いだてん

IDATEN倶楽部

2019年62

恋の三角関係!?
小梅、美川、清さんそれぞれの愛

三角関係の末にまさかのカップル誕生! 今後も気になる3人を演じる橋本 愛さん、勝地 涼さん、峯田和伸さんに、個性あふれるキャラクターや恋模様などについてお話をうかがいました。

《Theme1》役柄について

小梅は浅草の遊女。演じるにあたり、所作指導の先生から“日本の文化に詳しい人が見ても納得してもらえるしぐさができるように”と情熱を持って教えていただき、本物の所作を伝授いただきました。そのおかげで、お芝居の中で違和感のないたたずまいが出せたのではないかと思える瞬間もありました。
小梅は私と同じく熊本出身。熊本県民の気質というよりは、上京してきた人が持つ期待感やコンプレックスを掘り下げました。東京への特別な思いが、ちゃきちゃきとしたしゃべり方にも出ているのではないかと。理想とする江戸っ子の女性像を小梅自身もどこか演じていたのかもしれません。
美川は、東京高師の中でも浅草の人たちの中でも浮いた存在に見えますが、実際の美川さんも、好奇心旺盛で新しい物好きだったとご親族の方からうかがっています。金栗さんの日記にも実際に美川さんが登場しているそうで、ちゃんと浅草の話も出てくるんだとか(笑)。どこまでやって良いものかと思うこともありましたが、ご親族の方からは「自由にやってください」とおっしゃっていただき、今では楽しんで演じさせていただいています。 ただ、切ない場面もありました。それは、金栗さんがオリンピック選手に選ばれたときに開かれた壮行会のシーンで、美川は横目で見ながらその場を通り過ぎたんです。一緒に熊本から出てきた彼を応援はしているけれど、どこか置いて行かれた気分。そんな切なさが際立つようにやらせていただきました。演出の方も「美川のそういうところを出したい」と、金栗さんの応援ムードのかたわら、美川のセンチメンタルな部分も大切にしてくれました。
清さんは浅草が地元で、僕は山形県出身。東北の気質を江戸っ子に近づけないといけないと思い、雰囲気づくりのために毎日落語を聞きまくりました。落語に出てくるのは大して偉くない庶民。清さんはそういう存在でいたいなと思い、参考にしています。 また清さんは、物語の大きな軸である金栗さんと孝蔵の背中を押す大事な役でもあります。孝蔵が「俺が出世すると思ってんのか?」と言えば「日本一の噺家になるんだ」と言葉をかけ、ベルリンオリンピックが中止になってずっと落ち込んでいる金栗さんには「お前がそうやって腐ってたら日本人みんな腐っちまうんだよ!」とケツを叩く。きっと本物の志ん生さんも浅草で放とうしていた時代に、地元の人たちから発破をかけられて勇気づけられていたのかもしれないなと想像しながら演じています。

《Theme2》恋模様について

小梅は徳重、美川などいろんな男性と恋に落ちてきましたが、最終的には清さんを選びましたね。美川と恋仲だったときは、彼の熱烈な思いに「この人となら」と期待していたところはあったと思うのですが、運命の人ではないとどこかで気づいていたのかもしれません。美川への不満が強ければ強いほど、近くにいた清さんがこんなにも自分のことをわかってくれて、守ってくれる頼もしい存在だと気づき、より幸せを感じられたのだと思います。美川が言ったら絶対うそに聞こえるようなことも、清さんの言葉には真実が宿っている、と思えた。だから、清さんを選んだのかなと思います。

