――検討会での一連の議論を振り返ってどう思うか
「無事に報告書がまとまってよかった。本来なら2019年通常国会に提出されるはずだった著作権法改正案が見送られ、海賊版対策を行うCODAとしては残念に思っていたからだ。ただ、19年の国の当初案は国民の萎縮の懸念を招いたのも事実だ。今回はそのあたりの懸念が払拭できており、皆さんの英知がまとめられた結果だと思う」
――規制対象を「著作権者の利益を不当に害する場合」に限定するかで意見が割れ、後藤さんは限定に反対だった
「今回は(出版社など)権利者側も限定要件を受け入れたが、これ以上要件を課すことには反対だ。海賊版業者が『不当に害さなければ何をしてもいいんだ』と悪用して吹聴する可能性がある。そうすると実効性が失われ、『ザル法』になってしまう。海賊版業者は“抜け道”を探すのがうまい。性悪説に基づいて議論する必要がある」
――際立って悪質だった海賊版サイト「漫画村」が18年に閉鎖。その後の現状は
「CODAが著作権侵害で削除要請する件数は1カ月当たり4万件ほど。状況は以前と変わっていない。内容はむしろ悪質化し、大規模になっている。匿名性や秘匿性が売りのサービスが世界で急激に育ちつつあり、官民双方の迅速な対処が必要だ」
――なぜ早急な対策が必要なのか
「今春から商用化が始まる第5世代(5G)移動通信システムを受け、通信速度が従来の約100倍になる。国境を超えた海賊版のやりとりも飛躍的に増える危険性が高い。対処には国際的な連携・執行が重要だが、著作権侵害の場合は強行犯や日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告の事件などと比べ、優先度が下がるのが実情だ。ただ、19年には国際的連携により、漫画村の元運営者がフィリピンで身柄を拘束された。実績ができてよかった」
――議論は今後国会に移る
「いかにこの問題が根深く、国際的な問題が潜んでいるのかを深掘りしてほしい。若年層に対する影響の大きさも踏まえて議論していただきたい」
――将来的な希望は
「日本が主体的に国際的なリーダーシップを取ってほしい。現在大きな被害を受けているのは、日本発の漫画・アニメだ。世界的影響力のある文化を発信できる国は、他に米英など数少ない。コンテンツ保護を強く主張するのは、世界でも米国以外なかなかない。だからこそ日本が国際世論をリードし、発信するべきだ」
(本間英士)
ごとう・たけろう 1962年、神奈川県生まれ。85年から日本ビデオ協会(現日本映像ソフト協会)に勤務。不正商品対策協議会事務局長、文化審議会専門委員などを歴任し、2017年から一般社団法人「コンテンツ海外流通促進機構」(CODA)代表理事。
今回の一連の議論をみていると、気掛かりな点がある。インターネット利用者側からの視点が少なかったことだ。
文化庁の有識者検討会には、知的財産法や刑法の専門家、弁護士、被害当事者ともいえる漫画家、出版社、消費者団体のメンバーらが名を連ねた。
しかし、この問題が重要なのは、規制対象を全ての著作物に広げることで、一般国民の生活に影響を及ぼすためだ。意見募集やアンケートは行われた。ただ、検討会でもユーザー目線、とりわけネットに慣れ親しんでいる若者がどんな使い方をしているかをベースに、もっと話し合う必要があったのではないか。
今後は国会で議論が続く。この問題で最も影響を受けるのは、われわれの子どもたちだ。未来に禍根を残さないよう、利用者の立場を考慮して意見を戦わせてほしい。 (森本昌彦)
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