「アメリカン・プレーリー・リザーブ」(APR)は、米国モンタナ州に広大な保護区を設立した自然保護団体だ。
かつて一帯に生息していたバイソンを復活させるなど、入植者たちが定住した19世紀より前の自然をよみがえらせようとしている。設立から19年間で、ハイテク企業の起業家や実業家からの寄付を中心に1億6000万ドル(176億円)の資金を集めた。
これまでに30カ所の私有地、合わせて4万2000ヘクタールを購入し、隣接する公有地からは12万1000ヘクタールを超える放牧用の土地を借りている。購入した土地はすべて政府指定の保護区に隣接しており、これらを中心に自らの保護区を広げていく考えだ。そして、これまでに3カ所の所有地に800頭以上のバイソンを放ってきた。
APRの所有地を取り囲む七つの郡では、2009~17年だけで、40万ヘクタールを超す草原が農地に変わっている。「さまざまな動物が次々と姿を消し、生息地が奪われています。すぐに手を打たなければ、チャンスは永遠に失われてしまうでしょう」と創設者の一人であるショーン・ゲリティは語る。
APRの構想は独創的だ。それ故に、大きな反発を呼んでもいる。
消えゆく過去への執着
APRが取得して間もないツー・クロウ・ランチという場所は、見渡す限り荒涼とした土地だ。この地方では、何世代にもわたって多くの人々が暮らしてきた。現在、APRの所有地に近い道路沿いの柵には、カウボーイ姿の父と息子の写真に「このカウボーイを救え。APRを阻止しろ」と書かれた横断幕がつるされている。住民たちによるものだ。
曽祖父がフランス人と北米先住民の血を引くカウボーイであるリア・ラトレイも、横断幕を何枚も取り付けたという。「APRの最終目的は住民を締め出すことだと思います」。かつての自然を復活させようというAPRの取り組みが、住民が育んできた文化を脅かすと、彼女は恐れている。
APRへの嫌悪感には文化的な面もある。50人ほどの職員を抱えるAPRの本部は、しゃれた大学都市のボーズマンにあって、最寄りの所有地から車で4時間もかかる。APRに大口の寄付をしているのは、シリコンバレーやニューヨーク市、ドイツなど、さらに遠くにいる人々だ。なかにはヘリコプターでやって来て、APRが草原に設置した豪華なユルト(ゲル)に泊まっていく人もいる。「東海岸の金持ち連中がやって来ては、できるものなら、こんな生活をしてみろと見せびらかすんです」とラトレイは言う。
この草原地帯について、APRは独自の未来像を描き、住民たちはまったく別の像を描いている。どちらもこの土地に対して深い愛着を抱いている。どちらもはかなく消えていく過去に執着している。
私たちはどちらの過去を取り戻したいのだろうか?バイソンやハイイログマが川辺に姿を見せていた1805年だろうか?それとも、柵に囲まれた牧場で牛が放牧され、町もにぎわっていた1905年だろうか?
※ナショナル ジオグラフィック2月号「分断される大草原」では米国モンタナ州で広大な私有地を購入し、自然をよみがえらせたい保護団体と、それに反発する地域住民の激しい対立についてレポートします。


















