もういい年だからそろそろ化粧を覚えようと思って
ドラッグストアに売ってる安い化粧品を試してはチグハグになるっていう経験があったから
家に帰ってきたら4万円が化粧品になっていた。
気に入っていた。出来上がった顔も不愉快じゃなかったし
最新流行っていう化粧でもなかったけど、ブラッシュアップするための雛形みたいなものが手に入ったと思っていた
これで完成形だと思ってたわけじゃない。化粧の上手い母親が娘に教えるような、最初の基本のメイクを買っただけだというつもりだった。
家に帰ってきたら家族に馬鹿にされた。もっと若い人に教えてもらったら。舞台化粧みたい。ナチュラルメイクの方がいい。
私は気に入ってた。気に入ってるんだから何言われてもいいと思っていた。これが完成形というつもりではない。若い人に教えてもらうのもいいかもしれない。ナチュラルメイクを目指すのもいい。舞台化粧のように見えるのは眉尻が長いからだ。あのBAさんの年齢の人は眉尻を長く描く。私はもう少し短くしてもいいと思う。
つまり家族と私は同意見で、何も悩むことはないのかもしれない。醤油皿にしようと思って醤油皿を買ってきたら、これには味噌汁が入らないよと言われたようなものだ。そんなことはわかっている。
私は姉が欲しかった。お洒落な友達には姉がいる。小さな頃から姉に化粧を教えてもらっていたと友達は言って、だからこんなにおしゃれなわけかと私は思った。技術やノウハウを仕込んでくれる家族っていいな。でも本当に私が欲しかったのは、化粧を応援してくれる家族だったのかもしれない。化粧した顔を見て、少しでも優しいことを言ってくれる家族。
化粧を買った時、毎日化粧しようと思った。もういい年だし、最低限の身だしなみとして必要だろう。毎日化粧をするのは楽しそうだ。BAさんが教えてくれたテクニックを忘れたくないためにも。
今、化粧はまだ紙袋に入ったままだ。開ける気にならない。全部メルカリで売ったらいくら返ってくるかなと思う。でも売りたくない。買ったときは楽しかったんだ。毎日化粧しようと思ったんだ。
6時に起きて、化粧品を開けるのをずっと躊躇っていたらもう1時間過ぎた。化粧をする時間はない。今日もすっぴんで行く。