岩田幸彰さんはヨットでオリンピックを目指していたスポーツマン。戦争で夢を諦めたものの、オリンピックには並々ならぬ強い情熱を抱いています。その情熱の源は田畑さんの人となりにひかれたからだけでなく、「たとえ裏方でもオリンピックに関わりたい」という熱量と、彼の挫折があったからなのだと知ったとき、役に気持ちがグッと乗りました。また、岩田さんは田畑さんの右腕として活躍された方。いわば、田畑さんありきの岩田さん。田畑さんの言動をいち早く理解し、応じる岩田さんを演じるにあたり、ドラマの中の関係性のように、阿部サダヲさんのお芝居の動きに僕自身も柔軟に反応したいなと思っていましたね。
僕が演じる東 龍太郎さんは1964年当時の都知事で、東京オリンピックを成功に導いた人物。田畑の情熱に突き動かされる形で都知事となり、さまざまな思惑が飛び交う政治の世界へ足を踏み入れました。もともと東京帝国大学のボート部出身でスポーツ医学の権威、一人でコツコツやっているほうが好きな学者肌タイプ。いろんなところで「人柄がいい」と書かれているので、何か起こるとやり玉に挙げられるようなポジションに就いたことで、相当ご苦労があったのではないかなと想像しています。
ただ、1940年の東京オリンピック返上を、スポーツマンとして、体協メンバーとして同志の田畑と同じく悔しい気持ちで受け止めており、いつか再び東京オリンピックを実現させたいと情熱を燃やしていたと思うんです。その一歩であるオリンピック招致を成功させるためには、関連するポストを身内で固めることが大きな力になることから「晩節を汚しても」と役割の一つとして引き受けたのかもしれませんね。それほどまでに、まーちゃんとオリンピックを実現させたかったというのは、演じていて人間ドラマとして共感できました。