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【東京】

図書館「サービス低下」懸念 中央区が指定管理者導入の方針

「本の森ちゅうおう(仮称)」の完成イメージ図

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 中央区は、2022年度の開業を目指す新図書館の運営を民間に任せるため、2月下旬から始まる区議会に条例改正案を提出する構えだが、民営化に反対する区民は31日、「利用者の求めで資料や書籍を職員が探すレファレンスサービスが低下する」などとする請願を区議会に提出した。 (梅野光春)

 新図書館「本の森ちゅうおう(仮称)」は、同区新富一の都施設跡地に着工。地上六階、地下一階で、現在の京橋図書館と、区郷土天文館「タイムドーム明石」(明石町)の郷土史部門を移転させる。多目的ホールやカフェも設ける。建設費は約二十六億円。

 運営は、指定管理者に選んだ民間企業に五年程度の契約で任せる方針。区教育委員会は「指定管理者に任せる自治体が増え、請け負う企業側もノウハウを積み重ねてきた。区職員の削減にもなる」とメリットを強調する。

 区内では「中央区立図書館のあり方を考える会」(川口修一郎代表)が昨年十二月、区教委の方針撤回を求める署名活動を開始。一月三十一日に約千人分の署名とともに区議会に請願を提出、受理された。川口さんは「今の京橋図書館は、空襲を免れた戦前の史資料を多く所蔵し、江戸や東京をテーマにした本もそろう。区が責任を持って保管、活用すべきだ」と主張する。

 日本橋の老舗弁当店の八代目で地元史に詳しく、区民カレッジの講師を務める樋口純一さん(48)も「歴史をひもとくのに京橋図書館のレファレンスサービスは欠かせない。小説の貸し出しなどは民営化もやむを得ないが、史資料の紹介は区が継続性をもってやるべきだ」と話す。

 区教委は「民間職員のレファレンスサービスが不十分なら郷土史担当の学芸員がバックアップする」と説明。指定管理者制度導入を進めるという。

     ■

 日本図書館協会(同区)の調査では、全国に約三千二百ある区市町村立図書館のうち、一七年度までに二百三十八の市区町村で計五百五十一館が指定管理者制度を導入。〇三年の制度開始以来、増え続けている。

 一方、この流れに反対の声も強い。同協会は一六年、事業の継続性や安定性の面から「公立図書館は地方公共団体が直接運営することが基本」との見解を発表。レファレンスサービスの質が悪くなったなどとして、茨城県守谷市が再公営化に踏み切るなど、全国で少なくとも十七館が指定管理者制度を取りやめている。

 

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