玉姫が水着に着替えたら……
乾いた空気、ギラギラと照りつける太陽。
本格的な夏が到来した頃、玉姫、クロエ、ヴィーナス、ヴァルキリーに短い夏休みが与えられた。
4人が向かったのは、ALCAの保養所にあるビーチだった。
ビーチを見た瞬間、クロエは興奮して声を上げる。
海はエメラルドグリーンに輝き、黄金色の砂浜はパウダーのようにサラサラだ。
そんなビーチには4人以外は誰もいないプライベートビーチ状態だった。
ビーチには『海の家』風の小屋が一軒建っており、そこに着替えのスペースがあった。
4人はそれぞれ個別のスペースに入って水着に着替え始めた。
いの一番に着替えて、元気に飛び出してきたのが白と水色のボーダーのビキニのクロエだった。
続いて、同じくビキニ姿のヴィーナス。
「わーお! ヴィーナスかわいい!」と、クロエははしゃぐ。
『そう?』
ヴィーナスもまんざらでもない様子で、身体をしならせポーズをとった。
続いて出てきたのは、これまたビキニのヴァルキリーだ。
「ヴァルキリーも、きゃわいい!」と、クロエはさらにはしゃぐ。
『……そうか?』ヴァルキリーは少し照れてはにかんだ。
だが、玉姫はまだ現れない。クロエは少しやきもきして言った。
「ねぇタマヒメ、まだ~?」
「……うーん」
玉姫からの返事は浮かないトーンだ。
「? どうしたのよ?」
心配になったクロエがカーテンを開けると、玉姫はまだ服を着たままだった。
「何してんの!? 水着は!?」クロエは驚いて声を上げた。
「やっぱり恥ずかしくて……」
玉姫はここにきて、クロエたちの前とはいえ、水着になることを怖気づいてしまったようだった。
「それに私の水着、あんまり可愛くないし……」
玉姫の手に握られていたのは、流行とは外れた古いタイプの水着だった。
その時、ヴィーナスは不敵な笑みを浮かべた。
『ウフフッ、こんなこともあろうかと……』
なんとヴィーナスは、玉姫用のトレンドのビキニを密かに用意していたのだ。
「もう……ヴィーナスったら!」
大胆な露出が予想されるビキニに抵抗する玉姫だったが、「絶対可愛いから!」「他に誰もいないんだからいいじゃない!」
と全員から説得され、仕方なく着替え直す。
「これ、ちょっと小さくない?」
着替えた後も玉姫は恥ずかしそうだ。
「そうかなぁ~? 隙アリ! ターッチ!」
クロエは玉姫の胸を触ると、海のほうへと逃げていく。
「もう、やめてよー!」玉姫は顔を真っ赤にしてクロエを追いかけた。
やがてクロエはザブンと海へと飛び込んだ。
「さあ、いっくよー!」
その声に応えるように、続いてヴィーナスとヴァルキリーも飛び込んで「早く玉姫も!」と手を振った。
玉姫は波打ち際で立ち止まると、クロエたちを見つめた。
このまま海賊船でも見つけて海の向こうまで行っちゃうんじゃないかしら
――そんなことを想像して、クスッと小さく笑った