「天狗倶楽部のみんなとは、初日からバチっとハマった感じがありました(笑)」
三島弥彦さんは“痛快男子”とも呼ばれていたそうですが、「いだてん」でも、まさに疾走感というか、痛快さを担うキャラクターだと思っています。天狗倶楽部で毎日のように酒盛りをして、今でいう“パリピ”みたい(笑)。それでいて、ものすごいお金持ちで華やかなカリスマ性があって、弥彦がいるだけで周囲は「細かいことは気にしなくていいんだ」という気持ちになれる。いつもみんなのど真ん中にいて、細かいことを気にせず、どんと行こうよ!という力強さもある。それに加えて、カメラやピアノなど趣味も多岐にわたっていてかなりハイカラな人だったんだと思います。そんなキャラクター性がにじみ出てくれればいいなと考えながら、弥彦を演じています。
弥彦が所属している天狗倶楽部も、本当に実在していたことが信じられないぐらい時代を先取りしていました。「T!N!G!」というかけ声だったり、自分たちで作ったユニホームだったり…。今でこそ当たり前のようなことかもしれないけど、まだスポーツという概念が日本に定着していない時代のことですよ! ただ、本人たちは至って脳天気だったんじゃないかな? スポーツは趣味みたいな部分がすごく大きくて、何かを成し遂げようというよりは、遊びでやっている感じが強かった。そこに嘉納治五郎先生がやってきて「スポーツをやるなら、日本のために戦ってみないか」という話になっていくんです。
撮影の初日は天狗倶楽部のシーンで、三島の家の庭で著名人が集まるような会合を行っているところだったんです。そこに僕ら(天狗倶楽部)がスポーツをしながら乱入したんですけど、満島君、武井さん、近藤さんをはじめ空気感がバチっとハマって。すごくいいスタートになったと思っています。そうだ、2週に1回くらいは裸になっているので、そのあたりもぜひ注目してください(笑)。
天狗倶楽部って本当にいたの!?
正確な発足年は1909(明治42)年ごろではないかとされています。発起人は武井壮さん演じる押川春浪(おしかわ・しゅんろう)。そこに近藤公園さん演じる中沢臨川(なかざわ・りんせん)や、満島真之介さんが演じる吉岡信敬(よしおか・しんけい)などが集まってできたと言われています。当時から「テング、テング、テンテング、テテンノグー」という掛け声を用いていたそうで、とにかくハイテンションだったそう。戦前の日本で快男児ばかりが集まった集団でした。ちなみに、ドラマで描かれていたことは本当で、三島弥彦は雑誌『冒険世界』の「痛快男子十傑投票」という読者投票コーナーで1位を獲得するなど、知名度もかなりのものだったようです。
「たった10秒。その10秒間のために4年間も頑張るのは相当な覚悟だし、僕らには計り知れない孤独と重圧があるんだろうな」
三島弥彦を演じるにあたって、2017年の12月ごろからスプリント(短距離走)のトレーニングをしていました。オリンピックに出場されるような方々から指導をしてもらって、本当にいろいろなことを教えていただきました。がむしゃらに走れば速くなるというわけではなくて、腕の振り方であったり、スタートの角度であったり、細かいことまで勉強して、こういった練習をいかに本番でいちばんいい形で再現できるかが勝負なんだと知りました。
その中で、いちばん印象に残ったのが、「僕ら短距離選手って、4年に一度がたった10秒で終わっちゃうんですよね」という言葉でした。ものすごい重みを感じましたし、今でも強く記憶に残っています。4年間でたった10秒。その10秒間のために4年間頑張るのは相当な覚悟だし、僕らには計り知れない孤独と重圧があるんだと実感しました。
弥彦は実際にオリンピックで走ったあと、「日本人に短距離は無理だ。西洋人に勝てるわけがない。100年かかっても無理」と言っています。ちょうど100年後の今、まだ日本人はオリンピックの100メートル走で金メダルは取れていません。でも、その一方で桐生祥秀選手や山縣亮太選手、ケンブリッジ飛鳥選手など、海外のトップ選手と互角に戦える実力を備えた日本人選手も現れています。そこまで日本人も速くなったんだと思うと、弥彦を演じる身として感慨深いものがありますね。
「本当に面白くて、痛快なドラマ。間違いなく型破りでとんでもない大河になっています」
実際にストックホルムオリンピックで使われたスタジアムに入った瞬間は言葉が出ませんでした。弥彦もここで走って、金栗君もここからマラソンコースに出て行った。それが日本のオリンピックの第一歩になったことを考えれば、すべてはここから始まったんだなって深く考えさせられました。
きっと日本にいたころの弥彦は、オリンピックの重要性をそこまで深く感じていなかったんじゃないかな。だから、ストックホルムに向かう途中の電車でも「楽しみ」ぐらいにしか感じていなかった。でも、いざ現地に入ってみると、さまざまな国の選手を間近に見て、日の丸を背負って戦うことの重要性を感じたんだと思います。
今、世の中はとても便利になっていて、スマートフォンで、簡単に海外とつながれて、情報が手に入ります。だけど、当時の人たちからしてみれば「スウェーデンってどこ?」「オリンピック?スポーツって何?」というような状況で、まさに未知なる世界だった。そこに足を踏み入れた人たちがいたからこそ、僕たちの今がある。少しでも見ている人にそのことを感じてもらえればいいなって思っています。
間違いなく型破りでとんでもない大河になっています。宮藤官九郎さんの脚本らしく、本当に楽しくて、痛快なドラマですし、僕自身はこのドラマに出られなかったら俳優を辞めたほうがいいんじゃないかという気持ちでした(笑)。ふだん大河ドラマを見る機会がない方にも、往年のファンの方にも応援してもらいたいなって思います。
ハイテンションな痛快男子・三島弥彦を快演する生田斗真さん! 天狗倶楽部メンバーとして、短距離走の日本代表選手として、これからどんな一面を見せてくれるのでしょうか? 「いだてん」での三島弥彦の活躍に目が離せない!!