INTERVIEW

噂のラップ・バトル・プロジェクトの決戦曲がついに登場! 伊東健人とKOJIMA & KAI_SHiNE(山嵐)が語る“DEATH RESPECT”

ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-

  • 2018.11.26
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噂のラップ・バトル・プロジェクトの決戦曲がついに登場! 伊東健人とKOJIMA & KAI_SHiNE(山嵐)が語る“DEATH RESPECT”

加熱し続ける二次元ラップ・バトル・コンテンツの決勝曲がいよいよ登場! 今回は、キャスト陣から観音坂独歩役の伊東健人、楽曲を制作した山嵐のKOJIMAとKAI_SHiNEを迎えて鼎談を実施。その世界観と魅力を探ってみました

 男性声優の演じる12人のキャラクターがラップでバトルを繰り広げる話題のコンテンツ「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」。昨年9月に始動して以来、YouTubeやCDなどを通じて楽曲を発表してきた同プロジェクトだが、声優陣によるラップやその筋のプロが手掛けるトラックのクォリティーの高さが評判となり、声優ファンやラップ好きの枠を超えて幅広い支持を獲得。これまでに3度のリアル・ライヴも開催され、来年にはゲーム化も決定するなど、その熱は高まるなるばかりだ。

 本作は2次元ならではの濃厚な世界観も魅力のひとつ。12人のキャラはそれぞれ〈イケブクロ〉〈ヨコハマ〉〈シブヤ〉〈シンジュク〉の各ディビジョンに所属し、人の精神に感応する特殊マイクを武器に3人1組のMCグループとして領土を奪い合う、というのがストーリーの大筋となっている。さらに今年に入って、ユーザーの投票でチームの勝敗を決める参加型企画〈Battle Season〉を展開。その勝負を経て勝ち残ったヨコハマ・ディビジョンのMAD TRIGGER CREW、シンジュク・ディビジョンの麻天狼による勝敗を決めるための楽曲が、このたびリリースされたニュー・シングル『MAD TRIGGER CREW VS 麻天狼』に収録されているバトル曲“DEATH RESPECT”だ。

ヨコハマ・ディビジョン MAD TRIGGER CREW,シンジュク・ディビジョン 麻天狼 MAD TRIGGER CREW vs 麻天狼 EVIL LINE(2018)

 ヘヴィーなミクスチャー・ロックに乗せて6人のキャラがラップでつばぜり合う同曲を制作したのは、これで〈ヒプノシスマイク〉に初参加となるシーンの重鎮、山嵐。今回は同バンドよりKOJIMA(ヴォーカル)とKAI_SHiNE(マシーン)、そしてキャストを代表して麻天狼所属の観音坂独歩役を務める伊東健人を迎え、本コンテンツの魅力について語ってもらった。

 

すごい〈こんにゃろー〉

――山嵐のお二人は〈ヒプノシスマイク〉作品へ今回初めて参加されてますが、第一印象はいかがでした?

KAI_SHiNE「ラッパ我リヤとかサイプレス(上野)、KENくん(KEN THE 390)みたいに僕らも知ってる連中が参加してるということもあると思うんですけど、楽曲提供のお話をいただいてから初めて何曲か聴かせてもらったときに、どの曲もちゃんとそれぞれの街で実際に活動してるラッパーとかクラブの雰囲気、そこで起こってることの空気がどこかに感じられたんですよね。作り手側も自分たちらしさを出して曲を作ってると思ったし」

KOJIMA「だから楽しそうだし、僕らもやってみたいと思ったんです」

KAI_SHiNE「ぶっちゃけ最初は〈なんで俺たちへ話がきたんだろう?〉という気持ちがあったんですよ(笑)。山嵐の名義で誰かに楽曲を提供すること自体が初めてのことだったし。でも、曲を聴いたらラップというカルチャーの背景がちゃんと見えたし、2次元の絵はキラキラした感じだけど、それを2.5次元として解釈したら人っぽさも見えてきて、〈俺たちが参加してもいいのかも〉と思えたんです」

――そこから“DEATH RESPECT”の制作はどのように進めたんですか?

