サウナの効能と注意点とは? 医師・加藤容崇さんが徹底解説!
近年サウナの人気が高まり、人から誘われる機会も増えているのではないだろうか。サウナはさまざまなメリットが語られているが、それも安全に利用してこそ。「日本サウナ学会」の代表理事を務め、癌(がん)の遺伝子解析を専門とする加藤容崇医師への取材をもとに、サウナの効能や注意点をまとめた。これからサウナを楽しもうと考えている方は、ぜひ参考にしてほしい。
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サウナの注意点
まずはサウナの注意点について。自分のペースで利用することはもちろん、下記の点にも留意が必要だ。
・こまめな水分補給を欠かさない
・飲酒しながら、あるいは飲酒後のサウナ利用は控える
・長時間の利用は控える
・気分が悪いときは利用をやめる
・高血圧、心臓疾患、運動制限を課せられている人は利用前に医師に相談する
・妊娠中の方は利用を控える
・5歳以下の子供も利用を控え、5歳から10歳の子供は大人と一緒に低温、短時間で負担がかからないように入る
上記の中からポイントを絞って加藤医師に解説してもらった。
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水分補給について
サウナ利用時に、気づかぬうちに脱水の状態に陥っていることがある。どうすれば自分の状態を把握できるのか?
「姿勢を正してイスに座り、両手をひざの上に乗せた状態で手の甲の静脈の盛り上がりを確認します。正常時の自分の血管の盛り上がりを覚えておいた上で、それと比較するのが望ましいです。血管がペタッとしていたら脱水の状態なので、サウナに入る前にきっちり水分補給をすべきです。ただし、一気に大量に飲むと水中毒(体液が急速に薄まり、けいれんや吐き気を催す)が起こるので、一回の水分補給はコップ2、3杯以内にして複数回に分けて摂取するのがいいでしょう」
妊婦について
妊娠初期に催奇形性(新生児に奇形を生じさせる性質)の危険があるため、加藤医師は妊婦のサウナ利用は控えるべきと話す。
「一般的に、湿式サウナ1セッション(温度60度、相対湿度60%、15分)あたり0.8度、乾式サウナ(温度91度、相対湿度10%程度、15分)であれば、1セッションあたり0.5度程度、深部体温(体の内部の温度)が上昇します。一方、水風呂は2分入っても0.2度ほどしか深部体温は下がりません。したがって、サウナ後にクールダウンしても体温が元に戻るわけではなく、実際はセッションごとに深部体温が加算され上昇していきます。
妊娠初期における催奇形性を起こす温度は38.9度(深部体温)とされています。そして妊娠初期には体温が高い状態が続きます。理論的には3セット以上、利用しなければ問題なさそうに見えますが、個人差も大きく、妊娠中、特に妊娠初期の湿式サウナの利用はやめておいた方が良いでしょう」
子供について
フィンランドのトゥルク大学の研究 (Children in sauna: cardiovascular adjustment, Pediatrics, 1990)の結果をもとに、加藤医師は低年齢でのサウナ利用の危険性を指摘する。
「温度70度で相対湿度20%のフィンランド式サウナを用いて、10分サウナ、10分室温でリカバリー、その後、心血管系のデータを解析する、という実験を行ったところ、10歳以下の年齢では血圧の低下が見られ、自律神経系が未熟でサウナという高温の環境に適応できていないことが判明しました。したがって、5歳以下の子供は利用を控え、5歳から10歳の子供は大人と一緒に低温、短時間で負担がかからないように利用するのが望ましいと考えます」
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サウナの効能
続いては、サウナの効能について。医学的には次のような効能が認められるという。
<精神的効能>
・多幸感
・スッキリ感
・リセット感
・発想力の上昇
・うつ状態の改善
<身体的効能>
・睡眠の質の向上
・疲労回復
・感覚の鋭敏化
・代謝アップ
・アンチエイジング
・血管の弾性力の上昇
加藤医師に上記の中からポイントを絞って解説してもらった。
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「脳疲労の回復」について
一般的には、「集中するとエネルギー消費が上昇して脳が疲れる」というイメージがあるが、実は集中して作業している時に消費するエネルギーの量は全体の5%程度。70〜80%程度は脳がアイドリングしている時に消費されるのだという。
「要するに何もしていない時に、ごちゃごちゃ考える、この“ごちゃごちゃ”が脳の疲労を促進します。ならばごちゃごちゃ考えなければ良い、と言われるかもしれませんが、これだけ情報があふれた現代で、それはほぼ不可能です。サウナではスマホも持ち込めないし、暑すぎるので、ごちゃごちゃ考えられなくなるため、脳の疲労回復に良いといえるでしょう」
「睡眠」について
「サウナに入るとよく眠れるようになる理由をご存じでしょうか? それはDPG(Distal-Proximal-Gradient)と呼ばれる、体の中心部と手足などの末端部位との温度差が関係しています」と加藤医師。どういうことか?
