この技の名は……
「必殺技の名前を考えましょう!」
縁は嬉々としてソルト・ヒューマノイド236に話しかけたが、ソルトの反応は冷たいものだった。
「……何故?」
アンドロイドであるソルトには、必殺技に名称があるという概念が理解できなかった。
縁は四苦八苦しながら説明した。
「ええと、そのほうが気合が入るからですよ! なんとか~って叫んで必殺技を繰り出すと、
『さあやるぞ!』って気合が入りません?」
「キアイ……とは何?」
今度は『気合』について説明しなければならず、縁は遠回りしながらどうにかソルトを説得した。
「……わかった。縁がそうしたいのなら考えよう」
ようやくネーミング会議が始まった。『電流剣』では堅苦しい。
『サンダー・アタック』ではベタすぎる。
『スペシャル・ソルト』では、美味しそうなお塩みたいだ。
案は出るが決め手がなく、ついに縁とソルトは黙り込んでしまった。
「そんなに考え込んじゃダメよ!」
そんな時、2人を見かねたクロエが口を挟んできた。
「あのね、必殺技は見栄えが大事! フィーリングにしたがって、ガツンとしたネーミングを付けちゃえばいいのよ!」
「では、クロエならどんな名前をつけるんだ?」
ソルトが訊くと、クロエは満面の笑みで胸を張った。
「ビリビリフラッシュソードはどう? カッコいいでしょ?」
クロエのアドバイスに、嬉しくなった縁は「それいただきます!」とノートを取り出しメモを取ろうとした。
使者の襲来を告げる警報が鳴ったのはその時だ。
縁は出撃を命ぜられ、いきなり新必殺技を披露する時がやってきた。
縁は使者の前に飛び出し、電流をまとった剣をふるう。
「クロエ先輩直伝! バリバリフィニッシュソード!」
――たぶん、こんな名前でしたよね?