福島県南相馬市の農家が出荷した牛11頭から基準を超える放射性セシウムが検出された問題で、東京都は11日夜、11頭より先にこの農家から出荷された6頭が、東京食肉市場の仲卸業者から東京、神奈川、静岡、大阪、愛媛の5都府県の業者に卸されていたと発表した。都によると、少なくとも北海道と千葉、愛知、徳島、高知の各県に転売されており、一部はすでに消費されているという。
都によると、6頭のうち、検査を終えた3頭すべてから基準を超える放射性セシウムが検出された。
福島県は同日、農家が東京電力福島第一原発事故以降も屋外に置いていた稲わらを11頭に与えていたのが原因と特定した。県によると、先に出荷された6頭についても、同じわらが与えられていた。
都は、6頭のうち、7月5日に府中市内の業者に販売された肉から、国の基準(1キロ当たり500ベクレル)の7倍近い3400ベクレルの放射性セシウムを検出。6月30日に新宿区内の業者に販売された別の牛の肉は2200ベクレルだったという。
静岡市保健所によると、同市清水区の食肉加工業者が6月10日、計27.8キロの「肩ロース」を購入。静岡県内の食肉販売業者や飲食店へ売られ、14.8キロがすでに消費者へ販売されていたという。同保健所が今月11日に残っていた肉を検査したところ、国の基準の4倍の同1998ベクレルの放射性セシウムを検出した。
神奈川県では、横浜、相模原、川崎各市の業者や店に販売されていた。横浜市内では63.6キロが6月24日に市内の販売店に渡った。大半は販売済みだったが、11.4キロ分は冷凍保存やチルド保存されていた。市は11日、立ち入り検査を実施して保存状態を確認し、保存を続けるよう指示した。
大阪府にも、都から、府内の食肉業者に2頭分が出荷されていたとの連絡が入ったが、2頭の食肉は市場には出回っていないことが確認されたといい、自主回収中という。
一方、徳島県によると、同県内にも雌牛のスネ肉約8.8キロが流通。東京都で5月30日に食肉処理され、卸売りされた松山市の食肉業者から、徳島県阿南市内の量販店に6月8日に納品されたものだという。「和牛切り落とし」として加工され、同10~12日の3日間に1パック200~300グラムの「特売品」として販売。完売したという。
福島県の調査では、17頭を出荷した農家から採取したわらを検査した結果、基準値(1キロあたり300ベクレル)の約60倍の放射性セシウムが検出された。県に農家が説明したところでは、所有する水田で昨秋刈り取ったわらを放置。原発が爆発した後の4月3日にわらを屋内に保管し、11頭を出荷する今月7日まで、1日に1頭あたり約1.5キロを与えていたという。
県は3月22日、事故前に刈り取ったえさを使うことを畜産関係団体などに通知していた。農家は県に「いけないとわかっていたが、震災の影響でえさが足りなかった」と話しているという。11頭の出荷にあたり県が6月26日に聞き取った際は「事故前に集めたものを与えている」と答えていた。
これを受け、県は県内のすべての肉用牛農家を対象に、えさを適切に管理しているかを調べる緊急の立ち入り調査を始めた。「計画的避難区域」と「緊急時避難準備区域」の約260戸とそれ以外の地域の約250戸の肉用牛農家でまず実施し、今週末までに終える予定。その後、約2800戸の繁殖牛農家に広げる。
また、両区域から出荷される牛については、これまで食肉処理した後に放射性物質が含まれているか抽出調査していたが、今後は解体されて枝肉となった両区域の肉はすべて調べる方針で、国と調整している。
さらに、両区域の牛については、できるだけ同県郡山市のと畜場で食肉処理し、検査した上で出荷する。県外で解体して枝肉となったものについては各都道府県で検査してもらえるよう厚生労働省を通じて依頼する。両区域以外の牛も、農家ごとに、初めて出荷する際、最低1頭分を検査する。