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馬車って自分では動けないんです。あっ、ちょっと動けた。 作者:うしさん
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第155話 ブレインの考え

誤字報告ありがとうございます。



 ボルト、ハヤテ、ブレインの初風呂から明けて翌朝、またガンちゃんの故郷の森に来ていた。

 ボルトもあれだけ嫌がっていた風呂だったのに、結構な長湯をしてたみたいだ。たぶん、気持ちが良かったんだろうね、今後は自分から入ってくれるかもね。

 一郎には『まぁまぁだった、また入るかもしれん』って言ってたらしいから、長湯をして自分からそう言うって事は風呂を気に入ってくれたんだろうね。



 森の精霊エントの傍に来たが、ボルト達は沖合のダンジョンにさっさと行ってしまった。

 今日は一郎を付いて行かせたので、帰りは馬車ダンジョンに直接戻る事だろう。


 オレ達の方は、パルにエントの事はドワーフに内緒にする事を森の妖精に伝えてもらった。もちろんエントにも伝えてもらった。

 妖精はオレとは話せないけど、ドワーフの中でも相性のいい奴がいたら話せるかもしれないし、誘導して連れて行くかもしれないので、秘密にしておくよう徹底させた。


 頼んだ事は四つ。

 精霊エントの事はドワーフには秘密にする事。

 精霊エントは妖精達の面倒を見る事。

 妖精達はバロメッツの世話を優先的にする事。

 森で起こった脅威に対しては出来る限り精霊エントが対処する事。これは、もし無理ならパルでもメイビーでも連絡をする事と言っておいた。

 精霊エントはパルなら直接、メイビーなら連れてる精霊に連絡が取れるみたいだから。


 先に、バロメッツ畑の様子を見て、昨日と変わりないと確認できた。

 その足でドワーフ王国に行き、城まで入って行った。

 大臣さんはもう来ていて、城に入ったすぐの所で待っていた。


「おはようございます、大臣さん」

 うちの仲間も大臣さんに挨拶をした。

「おはよう。昨夜はこちらには戻って来なかったのですな。私の会心の作です、どうぞお納めください」

 大臣さんは一振りの刀を渡してくれた。

「こちらはミニチュアソードです。小さい剣とは中々難しいものですな、通常サイズと同じぐらい時間が掛かりましたぞ」


 こっちも大臣さんが作ってくれたのかな?

 両方の武器は一旦オレが収納。刀はセンに後であげるけど、ミニチュアソードはパルのものだ。すぐに出して渡してあげた。

 お金はまだ支払ってなかったので、この場で渡した。


「この者達が同行します。案内をお願いできますかな」

「はい、こちらも作業は終わっていますので、確認してもらえればいいだけですから」

「それはよかった。では、後はよろしく」

「はい、わかりました」

 紹介された兵士団は、来た時にも案内してくれたバッカスだった。

 前回は三人の兵士に連れて来てもらったが、今回は初めに出会ったときよりも多いように見えた。


「いやぁ、久し振りだなぁ」

 バッカスは気軽に声を掛けてくれた。

「そうだね、二日ぶりかな? でも、今日は多くない?」

 二日ぶりで合ってると思うけど、二日間の内容が濃かったからもっと会って無い感はあった。


「ん? 兵士の数の事か? 今日は偵察じゃないからな。ちっちゃい嬢ちゃん…じゃなかったパルだったな。パルがバロメッツを集めてくれたんだろ? その管理はうちの国でするんだ、結界を施すためのメンバーを連れて行くからな。その分、人数も増えるってもんさ」

