いだてん

IDATEN倶楽部

2019年915

金栗パートと落語パートが交差!「ハリマヤ製作所」

職人気質かたぎで負けず嫌いの足袋職人・黒坂辛作が営む「播磨屋」。店の2階に17年間も下宿していた四三の要望で金栗足袋を生み出し、その名を広く知られるようになりました。時は流れ、1940年の東京オリンピック招致を見据えて上京した四三が、久しぶりに訪れた「ハリマヤ製作所」では、シマの娘・りくがお針子として修行中。辛作を演じる三宅弘城さんのインタビューを軸に、久しぶりに懐かしい顔がそろった「ハリマヤ製作所」を特集します。

播磨屋からハリマヤ製作所へ

三宅弘城

普通の足袋職人だった辛作さんは、金栗さんと出会ったことで新しい足袋作りに目覚めました。最初は探り探りでしたが、辛作さんにも伝統を守りつつ新しいことをやっていきたいという気持ちがあったんでしょうね。次々に改良を求められて、職人魂にさらに火がついたんじゃないでしょうか。やりがいはもちろんですが、そういう負けず嫌いなところがまさに下町の職人ですね。

三宅弘城

そんな辛作さんのターニングポイントとなったのは、第18回「愛の夢」(5月12日放送)。ゴム底の足袋を四三から依頼され「底がゴムでひもで結んだら、それはもう足袋じゃねぇ、靴だ!」と叫ぶシーン。職人としての辛作さんのプライドがにじみ出ていましたよね。そうは言いながら、金栗さんへの親心も手伝って、結局は要望通りに改良を重ね、ゴム底の足袋が完成。日光東京間駅伝で金栗さんがゴールした瞬間、「最後までもったじゃねえかよ、一足で。播磨屋の足袋が130キロの道のりに勝ったんだよ」と男泣きを見せます。僕自身も新しい播磨屋さんの足袋ができた瞬間だと感じ、すごく感動しながら演じた覚えがあります。
「いだてん」で描かれる「播磨屋」
東京高師を卒業した四三の下宿先になったのは東京・大塚にあった足袋の「播磨屋」。四三と二人三脚で開発したマラソン足袋が好評を得たことから規模を拡大し、「ハリマヤ製作所」に店名を変更しました。アントワープオリンピックから戻った四三もこの変化にはビックリ! さらに、後に五りんが訪ねた1961年頃には「ハリマヤスポーツ」へと進化。店舗は大通りに移転し、四三が暮らしていた2階は倉庫として使われるようになりました。

職人魂

三宅弘城

辛作さんは、典型的な職人気質。根は優しいのに、照れ屋が邪魔をして素直に優しさが出せないんですよね。乱暴な口をきいたり、短気でせっかちなところもありますが、自分の仕事にはプライドを持っているので、かっこいいと思います。そんな辛作さんが金栗さんと一緒に作ったマラソン足袋は、日本を越えて愛されるシューズになりました。ベルリンオリンピックで孫 基禎さんと南 昇竜さんがメダルを獲得したとき「俺はうれしいよ。日本人だろうが、朝鮮人だろうが、アメリカ人だろうが、ドイツ人だろうが、俺の作った足袋履いて走った選手はちゃんと応援するし、勝ったらうれしい」というセリフがありましたが、職人としての喜びはひとしおだったんでしょうね。

三宅弘城

このシーンは、僕自身も演じながら単純に感動していました。脚本も映像も、見ているだけで泣けてくるんです。きっと辛作さんは、自分の作った足袋を履いた孫さんや南さんと、一緒に走ってるような気持ちだったんじゃないかな。実際に、みんなでラジオの前に座って「頑張れ頑張れ」と応援しているシーンは、本当に声をからすほど一丸となって声援を送っていました。なんといっても金栗足袋を履いてのゴールでしたからね。
「いだてん」で描かれる金栗足袋
四三がストックホルム予選会で履いたのは「播磨屋」で手に入れた足袋。以降、底を何重にもして厚くしたり、こはぜの数を変えたりと改良が重ねられました。駅伝を発明した四三が日本中を走るのとともに、ひも付き足袋、ゴム底足袋が登場。第一回箱根駅伝の際は大塚播磨屋のマラソン足袋として、出場選手たちがこぞって履いていました。箱根駅伝の復路で雪が降ったことからゴム底に溝を入れるなど、進化し続け、ベルリンオリンピックで金メダルに輝いた孫選手、銅メダルを獲得した南選手の足元をサポートしました。

人びとが集う場所

三宅弘城

第35回「民族の祭典」(9月15日放送)の冒頭で、五りんがハリマヤスポーツ(ハリマヤ製作所)を訪ねてくるシーンがありました。金栗さんと一緒に足袋を作っていた時代から演じてきたので、回り回って歴史の証人みたいになっている気がして「辛作さんは長生きしていろんなことを見てきた人なんだな」と感慨深く思いました。セットの様子も時代に合わせて細部が変化していて、普通の足袋しかなかったのが、ひも付き、ゴム底の足袋がディスプレーされるようになったりと、時間の流れを肌で感じます。

三宅弘城

それに「ハリマヤ」って、いろんな意味で出会いの場になってますよね。金栗さんのいたころは、清さん、小梅、美川、スヤ、それにシマや増野が入れ代わり立ち代わりやってくるコミュニティーみたいな場所でしたから。時代が変わってもその役割は相変わらずで、シマの娘・りくが働いていたり、金栗さんが勝くんを連れてきたりして新たな仲間が加わりました。そして、さらなる未来には五りんもやってくるという…。辛作さんの人柄か、縁をつなぐ場所なんだなとつくづく感じます。

新世代登場!

増野りく 役・杉咲 花さん
シマの娘・りくを演じることが決まったときは夢のようでした。「大好きないだてんの現場にまだまだいられる!」という喜びが一番大きかったです。ただ当初は「シマみたいになってしまっている気がする…」と苦戦することが多かったんです。でも、演じていくうちに「りくはシマより少し控えめな女の子」ということが分かった気がして、そこを一番心がけるようにしています。
小松 勝仲野太賀さん
第1回からスタッフ、キャストの皆さんが必死の思いでつなげてきた物語を、出演を熱望しながら視聴者として見守らせていただいてきました。そんな「いだてん」で、小松 勝は時代と時代、人と人をつなぐ重要な役どころを担います。

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