「総理に尻尾振るポチか!」野党が激怒“塩対応”予算委員長きょうの対応は…問題のやりとり詳細
- 野党幹部が怒り!棚橋予算委員長の委員会運営とは
- 与野党が指摘する棚橋氏の対応の“背景”と棚橋氏の反論
- 31日から翌週にかけて棚橋委員長の対応に変化は?
野党幹部も怒りをあらわに!野党に“塩対応”予算委員長の運営
きょう31日、衆議院の予算委員会で集中審議が行われるが、この場での棚橋泰文予算委員長の対応が注目されている。1月28日午後、立憲民主党の会合で、枝野代表は、険しい顔で怒りをあらわにした。
「日常的に完全に与党寄りの運営を公然としてはばからない。そろそろ入閣したいということで、総理に尻尾を振ってるポチなのか!恥を知れ!」
この痛烈な批判の言葉が、棚橋泰文委員長に向けられたものだった。棚橋委員長は自民党所属で去年から予算委員長を務めているのだが、28日の予算委員会ではこんな場面があった。
立憲・川内博史議員:
「委員長ね、公平公正な議事の進行を務めると言っておいて、今の答弁であなた理解した?」
棚橋予算委員長:
「委員長はそもそも答弁する立場にありません」
本来、安倍首相ら閣僚が答弁するはずの予算委員会の場で、なぜか野党と、“行司役”であるはずの予算委員長の激しいやりとりが展開された。この異例の光景には前段があった。
質問に立った川内議員は、桜を見る会について政府側を追及した。この中で招待者名簿の保存期間は1年未満とされているが、公文書管理法では「行政の事務事業の実績の合理的跡付け・検証に必要な行政文書」の保存期間は1年以上とされていると指摘し、桜を見る会の招待者名簿は「行政の実績」にあたらないのかどうかを政府に質した。
これに対し、答弁に立った内閣府の大塚官房長が「行政の実績」にあたるかどうかは直接的に答えず、公文書管理法の原則を示した上で桜の会の名簿の扱いは「ガイドラインで設定された例外の保存期間で規定されている」という趣旨の答弁を繰り返した。
棚橋委員長VS川内議員 さや当ての詳細
これを受け、川内議員が棚橋委員長に対し、政府側が質問に直接答えるように指導して欲しいと促したが、その後も政府の答弁の趣旨は変わらず。野党席からのヤジで騒然とする中で、以下のようなやりとりが展開された。
棚橋委員長:
「(野党議員らのヤジを受けて)ご意見があるなら川内博史君からどうぞ」
川内議員:
「委員長ね、公平公正な議事を進めますと言っておいて今の答弁であなた理解した?理解した?どっちよじゃあ?実績と言ったのか実績じゃないと言ったのかどっちよ?委員長わかった?同じことをえんえんと繰り返して…」
棚橋委員長:
「まずご静粛に。ガイドラインにおける定義と法における定義の議論だと思いますが、委員長はそもそも答弁する立場にございません。その上でもう一度と言うことであれば大臣官房に答弁頂きます」
(質疑をはさんで)
川内議員:
「委員長、(私が)変なこと言っています?出してくださいって言っているだけなんですよ、見解を。桜を見る会の名簿は政府の事務事業の実績であるのか否かということについて政府の見解がなければ本予算の審議なんて入れないですよ。委員長に要請します」
棚橋委員長:
「ん?何を要請されるんですか?」
川内議員:
「委員長、これだけしゃべっているのに…、私のいうことを理解できないなら官房長のいうことなんか絶対理解できていないでしょう!」
棚橋委員長:
「川内博史さんに申し上げます。長すぎて理解できません、短くお願いします」
川内議員:
「統一見解を出してほしいと言っているんです。桜を見る会の名簿が政府の事務事業の実績にあたるのか否かということを政府として明確な見解を出してほしいと言っているんです」