勝地さんのお芝居は、紙芝居を見ているようなんです。チャキチャキと場面が切り替わってとても鮮やかで見ていて楽しいです。小梅が播磨屋から帰ったあとすぐ、金栗さんの向かいに住むシマちゃんを見つけて「どうしてあなたはロミオなの」と声をかけるシーンがありました。小梅の気持ちとしては美川の切り替えの早さに驚き、あれは浮気ではと思ってしまいました(笑)。
峯田さんとお芝居をしていると、セリフが聞き心地の良い歌みたいに聞こえるのが、すごく魅力的だと思いました。触れ合っていないのに、隣にいるような感覚があって。ずっと守ってくれているような温かさがあるんですよね。描かれていない2人の生活が肌で感じられるんです。
上京したときから心を奪われていた小梅と一度は恋仲になったのですが、結局美川じゃない人と結ばれましたね。あげくストーカーみたいになっていて…(苦笑)。台本を読んだとき、「ああそうなんだ」と妙に納得してしまいました。 橋本さんはおしゃべりなほうではないのですが、一緒にいると居心地のいい方です。メイク室で会ったとき、僕がセリフを言っていると続きを返してくれたりするんです。小梅にビンタをされるシーンでは、リハーサルから思いっきりひっぱたかれて衝撃を受けました(笑)。橋本さんが本気でやってくれるからこそ、こちらもテンションを上げて演じられるので、とてもやりやすかったです。
小梅と清さんが結婚すると知ったときは「やった」と思いました(笑)。小梅はいろんな男の人とくっついたり離れたりを繰り返して、俺はそれをちゃかしながら見ていたのに、腐れ縁っていうんですかね、気がつけば一緒になっていました。そんな2人には、大正から昭和に時代が移り変わっても、偉くもなく有名になるでもなく一庶民としてささやかに生きていってほしいなと思います。 小梅と清さんはセットで登場することが多いので、撮影中はわりと橋本さんと一緒にいることが多かったです。橋本さんと話すというよりは小梅と話しているという感覚があったので、とことん女優さんなのだと思いました。

《Theme3》「いだてん」の魅力!

初めて台本を読んだとき、自分がどんな役かを理解するよりも、まず台本のおもしろさに度肝どぎもを抜かれました。台本の中には、宝物がいっぱい詰まっていて、土堀りをするような気分で読んでいます。宝物を発見したときは感動とともに、宮藤官九郎さんへの尊敬の思いが込み上げます。どこを見ても脇役と呼べるような役がなく、みんなが粒立っている。それは宮藤さんが登場人物の一人一人に愛情を持って命を吹き込んでいるからこそだと思います。小梅は頻繁には出てきませんが、このドラマにおいてとても重要な存在だと思えるのは宮藤さんの小梅への愛を感じるからなのかもしれません。台本に詰め込まれた宮藤さんの哲学についていく幸せを感じながら、私も愛情を持って小梅を演じさせていただいています。
「いだてん」は、ワンシーンをカメラ数台で長回しで撮ることが多く、一連の流れの中で感情を表現できるのがおもしろいです。思っていることをやってみて、それを切り取ってもらえるとうれしいですし、使われていなくても僕の動きに演出の方がちゃんと気づいてくれるので、やりがいがある現場です。 そして、やっぱりセリフがおもしろいんです。脚本の宮藤官九郎さんはきっとニヤニヤしながら書いているんじゃないですか? 登場人物もカッコいいだけの人はいなくて、みんなどこかダサさもあるんです。それが個人的にすごく好きなので、人間味あふれる登場人物たちにも注目してほしいです。宮藤さんの脚本は、最初は気にも留めていなかったところが、もう一度振り返ったときに、大事な場面だったと気づかされることが多いです。かめばかむほどおもしろいので、再放送も含め何回も見ていただけたらうれしいです。
大友良英さんの音楽はとてもすばらしく、演じる際に清さんのイメージをつかむのにとても助けられました。最初は手探りで演じていましたが、音楽で彩られた本編を見たときに、僕が出てくるシーンはこういう音楽がかかるから、この気分で演じてみようと想像が膨らみました。 また、大友さんご本人もバンジョーを弾きながらチンドン屋として出てきたりして、それがいちいち良いんですよ。撮影のときに実際に音楽が鳴っていると、みんな盛り上がります。実際の放送を見てみたらエキストラの方も含め皆さん良い顔をしていました。そんな劇中の曲にも注目していただけたらと思います。

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