卒業した技術者を5年以上に渡って調査した結果、学生時代に最も成績がよかった人の年収は、成績が最下位だった人の年収と約2万円しか差がありませんでした。つまり、高度な専門技術を身に付けた人と、そうでない人との間には、それほど差がないということです。一方で、人間関係の技術に長けた人は、優秀な学業成績を納めた人とくらべても15%収入が高く、コミュニケーションが苦手な人より33%も収入が多かったのです。
それに、カーネギー工科大学が1万人の工場労働者を綿密に調査した結果、仕事が上手くいく要因の85%は性格的なもの(特に他人と上手く関わる能力)であり、仕事上の専門技術としての要因は15%に過ぎないことがわかりました(ましてや、お客様や同僚との人間関係がものを言う営業職、経営者においては、その割合はもっと高いはずです)。
医者、弁護士、事業家として最も成功している人たちが、その分野における最も高度な専門技術を持っているとは限りません。営業成績トップの保険営業の女性が、学業成績が優秀だったとは限らないですし、幸せな夫婦が必ずしも美男美女だというわけでもありません。どの分野であっても、成功を収めているのは「人間関係の技術」を心得ている人でしょう。
著書累計発行部数が500万部を超える米国の心理カウンセラー、レス・ギブリン氏は「実際問題として、他人と上手く関わる以外に充実した人生を送る方法はない。他人と上手く関わらずに成功と幸福を手に入れることは不可能なのだ。」と言います。しかし、皮肉なことに、多くの人は性格を改善することには大きな興味を持っているのに、人間関係の技術を改善することにはあまり興味を持っていません。しかし、ギブリン氏が言うように、人間関係の技術を改善することには大きな意味があるのです。なぜなら、その技術次第で、「相手がどう動くか」が180度変わってしまうからです。たとえば…
なかなかできませんけどできるようになりたいですね。