聞かぬは一生の   作:コーンフレーク

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告白4

先程のナーベラルとの会話をきっかけにアインズの雰囲気が変わった事を感じたデミウルゴスは、自身の集中力(深読みレベル)を最大限に引き上げていた。

 

(…わざわざ『心しておけ』とまで仰ってくださったのだ。アインズ様のご期待に応えなければ…機を逃して御方を失望させるなどあってはならない!)

 

その決意を込めデミウルゴスはコキュートスとセバスに視線を投げ掛ける。自らと近い存在が至高なる御方に見初められたという感慨に浸っていた二人だったが、デミウルゴスの視線とその意味に気付き僅かに頷き返す。このまま終わる訳ではないというデミウルゴスからの忠告に、二人も気を引き締め直すのだった。

 

そして、ナーベラルがアインズからの熱い抱擁を勝ち取った事を目の当たりにしたアルベドはというと…

 

(くっ…小娘と侮っていたけどやるわね、ナーベラル!)

 

(こうなったら決着はベッドの上でつけるしかないという事ね…淫魔(サキュバス)の誇りにかけて絶対に負けられないわ!)

 

と、あらぬ方向へ向けて更に闘志を燃やしていた。

 

当然、その闘志は先程より大きなプレッシャーとなりアインズにも届く。

 

(…やり過ぎたか?)

 

自身に向けられるプレッシャーが大きくなった理由はアインズにも分かっている。何か良くない事が起きる前にナーベラルを離し先程心に決めた事を実行しようとするのだが、当のナーベラルはアインズに強く抱き締められた事によって幸福のあまりに放心状態となっていた。うかつに離すとそのまま倒れてしまいかねないのでやむを得ず片手でナーベラルの肩を抱えて正気に戻るのを待っていると、自分達の周りに集まっていたプレアデスの面々が心配そうにその様子を見ている事に気付く。その視線から伝わる姉妹達を繋ぐ強い絆と愛情を感じたアインズは、自身の想いを遂げる前にやらなければならない大切な事を思い出す。彼女達の大切な姉妹を妻にしようというのだ、まずは彼女達に認めてもらわなければならないだろう。

 

「ユリ、ルプスレギナ、ソリュシャン、シズ、エントマ。このアインズ・ウール・ゴウンはナーベラル・ガンマを心から愛する事をお前達に誓おう。だから、お前達の大切な姉妹を私の側に置くことを許してくれ」

 

このアインズの言葉を受けて、ユリが恭しく頭を下げながら答える。

 

「アインズ様、私達のような者に勿体なき御言葉…不束な妹ですがよろしくお願い致します」

 

続いて答えるのはルプスレギナとソリュシャン。

 

「アインズ様…ナーベラルと、ついでに私もよろしくお願い致します。お骨を口でしゃぶ…じゃなくて、清めるのは得意ですので…」

 

「アインズ様、ナーベラルとご入浴の際は是非私めにもお声がけください。ナーベラルの手が届かない所は私が綺麗にさせていただきたいと思います」

 

これを二人らしい冗談だと思い「ハハ…」と笑い飛ばそうとしたアインズだが、二人の目が妙に座っている事に気付く。

 

(え…二人共目が笑ってないけど…冗談、だよな…?)

 

この二人の冗談なのか本気なのか分からない発言にアインズがたじろいでいると、緊急事態に意識を取り戻したナーベラルがたまらず反応する。

 

「ちょっと貴女達!こんな時に何言ってるのよ!」

 

「おっ!やっと戻ってきたっすね、ナーちゃん。心配しなくても今のは冗談っすよ…多分」

 

「あら、私のは冗談ではないのよ。貴女のお願いであればアインズ様も聞いてくださるわ。よろしくね、ナーベラル」

 

「アインズ様、愚妹達が大変な失礼を…貴女達、いい加減にしなさい!」

 

ユリが慌てて止めに入るが、アインズはその光景を微笑ましく思っていた。

 

(やっぱり、ナーベラルが心から安らげるのはここなんだな…)

 

「ユリ、構わないぞ。二人のおかげでナーベラルも正気に戻ったみたいだしな。私にとってもお前達の絆は大切なものだ。それを間近で感じられて嬉しく思う」

 

そのアインズの言葉にユリ、ルプスレギナ、ソリュシャンは姿勢を正して臣下の礼をとる。三人の思いは一緒だった。このような配下への思いやりに満ちた御方に仕えられる幸せと、御方と結ばれる姉妹への祝福、そして僅かな嫉妬。その微妙な感情の揺らめきはアインズには分からなかったが、姉妹達はお互いがどのような思いでいるのかなんとなく分かってしまい視線を交錯させては気恥ずかしさと気まずさに頬を赤らめるのだった。

 

しかし、アインズにそんな乙女心など分かるはずもなく…頬を赤らめ畏まる三人に鷹揚に語りかける。

 

「そんなに畏まらないでくれ。今の時間は主従ではなく家族として接してもらえれば良い。…シズとエントマもな」

 

そう言ってアインズがシズとエントマの方を向くと、二人共我先にとアインズに抱きついてくる。ユリがそんな二人をたしなめようするがアインズは目線でそれを制して二人を抱き止めてやる。すると、シズとエントマは同時に口を開く。

 

「…アインズ様、ナーベラルと結婚したら…」

 

「私達のお兄ちゃんですぅ!」

 

「ハハハ、お兄ちゃんか…それはいいな」

 

そう言う二人の表情はいつもと変わらないがその口調からは喜びを感じられて、アインズも自らの動かない表情を心の中でほころばせる。そしてしばしの間新しく出来た可愛い妹達との会話を楽しもうとすると、まずはシズが語りかけてくる。

 

