紅葉がかわいそう!
とある休日。
ニーナ・アレクサンドロヴナは、リリアナを誘って、山間に散歩へ出かけた。
季節は秋へと移り変わろうとしている。
森の樹々たちの葉も、色づきはじめていた。
「すっかり、秋ですね……」
ニーナは季節が巡るその早さをしみじみと感じながらつぶやいて、リリアナを見た。
すると、リリアナはとても悲しそうに顔を歪ませていた。
「どうしたの?」
ニーナは戸惑いながら心配そうに訊ねた。
『ニーナ、私と合体しましょう!』
リリアナは思い詰めた表情で突然切り出した。
「合体!? いきなりどうしたんです?」
『……あの子たちを助けたいんです。
早く助けないと皆死んでしまいます』
リリアナが指さしたのは、色づき始めた葉たちだ。
紅葉も、リリアナには枯れて落葉していく、死を待つ仲間たちとしか見えなかったようだ。
『私とニーナの力があれば、また緑色の葉に回復できるはずです!』
「確かにそうですけど……」
『ニーナは何を迷っているんですか?紅葉がかわいそうです!』
リリアナは少しやきもきして、ニーナに迫る。
「やっぱりできません。それは……
紅葉が美しいと思うから。リリアナもそう思わない?」
『え……』
ニーナに言われて、リリアナは改めて紅葉する樹々たちを眺めた。
真っ赤や黄色に染まり、小風に悠然と揺れる枝葉たち……
「葉が枯れても樹は死んじゃうわけではありません。春になれば、花が咲き、夏になればまた青々と葉を茂らせる……巡る季節に合わせて生きているんです。
私は、その生命に感謝して、四季それぞれの美しさを楽しみたいです……」
ニーナが少しはにかみながら言うと、リリアナも微笑んで頷いた。