いだてん

IDATEN倶楽部

2019年630

「スポーツの力を信じているからこそ、命がけでオリンピック招致に挑んだんじゃないかな」

第二部がついにスタート! 中村勘九郎さんから主役のたすきを引き継いだ阿部サダヲさんに、主役を演じる意気込みと、新聞記者・水泳日本代表総監督と二足のわらじを履く田畑政治役についてうかがいました。

「アスリートの気持ちで演じています」

僕の演じる田畑政治は、早とちりでせっかちな性格。初対面で嘉納治五郎が、「彼は口が“いだてん”だな(笑)」と言っていましたが、考えるより先に言葉が出てしまっているような人です。実際の田畑さんも、早口で言葉を端折はしょるので、何を言っているのかわからなかったそうですが、それを忠実にやってしまうと見ている方がわからなくなってしまうので、やりすぎないようにしています(笑)。

また、外食した際に必ずと言っていいほど他の人の靴を履いて帰ったり、殴り書きした字が自分でも読めなかったり、せっかちの度を越したエピソードが残っています。きっと目の前の靴より、オリンピックのことを常に考えていたのではないか…。そんなことを想像しながら演じています。

ドラマの中で、火をつけたタバコをたびたび、逆さにくわえてしまう場面がありますが、その動きがなかなか難しくて、いつも記録の更新に挑戦するアスリートの気持ちでやっているんですよ(笑)。「いだてん」は長回しで撮影することが多いので、「タバコに火をつけて、一度吸って、それを逆にしてくわえ『アツッ』と言う」までの動作を一連の流れの中で収めないといけないんです。小道具さんもこだわっていて、当時のマッチを忠実に再現しているので、現代のマッチとは違って慣れない部分もありました。

「“ショーケンさんに最後にたたかれた俳優” はくがつきますね」

田畑は怖いもの知らずで、オリンピックの資金調達のため、当時の大蔵大臣だった高橋是清にじか談判に行きます。高橋是清を演じられたのは、3月に亡くなられた萩原健一(以降、ショーケン)さん。初めてお会いしたのですが、ショーケンさんのルールに縛られない自由な演技にあこがれていたので、共演できたことが素直にうれしかったです。現場ではすごく熱心に台本と向き合われていて、たくさん書き込みをされていましたし、動きに対する意味づけをすごく考えていらっしゃったのが印象的でした。あるシーンで、ショーケンさんがアドリブで僕を叩いたんです(笑)。もう会えなくなるとは、そのとき思っていなかったので、今思うと僕が“最後にショーケンさんに叩かれた俳優”ということで、はくがつきました。

「争いごとを好まない点は一貫しています」

田畑役を、新聞社の入社試験を受ける学生時代から晩年まで演じさせていただきます。半生を演じるわけですが、重ねる変化を意識しなくても、たくさんの人に出会い、影響され、自ずと成長していくのを感じますね。その中で一貫しているのは、争いごとは好まないという点。スポーツでは「勝たないとダメだ」という競争心をあおりながらも、争いごとへの考え方は最後まで変わりません。

今後は、ロサンゼルス大会で日本のメダルラッシュが起こり、お祭りのような盛り上がりを見せる反面、五・一五事件や二・二六事件、戦争についても描かれます。昭和という激動に巻き込まれ、日本にオリンピックを招致したいけれど、こんなときに開催して良いのかと葛藤する場面もあり、その心情をどう演じるかは難しいところです。

また、皆さんも知っているようなベルリンオリンピックの名シーン「前畑、ガンバレ!」も登場します。実況席にいた僕も本気で「ガンバレ、ガンバレ」と声をからしたほど熱狂しました。見ている方にも、スポーツを通して感じる感動のすばらしさを伝えていきたいです。

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