KAI_SHiNE「トラックはギターのKAZIと僕が中心になって作ったんですけど、その段階ではどのディビジョンが決勝戦に残るか決まってなかったので、オケも〈決戦〉というイメージだけで制作を進めました。(作詞を担当した)KOJIMAさんにはその間に4チームぶん全員のキャラクターを把握してもらって(笑)」

KOJIMA「今まで自分の生活の中でアニメを観る機会もなかったので、最初は焦りましたね(笑)。でも音源を聴いてるうちにスッと入ってきたんですよ。そこからは、キャラクターそれぞれの関係性に合わせて、そいつらがディスり合うときに自分ならどこをついてラップするかを考えるのが楽しかったし、一気にバッと書けました」

KAI_SHiNE「最初はうちらの要素を削らなくてはいけないことになったら嫌だなあと思ってたんですよ。でも、今までの曲を聴いたら、いつものヤマ(山嵐)らしくゴリッといけば、決勝らしい白熱したものになるだろうと思って。もちろんMCの人数が多いぶん、普段よりも曲の構成を多くしなくちゃいけなかったりはしましたけど、基本的には自分たちの感覚のまま作れましたね」

――伊東さんは今回の曲を聴いてどう思われましたか?

伊東「最終決戦に相応しい曲がドカーンときたので嬉しかったですし、麻天狼の立場からすると、今までストレートに気持ちをぶつけるタイプの曲はあまりなかったので、〈やっとこういう曲ができる!〉という気持ちがありましたね。シンジュクのキャラクターは3人ともクセがあるので、こういう曲はイケブクロが担当することが多いんです」

KAI_SHiNE「トレーラーが出た後のファンの反応を見てると、特に(伊弉冉)一二三と独歩に関しては〈今までとは違う〉というコメントが多くて。そこはしてやったりと思いました(笑)」

伊東「もうほんとに〈よくぞ!〉という感じで、この曲がシンジュクに足りなかったものを引き出してくれたと思っています」

KOJIMA「声優の皆さんには、自分がデモ・トラックに入れた仮歌を覚えていただいてレコーディングしてもらったんですけど、その音源を聴いたらクォリティーが半端なくて、僕らの想像してたものをスコーンと超えていってくれたんですよ。僕が〈こうしてほしい〉と思ってたところはそのままやってくれるし、なおかつ声優さんならではの感情の起伏とか強弱のつけ方がすごくて。独歩も最初聴いた時にヤバいと思ったよね?」

KAI_SHiNE「僕ら二人だけじゃなくて、キャラのことを把握しきってない他のメンバーも、みんな『この〈こんにゃろー〉はヤバいね』って言ってたんで(笑)」

伊東「恐縮です。でも、僕はラップをしたのが〈ヒプノシスマイク〉でほぼ初めてだったので、まだ本当に見様見真似なんですよ。仮歌を繰り返し聴いて、そのニュアンスを意識しながら正解を導き出していくんです」

KAI_SHiNE「でもそれってものすごい瞬発力ですよね」

伊東「これまでのCDでラップさせていただくなかで学んだことも多いんです。特にラッパ我リヤさんに書いていただいた曲(“Shinjuku Style ~笑わすな~”)は、泣きそうになりながら練習しましたから(笑)。この曲は言葉の乗せ方が拍どおりではなくて、4拍のなかに音が7個あったり、しかもそこに譜面には起こせないような一瞬のモタリとか、スピードが上がるようなニュアンスがあるんです。そこもラッパ我リヤのお二人が仮歌で〈これが正解〉と言えるような完成形を入れてくださってるので、それを真似ることでリズムの崩し方を学ぶことができて。今回の“DEATH RESPECT”は双方が右ストレートで殴り合うような曲なので、泣くほどの苦労はなかったですけど(笑)、これまでの経験を活かしてラップした部分が何か所かあります」

KAI_SHiNE「僕はヤマに加入してからは歌ってないけど(KAI_SHiNEは以前にTHC!!でヴォーカルを担当していた)、山田さん(山田マン)とQくん(Mr.Q)のフロウをコピーしろ、と言われても難しいと思いますもん」

KOJIMA「俺も大変だと思う」

伊東「そうなんですよ(笑)!」

KOJIMA「自分はもう自分自身のフロウとリズム・アプローチに慣れちゃってるからQくんの真似は絶対にできないと思うけど、たぶん伊東さんはまだフラットに近い状態だからそれができるんじゃないかなと思います」

KAI_SHiNE「その瞬発力はすごいなと思ってて。同じ声ではあるもののヴォーカルやMCの技術とは似て非なる部分を感じるんですよ。歌として書いたもの以上の空気感があって」

KOJIMA「一個のセンテンスごとのチェンジがしっかりとできてるというか。今回の独歩に関しては、〈わかるかい?〉のところであえて外して、そこからまた元のフロウに戻ってくるようにしたんですけど、伊東さんのラップはただテクニック的にそうしてるだけでない感情がそこに乗っかってるんですよ。自分が仮歌を録った時は、メンバーのみんなもいるから〈こんにゃろー〉の部分は恥ずかしくて本気でできなかったけど(笑)」

KAI_SHiNE「それがレコーディングされて戻ってきたら、すごい〈こんにゃろー〉が出たなと思って(笑)」

伊東「そこは僕一人というよりも、レコーディングに関わったスタッフの皆さん全員の力だと思います。この部分もスタッフの皆さんと試行錯誤しながら何回か試し録りをしたんですよ。そのなかでバッチリなものを導き出すことができたので」

伊東健人

――伊東さんがラップ・スキルを磨くにあたって、仮歌以外に何か参考にすることはありますか?