 結界師が増員されたのか。結界までうちでやればよかった? ルシエルなんかパッパッと結界を張ってしまいそうだけど。

 でも、そこまでする必要もないか、今回は結界師も用意してくれてるんだ、ここはドワーフ達に任せようか。



 ドワーフの兵士と共に山から下りて森へと入って行く。

 森に入って少し南側に行くとバロメッツの群生地が現れた。


「おお! これは凄い! これだけバロメッツが揃うと壮観だなぁ。しかも妖精の数も凄い! これなら良い実を付けてくれそうだ」

 バロメッツを見たバッカスは大喜びだ。

 ドワーフの兵士達もみんな笑顔でバロメッツを見ている。

 食材にも武具の素材にもなるバロメッツはドワーフ達にとってはありがたい魔物。植物系でありながら羊の魔物を実に付けるので、育てられなくも無いが、やはりドワーフには難しい。

 それを妖精が管理してくれるとあれば、豊作間違いなし。

 山で取れる鉱物にバロメッツの骨や角を混ぜて作られる武具を想像して目尻が下がるドワーフ達。

 これはいい報告をしてくれそうだね。大臣さんとの交渉もうまく行きそうだ。


 前回と同じくバッカスが二人の兵士を連れて、オレ達とドワーフ王国へ戻る事になった。

 もう確認はしてもらったし、これだけ集まっていればドワーフ達だけでも結界を張る作業も時間はそれほど掛からないとの事だったので、後は任せてオレ達は一足先に王国へ戻った。


 大臣さんはバッカスからの報告を聞くと、すぐに報酬をくれた。バッカスは凄く信用されてるんだね。報酬をもらうと次の予定も詰まってるので、すぐにドワーフ王国を出た。

 エントの所へ向かう道中では、ドワーフの兵士団とすれ違った。

 皆、満足そうな笑顔で別れの挨拶を交わしてくれた。

 いい仕事ができたみたいで良かったよ。今回はパルが大活躍だったな。



 次はメキドナだ。

 メキドナでシャンプー&リンスの補充を終えると、王都キュジャーグへ。

 王都キュジャーグではシャンプー&リンスとBASHA酒の補充もお願いされた。

 どちらの町でもルシエル作の転送魔法陣はダンジョンで大活躍中で、ダンジョン探索者の数も増えて冒険者ギルドの利益も上がってるようだ。

 ダンジョンの入場料は国や領主の管理だが、転送魔法陣は冒険者ギルドの利益になるし、ダンジョン探索者が増えればダンジョンで取って来る魔石やドロップアイテムも増える訳だから冒険者ギルドも以前の1.5倍~2倍の利益を上げているそうだ。


 しかも、ダンジョン地図がよく売れているそうで、売上一位はルシエル作だが、ライリィ作も僅差の二位に付けているそうだ。

 今言ったものは全部ルシエルとライリィの冒険者カードに自動的に貯金されているから、彼女達の財産は凄いものになっているんではないだろうか。


 王都キュジャーグに寄った時にミランダリィさんの屋敷に寄ったが、王城に行っていて留守だったため、会う事はできなかった。

 またいつでも来れるし、次の機会に説明しよう。


「ブレイン、これがうちの今の収入なんだけど、何か思う事はあった?」

 アーランノットシティは明日にして、今日はもう馬車ダンジョンに帰って来ている。

 今日一日オレに同行したブレインに感想を聞いてみた。


「よく考えてると思うよ。ただねぇ……」

 褒めてくれたけど、今いち気に入らないようだ。


「何か考えがあるんなら参考にさせてもらうから言ってくれよ」

「了解リーダー。じゃあ言わせてもらうけど、今日付いていって秘密にしたい部分がある事は分かったよ。でも、秘密を隠した状態でも僕ならもっと稼いでみせるよ。ただ気になったのは、リーダーは稼ぎたいのかい?」


 うっ、結構核心をついて来るな。

 お金はもう十分あると思う。これ以上稼ぎたいかというとそうでも無いんだ。でも、まだ生きて行かなくてはいけないし、仲間もいる。稼がないととも思うし、実際分からないんだよ。


「お金を稼ぐだけならダンジョンに行くなり、高レベルの魔物を倒す事で大金を稼げる事は、今日分かったよ。それは僕一人でもできそうだ。人間界では、お金が沢山あれば優雅な暮らしができる事も分かった。人間は力が弱くても王になれることは前から分かってたけど、力が弱くてもお金を稼ぐ事ができるって今日知ったよ」

