「落語とオリンピック。映像にすると盛りだくさんになるだろうなと思うと楽しみでしかたない」
今「いだてん」を大河ドラマとしてやるというのは、2020年の東京オリンピックに向けて最高のタイミングだと感じています。撮影をしていても、とてもおもしろい仕上がりになっていると思いますし、これまでの大河ファンだけでなく、いろいろな方々に受け入れてもらえるんじゃないでしょうか。
現場の雰囲気もとてもいいですね。宮藤官九郎さんが描かれた陽気さとユーモアがすごく反映されていて、シリアスな撮影をしている時でも笑顔が絶えないんですね。主人公の金栗四三さんがとても輝けるドラマになっていると思います。そういう意味では、僕もドラマの中での金栗さんを支える骨の一つになって盛り上げていく役割を担いたい。中村勘九郎さんもすばらしい役作りをしているので、その魅力をうまく引き立てるような演技を心がけています。
何より宮藤さんの脚本は読んでいて、本当におもしろい。なんと表現したらいいか分からないのですが、粗削りなんだけど繊細な所はとても繊細で。今回のドラマは、ビートたけしさんたちグループがやってる落語のドラマと、僕たちがやっているオリンピックのドラマと、一体どうやって映像がリンクしていくのか僕にはまだ想像もつかないんですけど、この二つの物語が融合していくというのが個人的にも今から楽しみにしています。
「嘉納さんは大変な借金を抱えてもオリンピックへの思いを曲げなかった。こういう人物がいないと時代は動かない」
ドラマでの嘉納さんはとても楽観的で、明るく、情熱的。大変な借金を抱えて周囲に迷惑をかけていた人かもしれないけれど、憎めない人物です。そんな嘉納さんを演じるうえで、資料で読んだ実在の嘉納さんと、宮藤さんが思い描いた嘉納さんとをどう照らし合わせていくかを意識して役作りに臨みました。
実在した嘉納さんは本当に立派な人だと思いますよ。周囲から猛反対を受けながらも、オリンピックと世界平和を結びつけて日本をストックホルムオリンピックに導いたわけですから。この方がいなかったら日本はどうなっていたんだろうと感じています。こういう人物がいないと歴史が動かないんだろうなって思います。
やはりクーベルタンとの出会いは大きかったんでしょう。クーベルタンの「スポーツをもって世界の平和を目指す」という思いは、嘉納さんが柔道で培ってきた「礼を重んじて相手を尊重する」という教えと通じるものがあったのではないでしょうか。そして、外国人の方との交流というものが世界平和に貢献するんだと嘉納さんは考えたんだと思います。
「嘉納さんは、苦境に立たされた日本人の心をスポーツで復興しようとしたんだと思います」
僕が一番初めに見たオリンピックは64年の東京オリンピックでした。ヘーシンクに負けた柔道だったり、東洋の魔女の活躍を目の当たりにしました。個人的に一番印象に残っているオリンピックは長野オリンピックなんです。実際にスキージャンプ団体が優勝した瞬間を現地で観戦していたんですよ。あの時は原田選手が調子が悪くて、ジャンプをしたあとに何万人ものため息が聞こえてくるんですよ。選手からしてみれば、ものすごいプレッシャーでしょうね。
そんなオリンピックの礎を築いた嘉納さんを演じるという点で感慨深いものもあります。僕もストックホルムを訪れて実感したんですが、きっと嘉納さんもIOCの総会などに出席するたびにオリンピックの価値を学んでいったんだと思います。嘉納さんは、戦後も震災後もとにかくスポーツを通じて人間の心も復興するんだという思いを強くしていったのではないでしょうか。
何せ当時は日本にスポーツという言葉がありませんでした。「いだてん」には、スポーツで世界中と交流して、さまざまな困難を乗り越えていく日本人の姿がつぶさに描かれています。その姿を見て、視聴者の皆さんにも何かを感じていただければありがたいですね。
まだ日本にスポーツという概念がなかった時代にオリンピック参加に人生をかけた嘉納治五郎。役所さんはその存在の大きさに感銘を覚えたそうです。そんな時代を動かした偉大な人物を役所さんはどう演じるのでしょうか? 「いだてん」に登場する嘉納治五郎の一挙手一投足にぜひご注目ください!