このように、川内議員は棚橋委員長に対し、政府が同じ答弁を繰り返さず質問に直接答えるように“仕切って欲しい”と再三要求した。しかし棚橋委員長が内閣府官房長のほぼ同様の答弁を許容する、いわば「塩対応」だったということ、また他の場面でも野党議員の質問をさえぎったり、質疑時間を無駄にしているなどとして、野党全体で棚橋氏に矛先を向け始めたのだ。
反発の背景には、棚橋氏が“再入閣”狙い官邸に配慮しているとの見方
そもそも棚橋委員長については、今年に限らず、去年の臨時国会から“強引な運営”だとして野党は反発していて、理事会の場で、委員長と野党側で怒鳴り合いになる場面もあったという。
また、棚橋委員長が、政府寄りとの批判を受ける対応をとる理由について、永田町では、1つの指摘が出ている。棚橋氏は当選8回で2004年には科学技術相として入閣したが、その後、大臣ポストには就いておらず、次の内閣改造で安倍総理に起用してもらおうと躍起になっているのではという見方だ。
自民党内からは「再入閣を目指すことに意欲を示しすぎ」「本人は威厳を保つためらしいが、空回り」との声が出ていて、予算委員長への就任についても、テレビの国会中継で映ることを念頭に自ら待望し、“猟官運動”したという指摘もある。こうした見方が冒頭の枝野代表による批判につながっているのだ。
棚橋氏も反論、枝野代表発言に「強い憤り」
一方、棚橋委員長は、枝野代表の発言に反発している。「枝野代表が人を人として扱わない発言をされたことに、大変強い憤りを覚えている」と訴えた上で、「公平公正にこれからもやりたい」と述べた。
そして政府与党内には棚橋氏を擁護する声も多い。ある閣僚は「参院の予算委員会に出て、衆院の委員会がいかに止まらないかを感じている。閣僚は助かっている」と、棚橋氏の運営を評価している。首相周辺も棚橋氏の対応について、「あの程度はご愛嬌でしょ」と擁護していて、政権が追及を受ける時間が少しでも減る材料になればと捉えている感がある。また、野党側の桜の会をめぐる質問の細かさの方が問題だという指摘もある。
野党の対抗策には「スーパー委員長化」の懸念も
では、野党側に棚橋氏への対抗手段はないのかというと、1つの策として、委員長の『解任決議案』提出がある。ただし、これには一つの国会で1回限りという原則がある。そのため、与党が多数を握る中で、序盤で解任決議案を出して否決されれば、棚橋氏がこれ以上解任決議を受けない“スーパー委員長”となってしまうため、野党側は簡単に出すわけにはいかないのだ。
こうした状況をふまえ、野党側は「一昔前なら大臣の首が飛ぶような案件だ」と憤る一方、「解任決議案を出すと、かえって喜びそうだから出さない。どれだけひどいか、テレビを通じて国民にさらす」という方針だ。
棚橋氏をめぐる今後の攻防の行方は…
29日、立憲民主党の安住国対委員長は、自民党の森山国対委員長に、棚橋氏による委員会運営の改善を申し入れた。会談後、安住氏は「今までにない姑息さで、やっぱり自民党のやることではない!これをやらせている安倍総理って、あなたなんですかとなりますよ」と改めて批判した。
一方の森山氏は棚橋氏について「厳正中立に真摯に委員会を運営していただいているのではないかと思いますが、私が見落としている所でいろんなことがあったのかもしれませんし、よく話をしてみたい」と述べ、棚橋氏と話し合う意向を示した。その上で枝野代表が棚橋委員長を「ポチ」呼ばわりしたことについては「慎むべきだ」と批判した。
1月30日には今年度補正予算が成立し、衆議院の予算委員会では、31日の集中審議、週明けからの来年度予算案の審議と、注目の質疑が続く。棚橋委員長の委員会運営が変わるのかどうかが、与野党の攻防の1つのカギとなりそうだ。
(フジテレビ政治部 大築紅葉)