 ずっと黙ってるとは思ってたけど、ちゃんと見る所は見てたんだ。


「確かに今日見て回ったシャンプー&リンスや転送魔法陣、地図もそうだけど人間界では戦う事無くお金を手に入れられるね。他にも、料理や武具だって稼げる。いや、そんな事をしなくても、この面子なら魔物を倒すだけで十分人間の世界でいい暮らしができるだろうね」

 確かにブレインの言う通りだけど、何が言いたいんだ?


「そこでリーダーにハッキリさせてほしいんだけど、お金はいるのかい?」

「そりゃあ、いるだろ。人間の町にも行くことはあるんだ。宿に泊まるにしても、物を買うにしてもお金はいるよ」

「でも、普段は全く使わないだろ? ここの暮らしでお金は使うのかい?」

「まぁ、ここにいればほとんど使う事は無いけど」

「だろ? もう十分にお金は稼いでるようだし、次に向けて行動するべきじゃないかと僕は考えるんだ」

 次? 次ってなんだ?


「次って?」

「国を作るのさ」

「はぁ?」

 何言ってんの? こいつ。


「国だよ、国を作るのさ」

「そんな事できるわけ……」

「できるさ。僕がすべてお膳立てするよ、そしてリーダーは王となるんだ。いや、目立ちたく無いんなら王にはならなくてもいい、全然関係ないものを王として立たせてもいい。真の王が誰かさえハッキリさせておけばいいだけだからね」


「なんで国なんか……」

「国を興す事でリーダーの望みがすべて叶うからさ。国というのはいい隠れ蓑になる。そして、貿易によってお金も十分稼げる。ライリィやルシエルの嫁ぎ先だって見つかるかもしれないよ? 国を興す事でリーダーの要望がすべて叶うんだ。そして、僕達も堂々と王と呼べるわけさ」


 いつそんなとこまで調べたんだ? オレ達の内情までバッチリ調べてるじゃないか。


 おおおお! っと、どよめき立つ一郎以外の召し使い一同。

 王と呼ぶという所にガッツリ食い付いた。

 「宗主様に相応しい称号です」とか「いつから王とお呼びすればいいのでしょうか」とか「ブレイン様も中々やりますね」とか口々に言い合っている。


 なぜそういう方向に話が進むんだ? 王って、ブレインは何を言い出すんだ。

 俺の要望が全て叶う? そうかもしれないけど、国を興すって……こいつの考えってオレには付いて行けないよ。

 国ってそんなに簡単に作れるもんじゃないだろ。


「実はね、もう目をつけている所があるんだ。僕がこてんぱんにやられた場所から少し西に行くとね、獣人達の集落が点在してるんだけど、獣人達って各集落同士は仲が良くないんだ。そこを統一させて、国を興せばいいんじゃないかと考えてる。獣人達って身体能力は高いのに、おつむが悪いから人間からはいいように使われてるしさ。そこを統一すれば国なんてすぐに作れるよ」


「そんな簡単に……」

「簡単さ。獣人って力の強いものには服従するんだよ。僕一人でも三日と掛からず統一してみせるよ。後は住む場所の提供だけだね。リーダーならここみたいにダンジョンで国を作れるんじゃない? ダンジョンなら色々と都合もいいんだよね」


 簡単に言ってくれるよ。でも、できなくは無いな。

 問題はオレの気持ちか……


 ブレインの言ってる事はなんとなく分かる。でも国って……そんなの望んで無いんだよ。オレは旅をしたいんだよ。


「国を興して他国と交流すれば情報も今まで以上に集まると思うよ」

 くっ、こいつ、オレの思考を読んでるのか?


 今日の所は結論は出さずに保留とした。

 却下ではなく保留だったので、ブレインも引き下がってくれた。


 突拍子もない事を言い出したなぁ。

 どうするのが正解なのかな。



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