トリック・オア・トリート!
とある夜のお話。
今宵は、ハロウィン。
玉姫、クロエ、縁、学、ニーナ、アシュリーたちはハロウィンパーティの準備をしていた。
「さあ、ハロウィンパーティーの始まりです!」
「う~ん! ユカリンが作ったパンプキンパイ最高!」
「ほんと、縁さんをお嫁にしたいですね~……」
「い、いや、ニーナちゃんのお嫁にいくのはちょっと……」
顔を真っ赤にして冗談を真に受ける縁に、一同は大笑い。
そんなふうにワイワイガヤガヤ、夜も更け、パーティーは終わり近づか……なかった。
「まだまだお菓子が食べたーい!!」
お菓子が底をつくと、クロエが叫んだ。
クロエだけではない。秋の夜長、食欲の秋。
お菓子を食べながらもうちょっとパーティーを続けたいな、誰もそう思っていた。
すると、クロエが「あああッ!」と何かを思いついた。
「せっかく今日はお菓子をもらえる日なんだからさあ、もらってきたらいいじゃない!」
「え!? じゃあ、この格好で外に出るってこと!?」
玉姫が恥ずかしがったのは、全員仮装していたからだ。
玉姫はカワイイ小悪魔。
クロエはヴァンパイア。
縁はジャック・オ・ランタン。
学は使い魔のクロネコ。
ニーナは魔女っ子。
アシュリーはオオカミ娘。
「いいじゃんいいじゃん! トリック・オア・トリートやってみよう!」
そして、始まったジャンケン大会で負けたのは……玉姫、学、アシュリーの超恥ずかしがり屋の三人娘。
「ね? やり直そう! もう一回だけ! お願い!」
「問答無用! お菓子をゲットするまで戻ってきちゃダメー!」
と、無理やり玉姫たちを外に追い出すクロエ。
だが、玉姫たちはなかなか戻ってこない。時間ばかりが過ぎていく。
「……大丈夫ですかね。何かあったんじゃないですか?」心配そうにつぶやく縁。
クロエとニーナも同じ気持ちだった。
「……しょうがないなぁ。ちょっと様子見に行こうか」
こうして外に出たクロエ、縁、ニーナ。
すると、間もなく一軒の家の前でモジモジしている玉姫、学、アシュリーを見つけた。
「な~んだ。まーだ恥ずかしがってんの~?」
陰に隠れて呆れるクロエ、縁、ニーナ。
「ちゃっちゃとやっちゃえばいいのに。私とユカリンなら楽勝だよね?」
と、クロエと縁は、ノリノリでカワイイお化けを演じてみる。
「イタズラしますよ! いや、イタズラしちゃうぞ! がおー!」
「そうそう! お菓子くれないと、必殺カミツキブラッディアタックをお見舞よ!」
ノリノリな二人を見て、ニーナは苦笑い。
「だったら、お二人が代わりにあげればいいのに……」
その時だった。
「あの、思ったんですが、他人の家でお菓子をもらわなくても、コンビニで買っても良いのではないでしょうか……?」
そんなアシュリーの声が聞こえてハッとするクロエたち。
「え、それってズルじゃないですか?」と、縁。
「う~ん……でも、恥ずかしくてできないんじゃね~。しょうがないんじゃない」
迷っている玉姫と学を見て、クロエが仕方なさそうにつぶやいた。だが、
「……でも、それはできないな」
そんな玉姫の声が聞こえて、クロエは驚く。
「ズルいのは、良くないよ。たとえ、ハロウィンのお遊びでも……よし! 覚悟を決めたわ! みんな行こ!」
家へ向かって行く玉姫。
そして学とアシュリーは顔を見合わせて、玉姫を追いかけていくのが見えた。
「玉姫さんはどんな時でも正々堂々とした人ですね……」
ニーナがしみじみと言うと、クロエは飛び出していった。
「私たちも一緒にお菓子もらいに行こうよ!」
縁とニーナは笑顔で頷くと、クロエと一緒に玉姫を追いかけていった。