伊東「僕も最近はラップ・ミュージックの勉強をするようになったんですけど、キャストのなかでは木村昴さんにオススメを教えてもらうことが多いです。あとはたまにカラオケに誘われると、白井(悠介)さんとか野津山(幸宏)くんがずーっとラップの曲を歌ってるんですよ。カラオケなので歌詞もその場でわかるし、そういうところから仕入れることが多いですね」

――そのなかで印象に残ってる曲は?

伊東「キャスト間で話してるときに、僕が担当している独歩にピッタリの曲ということでオススメされたのが、輪入道さんの“27歳のリアル”(狐火の同名曲のカヴァー)だったんです。今の現実に対する鬱々とした思いとか内面に何かを秘めてる感じに独歩と通じるものがあると思いましたし、そのポエトリー・リーディングみたいな雰囲気は、自分が独歩でラップする際の意識のひとつとしてあるかもしれないです」

KAI_SHiNE「僕の感覚では、独歩はどこか若手のロック・バンド感を感じるキャラクターなんですよ。だから今回の曲では後半にシャウトのパートを入れたりしていて」

KOJIMA「今回の決勝に残ったキャラクターのなかでは、一番身近に感じられる部分が多いですよね。ため込んでバーッと吐き出す感じも気持ちいいし」

伊東「独歩は12人のなかで一番、普通の日本人らしい環境で暮らしてるキャラクターだと思うんですよ。〈満員電車つれえなあ〉みたいな感じなので、ファンタジーの作品なのに現実感がありすぎて逆にファンタジーというか(笑)。全体曲でラップする時は、それこそポエトリー・リーディングみたいに淡々と語って、最後にボーンと爆発する感じなので、鬱々としたところと爆発するところのコントラストは意識してますね」

 

山嵐

カルチャー同士のぶつかり合い

――“DEATH RESPECT”はリリックの内容もこれまでの作品の設定やストーリーを踏襲したもので、〈ヒプノシスマイク〉の楽曲としても非常に完成度の高いものになっています。

伊東「失礼な話ですけど、ファンの方はみんな、この曲を聴けば〈このリリックを書いた人はちゃんとわかってくださってる〉ということに気付くと思うんですよ。僕は(入間)銃兎が最初に〈職質以来のひさしぶりかな〉と言った時点で、〈そんなところを拾ってくれるんだ!〉と思いましたから(笑)。銃兎が昔独歩に職質した話はドラマ・トラックに一瞬出てきただけなんです」

KOJIMA「それまでのストーリーを知らない人でも楽しめる部分と、マニアックに楽しめる部分の両方が必要だと思ったので、ドラマ・トラックも一通り聴いたうえで、バトルする二人の共通点とか引っ掛かるポイントを書き出してワードを練ったんです」

KAI_SHiNE「僕らは移動中もずっとドラマ・トラックを聴いてましたからね(笑)」

――サウンドメイクも一人ひとりのパートごとに変化をつけられてますね。

KAI_SHiNE「制作中に誰が決勝に残るのかが決まったので、そこから少しずつ脚色したぐらいなんですけど、やっぱり(神宮寺)寂雷さんと(碧棺)左馬刻が争うところはボス感を出したかったし、一二三はホスト感を出すために音の色味をキラキラしたものに変えたりして。うちは楽器が5人いるんですけど、基本的に自分たちの曲では全員がずっと演奏してるんですよ。でも、この曲ではキャラクターのイメージに合わせて楽器の音を引いたり、普段はやらないことができましたね」

KOJIMA「ラップも自分が持ってるヴォキャブラリーとフロウの範囲でいろいろ考えました。今までの曲を聴いてオフビートっぽく歌えるキャラがいたらそれを踏襲したり、一二三はみんなが思いっきりガーッていくなかで急に跳ねるフロウにして仕掛けてみて。寂雷さんはビートに対して前にトトトトといくようなイメージがあったし、逆に左馬刻は後ろに乗る感じだったり、キャラクターに対してだと作る側としてもかなり自由に色付けできるのがおもしろかったですね」

――ちなみに、皆さんが〈ヒプノシスマイク〉の楽曲のなかでお気に入りを1曲挙げるとすればどの曲になりますか?

