いだてん

IDATEN倶楽部

2019年615

「当時の価値観を乗り越えて、いまにつながっている重みを感じました」

女子スポーツで頭角を現し、アイドル的存在になる村田富江を演じる黒島結菜さんに、女子スポーツの魅力や役柄についてうかがいました。

「金栗先生の純粋な思いに胸が熱くなります」

「いだてん」を見ていると、毎回四三さんを純粋に応援したくなるんです。撮影現場でも中村勘九郎さん演じる金栗先生の一生懸命さや、女子スポーツを広めたいという純粋な思いに胸が熱くなります。けれど、村田富江としては、金栗先生に対して最初は嫌悪感を示します。生徒たちをスポーツに触れさせようと試行錯誤する姿に「みっともない」「嫁のもらい手がなくなる」と反発しました。そんな、体育もスポーツも女子には必要ないという考えを持っていた富江なのに、金栗先生の顔を立てるために、しかたなくやってみたやり投げでスポーツの楽しさに気づきます。富江たちがやりを投げ終えたあと、四三さんが私たちに語りかけるシーンがありました。「陽にやけて、お日さまの下で体ば動かして、汗ばかいたら、もっともっとシャンになるとばい」。体を動かすことは美しいことだという金栗先生のまっすぐなメッセージが胸に響き、心から感動しました。私自身、お芝居をしながら気持ちが変化していきましたし、富江をはじめとした竹早の生徒たちの中で、金栗先生が信頼できる人に変化していくきっかけになったシーンだったと思います。

とはいえ、竹早の女学生たちの考え方が変わっても、時代は「運動なんて女子がやるものではない」「お嫁にいくのが一番良い」と、女子を取り巻く環境は窮屈でした。やり投げのシーンもそうですが、テニスのときも富江は「くそったれえっ!!」と叫ぶんですよね。富江のお父さんがお医者さんだと考えると、本来は礼儀正しい人のはず。だから、こんなセリフは言いそうにそうにないのですが、いろいろとうっぷんがたまっていたんですかね(笑)。このシーンを初めてやってみたとき、「これで合ってますか?」と監督に確認したら、「もっと、もっと」と求められてしまいました。実際におなかの底から声を出してやってみると、体がのってきて。勢いがつくし、すがすがしい気持ちになりました。

「ユニフォームはとてもかわいくて、着ていてテンションがあがりました」

富江を演じたことで、やり投げ、テニス、走り高跳び、ハードルなど短い期間に、いろんなスポーツを経験しました。やり投げは初めて挑戦したのですが、練習で投げたときに、意外と飛んだんですよ。次はもっと遠くまで飛ぶかもしれいないと思うと、どんどん楽しくなってきて。本当は地面に刺さるくらい高く遠くに飛ばすことが目標でしたが、そこまでは到達しませんでした(笑)。ちょっと悔しかったですし、どんどん上を目指したくなる気持ちは、村田富江と重なる部分がありました。

富江はフランスのテニス選手スザンヌ・ランランに憧れて、同級生の梶原さんとおしゃれなユニフォームを手作りします。そして、各地のテニス大会に参加し、全国的な人気を博すスポーツアイドルになるのですが、そのユニフォームがとってもかわいいんです! 白いフレアのワンピースでタイツを履いていて、見た目重視(笑)。着ていてテンションがあがりました。すてきなものを着ていると気持ちも高ぶりますよね。学生時代バドミントンやっていたときにも感じましたが、ユニフォームによって強く見えたりするんですよね。スポーツでも見た目から入る良さを改めて感じました。

「お芝居を超えた、まっすぐな気持ちに涙が止まりませんでした」

じつは、中村勘九郎さんのあまりの熱意に泣いてしまったことがありました。靴下を脱いで素足を露出して走ったことが問題になって、お父さんが学校に乗り込み金栗先生をクビにしろと言います。そこで金栗先生が「あんたらがそぎゃんだけん、女子スポーツはいっちょん普及せん」と熱く語る場面です。テストでは普通にできたのですが、勘九郎さんが本番でリハーサルを上回る勢いで演技をされ、感動して涙が止まらなくなりました。お芝居を超えた、うそのないまっすぐな気持ちが伝わってきて、台本に書かれていないのに泣いてしまったんです。放送ではカットされてしまったのですが、本番中であることをここまで忘れる経験はなかなかないので、その場に立ち会えたことが本当に幸せでした。

私自身、小さいころからスポーツに慣れ親しんできて、女子がスポーツをすることに何の疑問もなくやってきました。なので、シマ先生が朝方こっそり走っていたように、こそこそと運動しなくてはいけなかった時代があったということに驚きました。今では女性でも活躍している方が世界にたくさんいるし、ヘソを出しているユニフォームもあったりします。あの時代の人たちが現代にタイムスリップしてきたら、とても衝撃を受けそうですね。当時の価値観がいろんな壁を乗り越えていまにつながっている、その重みをこの物語を通して知ることができました。

女子スポーツが始まり、女子たちがどのように変化して、四三さんがどう広めていくのか。女子の“いだてん”もどんどん増えて、今までとは雰囲気も変わり、さらに楽しくなると思います。今後もぜひ見ていてほしいです。

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