「人間の眠りやすさは、体の中心部の温度が下がり、末梢の温度が上がる時に上昇します。これはコタツに入って眠くなる、という現象を通じて、皆さん知っていることだと思います。サウナ利用時は中心部も末梢部も温度が上がり、サウナから出た後は中心も末梢も全体的に温度が緩やかに下がっていきますが、サウナによって副交感神経が活性化していて末梢血管が広がっているので、末梢の温度が保たれます。結果として末梢が暖かく、中心部が代わりに少し温度が低くなります。この体内温度の分布の違いが、『コタツ』状態と類似しており眠くなるわけです」
「血管」について
サウナに入ると心筋梗塞(こうそく)など心血管系の疾患が半減するらしい。それはサウナに入ることで血管の弾性力が上昇するからだという。
「血管は第二の心臓と言われます。心臓から拍出された血液は血管に入った後、血管の伸び縮みにより遠くへ効率よく運ばれます。加齢による動脈硬化などによって血管が硬くなると、血管のアシストが無くなるので心臓への負担が大きくなり狭心症や心筋梗塞のリスクが高まります。サウナに入ると温度の乱高下により血管が伸びたり縮んだりを強制的に行い、結果的に血管が柔軟になります。そのためサウナに入ると心筋梗塞など心血管系の疾患が半減します」
「ととのう」について
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ここまで医学的見地からサウナの注意点と効能を紹介してきた。それぞれの点に留意しながらサウナライフを楽しんでいただきたいが、最後に一つ、加藤医師からアドバイスが。いわゆる「ととのう」についてだ。
「ドラマ『サ道』の放送によって、サウナに大きな注目が集まってきており、『ととのう』という現象も一般化しつつあります。しかし、ドラマで描かれた万華鏡のような『ととのう』の演出はやや過剰な印象で、現実にはそのような感覚は訪れないでしょう。フワフワした感覚を抱く、皮膚の境界線がぼんやりする、頭がスッキリさえる、などと表現される体感を抱く人が多いようですが、いずれにしてもドラマよりマイルドな感覚です。
したがって、万華鏡のような『ととのう』感覚を追い求めるべきではないと考えます。それを追い求めて脳がごちゃごちゃ考えると、脳疲労につながり、『ととのい』から遠のいてしまいます。
『ととのう』はあくまで、適切にサウナを楽しんだ末に偶然訪れる感覚であり、『ととのえよう!』と邪念にあふれたサウナ利用はやめて、純粋に安全に気持ちよくサウナに入ることが大事です!」
(構成・編集部 下元 陽)
■プロフィール
加藤容崇(かとう・やすたか)
日本鍼治療標準化学会代表理事、日本サウナ学会 代表理事、慶応義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット特任助教・医師、北斗病院・医師。週5回のペースで利用するほどのサウナ好きで、サウナの効能の科学的な解明に取り組む。3月にはダイヤモンド社よりサウナ本を出版予定。
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