伊東「僕はシンジュクの人間ですけど、一番よく聴いてるのはFling Posseの“Shibuya Marble Texture -PCCS-”なんです。シブヤの曲は渋谷系のテンションもあって、一番ポップさがあると思いますし、この曲は朝起きて〈今日も仕事だ、がんばるぞ!〉という時に合うんですよね。シンジュクの曲は通勤時にはあまり向いてなくて、夜中の帰り道の〈今日もがんばった〉という時によく聴きます」

KAI_SHiNE「僕はUZIくんがリリックを書いた曲(毒島メイソン理鶯のソロ曲“What's My Name?”)ですね。これはオケとキャラの組み合わせにものすごく納得いったというか、バラバラに思えるピースがこんなにも一体化するのかと思って。オケも完全にGファンクっぽくて、昔の山下公園とかこんな雰囲気でしたからね。僕は神奈川人なので、作り手云々は抜きにしてヨコハマに対する先入観を持っていたところもあると思います(笑)」

KOJIMA「自分はやっぱり“Shinjuku Style ~笑わすな~”ですね。〈これ完全に山田さんとQくんの曲じゃん!〉というものが、まったく新しい感覚で再現されていくところが〈面白気持ちいい〉というか。ただなぞるだけでなく、そこに新しい色が乗っかってるのがものすごく重要なことで、声優さんのいい声プラス感情の乗せ方で違うものになるんですよね。ただのコピーではないし、それがこのコンテンツ自体の大きな魅力だと思います」

――“Shinjuku Style ~笑わすな~”はそれに加えて、MSCや9SARI周辺の新宿っぽいハードコア感も感じられますよね。

KOJIMA「そうそう」

KAI_SHiNE「それってすごく不思議なことで、漢くんたちみたいに(拠点とする)街でいろんなものを背負って生きてきた人間が言葉を吐くところがラップというカルチャーの魅力のひとつだと思うんですけど、〈ヒプノシスマイク〉は変な話、キャラクターや声優さんたちに対して誰かが曲を提供してることを大っぴらにしてるわけじゃないですか。本来ラップという手法においては、誰かが作った曲を作品化することは認められづらい部分があると思うんです。それでも〈ヒプノシスマイク〉がおもしろいと感じられるのは、ちゃんとリアルな空気感を採り入れたうえで、声優さんによる表現がキャラクターに乗っかって成立してるからだと思っていて。ファンの人たちも曲を誰かが作るのはあたりまえのものとして考えてて、〈じゃあ次は誰が作るんだろう?〉ぐらいの興味を持ってるわけじゃないですか」

伊東「今はファンの皆さんも〈次は誰がライヴに来てくれるんだろう?〉とまで思ってくださってますから。この前の〈2ndライブ〉にはKENさんとEGOさんも一緒に出演してくださったんですけど、お客さんがめちゃくちゃノッてくれてて、すごく嬉しかったです」

KAI_SHiNE「素晴らしいことですよね。僕らは自分たちのことを〈ミクスチャー〉と言ってますけど、ミックスド・カルチャーというのはカルチャー同士が本当にぶつかり合わないとダメで、何かと何かをちょい足しする程度では成立しないと思うんですよ。〈ヒプノシスマイク〉はそれが成り立ってるから盛り上がってるんだろうし、自分も最初の時点では何に魅力を感じてるのかはっきりとはわからなかったけど、そういう何か感じさせるものがあったから山嵐として参加したんだと思うし」

――山嵐としては今後も〈ヒプノシスマイク〉と何かしらの形でご一緒したいと思いますか?

KAI_SHiNE「せっかくどの曲も手練れが集まって作ってるので、今まで作った人同士で共作するのもおもしろそうですよね。あとは、山嵐はライヴ・バンドなので、僕らもいつかどこかで一緒にライヴをやってみたいですね」

伊東「いや~、めちゃくちゃ来ていただきたいです! 僕ももともとバンドをやってたので、ぜひ生バンドでこういう曲を歌ってみたいですし。〈こんにゃろー〉も何度でもやりますよ!」

 

山嵐の2016年作『RED ROCK』(コロムビア)

 

『MAD TRIGGER CREW VS 麻天狼』にリミックスで参加したアーティストの関連作品。

 

文中に登場したアーティストの作品。

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