「…アインズ様…ナーベラルとの間に…赤ちゃん出来たら…シール貼っても…いい…?」

 

「…ああ、勿論だとも。その時は可愛がってくれよ。お前のようなお姉さんが居てくれれば私も安心だ」

 

純真無垢な表情で聞いてくるシズにアインズはそう答えるのだが、内心は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 

(…すまん、シズ…子供はなあ…それに万が一なんとかなったとしても骸骨とドッペルゲンガーの子供だぞ。どう考えてもアレな見た目だしモフモフもしてないよな…逆にシール貼ってもらえるかどうか…)

 

アインズは知らない。かつて自分の息子とも言えるパンドラズ・アクターがまぐれとはいえシールを貼られていた事を。

 

(デミウルゴスにモフモフになるなにかを開発してもらうか…)

 

遠い目をしながらそのような事を考えていると、今度はエントマが話しかけてくる。

 

「アインズ様ぁ。今度ぉ、お兄ちゃんとして私達のお茶会に参加してくださいませんかぁ?」

 

「おお、私などで良ければいつでも参加させてもらうが…ユリ、いいのか?」

 

「勿論です、アインズ様!妹達の不躾な願いを聞いてくださるなんて…寛大なお心に感謝いたします」

 

ユリは妹達が何を言い出すかとハラハラしながら見ていたのだが、アインズから話しを振られて頭を下げつつ答える。

 

「感謝しなければならないのは私の方だ。…特にユリ、お前にはな。お前が長女としてまとめてくれているからこそ、プレアデスは素晴らしいチームなのだという事を今日改めて感じたよ。日々の働きをなかなか労ってやれずにすまなかった」

 

アインズはナーベラルへのクセでユリの頭を撫でる。が、ユリの体が小刻みに震えている事に気付いて「しまった…」と思い手を引っ込める。

 

「ついいつものクセでな…このような行為はお前を不快にさせてしまったかもしれん。許してくれ」

 

「…アインズ様…」

 

静かに頭を上げるユリ。しかし、その表情と放たれた言葉はアインズが想像していたものとは全く違っていた。

 

「ボク、とっても嬉しいです!」

 

目を輝かせ、頬をゆるませて喜びをあらわにするユリ。興奮のあまりか両手はグーを作って豊満な胸の辺りにまで持ちあげられている。その姿は普段のユリからは想像も出来ないような愛らしさに満ちていた。至近距離でそれを見たアインズは当然衝撃を受ける。

 

(うおっ…これぞギャップ萌えというやつだな!人間の感覚でこんなの食らってたらひとたまりもないぞ。オーバーロードで良かった…そしてやまいこさん、なんかありがとう…)

 

自身の感情抑制能力とこのような素晴らしい存在を遺してくれたやまいこに感謝しながら、アインズは平静を装いユリの肩にポンと手を置く。

 

「そうか、喜んでくれたなら良かった。ユリ、困った事や願い事があれば何でも言ってくれよ。姉妹達の事でお前にだけ重荷を背負わせるわけにはいかないからな」

 

「アインズ様…ボ、私のようなものにそこまで…ありがとうございます」

 

「何を言う、私達は家族だろう」

 

アインズは目を潤ませながら感謝を伝えるユリの頭をもう一度撫で、今度はプレアデス全員に向かって言う。

 

「皆、私を受け入れてくれてありがとう。これからもよろしく頼むぞ」

 

「「「「「はい!アインズ様!」」」」」

 

跪く事なくそう答えるプレアデス達の姿にアインズは安らぎを覚えていた。それが自らを家族として認めてくれている証のように感じられたのだ。

 

(今度は、俺が皆の家族として誠意を見せる番だな…)

 

「皆、すまないが私の前まで来てくれるか」

 

「ハッ!かしこまりました」

 

アインズがいまだに玉座の近くに侍る守護者達にそう告げると、デミウルゴスがテキパキと指示を出してアインズの前に守護者、メイド、シモベ達を整列させる。最前列には本日の主役であるアルベドとナーベラル、二列目に守護者達がいて、その後ろにセバスとプレアデス、一般メイド、シモベ達、といった具合だ。皆が揃うのを確認するとアインズは語り始める。

 

「皆、今日はご苦労だったな。最後に私から伝えたい事がある…ああ、跪くのはやめてくれ。今の私は皆の家族として、皆の顔を見ながら話しをしたいのだ」

 

アインズはそう言ってシモベ達が跪こうとするのを押し留めると話しを続ける。

 

「皆、この世界に来てから今日まで本当に良く尽くしてくれたな。国を興し、望外にもアルベドとナーベラルという私には過ぎた伴侶を得る事が出来た。今日のような素晴らしい日を迎えられたのは皆の忠誠と献身のおかげだ。皆のこれまでの働きに心からの感謝と敬意を捧げよう」

 

「そして私なりに皆への感謝と敬意を示すために…私と私の仲間達(ギルメン)の真実をこれから皆に伝えようと思う。…今まで話していなかったが、私と仲間達(ギルメン)がどのような存在でなぜ去ってしまったのかという事をな…」

 

アインズの言葉を聞いたシモベ達に緊張が走り、デミウルゴスは確信する。

 

(…心しておけと仰ったのはこれか……!)

 

 

 

 

 




今回はここまでとなります。読んでくださった皆様ありがとうございます!もう少し話を進めたかったのですけど、プレアデス編書くので精一杯でした。まとまった投稿が出来ず申し訳ないです…オーレオールは処理出来る能力がないので登場させてあげられませんでした。でも、アインズ様が後でプレアデスの皆と挨拶に行ってると思います笑

続きはオバマスのイベ周回が一段落したらまた投稿させていただきます。あ、幸運にも20連で番外席次引けました!皆様も引けますように!

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