「日本オタク大賞2019」の大賞を『十三機兵防衛圏』が受賞。11月末の発売からわずか1ヶ月で栄冠に輝く

 オタク大賞実行委員会は1月25日、東京・新宿ロフトプラスワンにて「日本オタク大賞2019」を開催し、ヴァニラウェアが開発したアドベンチャーゲーム『十三機兵防衛圏』が大賞に選ばれた。

 「日本オタク大賞」は、映画、アニメ、特撮、マンガ、ゲーム、時事問題などのサブカルチャーを題材に、各界の評論家が語り合う年間総括イベント。2001年から毎年、新宿ロフトプラスワンで開催しており、今回は、志田英邦氏、前田久氏、藤田直哉氏、奈良崎コロスケ氏、ガイガン山崎氏、東海村原八氏が登壇し、司会を宮昌太朗氏が務めた。

(画像は日本オタク大賞 「日本オタク大賞2019・ありがとうございました」より)

 2019年の大賞として選ばれた『十三機兵防衛圏』は、複数の時代を舞台にした13人の主人公によるSF群像劇だ。都市に侵攻する謎の怪獣や、機兵と呼ばれるロボットに搭乗して立ち向かう少年少女の青春、そして陰謀劇が描かれる。作りこまれた美麗の2Dグラフィックと、空間と時系列が交錯する複雑なストーリーテリングを特徴としている。また、SF小説の父H・G・ウエルズをはじめ、特撮、映画、アニメ、アイドルなどのオタク文化が豊富に盛り込まれているのも特徴だ。

(画像は日本オタク大賞 「日本オタク大賞2019・ありがとうございました」より)

 本作は11月28日に発売してから日が浅いにも関わらず、2019年を総括するオタク大賞で、大賞として選ばれたのは快挙といえるだろう。ちなみに過去、大賞に選ばれたゲームは、2018年の『JUDGE EYES:死神の遺言』と2009年の『ラブプラス』の2回で、そのほかの年は映像作品が中心となっている。なお、今年はライターの志田英邦氏により、セガゲームスの「メガドライブミニ」も審査員賞として選ばれた。

 日本オタク大賞2019は受賞結果と公式レポートは以下の通り。

■大賞
ゲーム『十三機兵防衛圏』

■審査員賞
・東海村原八賞
プラモデル スズキGSX-R750(ハセガワ)

・前田久賞
アニメ『ぼくらの7日間戦争』

・奈良崎コロスケ賞
劇画狼(編集者)

・ガイガン山崎賞
ROBOT魂<SIDE MS> ジオン軍武器セット ver. A.N.I.M.E(バンダイ)

・藤田直哉賞
劉慈欣(小説『三体』作者)

・志田英邦賞
メガドライブミニ(セガ)

 

■『オタク大賞2019』公式レポート
 昨年1年間に起こった“オタク”的事件や、優れた作品を勝手に表彰してしまうというイベント「日本オタク大賞2019」が、1月25日(土)東京・新宿ロフトプラスワンにて開催され、その大賞が決定しました。

 「日本オタク大賞」は毎年、オタク関連の各ジャンルを担当する識者たちがプレゼンター兼審査員として集い、2001年から続けられており、今年で19回目をむかえるトークイベントです。

 本年度の審査員は東海村原八(原型師)、前田久(ライター)、志田英邦(編集者、ライター)、奈良崎コロスケ(ライター)、藤田直哉(文芸評論家)、ガイガン山崎(ライター)、司会は宮昌太朗(ライター)。

■大賞『十三機兵防衛圏』
 2019年のおもなニュースの振り返りと、各ジャンルを担当する審査員のプレゼンを経て、 大賞候補となるノミネートに選ばれたのは『キン肉マン「超人」(学研の図鑑)』、アニメ『天気の子』、映画『翔んで埼玉』、清野とおると結婚した「壇蜜」、配信ドラマ『マンダロリアン』、ゲーム『十三機兵防衛圏』、SF小説『三体』、プラモデル「サバロフAG9ニコラエフ」(80年代プラモの総マスターグレード化)、アニメ『プロメア』、という9項目。
 この9項目に審査員が4票ずつ投票し、会場からの3票(今年は2位が同票で3つあったため計4票)も加えて集計。

 その結果、2019年の大賞には、ゲーム『十三機兵防衛圏』が選ばれました。

 11/28に発売された、アドベンチャーパートとバトルパート、世界観解説パートからなるPS4用のゲームです。突然現れた謎の未確認物体との闘いに立ち向かう、現代・過去・未来に生きる13人の少年少女が主人公。時空を超えたストーリー展開がエモいと高い評価を集めているとのことです。

 「SFの要素がごった煮になっていて、最後にどんでん返しが起きるストーリー、我々のよく知っているガジェットが詰め込まれている。焼きそばパンのエピソードが感動的で、焼きそばパン大賞を差し上げたい!」(志田)
 「根性でこれだけSFネタとかオタクネタを詰め込んで作ってあって、こういうのを評価しないとならないなと」(藤田)
 「まだやってないんだけど、興味があって情報を仕入れてた。2019年(を代表する作品)として(タイトルを)挙げるならこれかなと」(前田)

 例年「面白ネタ」を大賞にすることも少なくないイベントですが、今年はクオリティの高さと内容がストレートに評価されての大賞となったようです。

■審査員賞
 また、各審査員による個人賞も発表されました。
 東海村原八賞は、80年代の熱い記憶が甦る、プラモデル スズキGSX-R750(ハセガワ)、
 前田久賞は、大量の劇場アニメが公開される中、埋もれさせるには惜しい良作として『ぼくらの7日間戦争』、
 奈良崎コロスケ賞は、「ガロ」の元副編集長・白取千夏雄の半生紀『全身編集者』を発行した、編集者の劇画狼さん、
 ガイガン山崎賞は、『宇宙翔ける戦士達 GUNDAM CENTURY』の挿絵も再現できる「ROBOT魂<SIDE MS> ジオン軍武器セット ver. A.N.I.M.E」、
 藤田直哉賞は、中国で2000万部が売れた小説『三体』作者である、中国のSF作家・劉慈欣さん、
 志田英邦賞は、収録ゲームのチョイスがツボを押さえていて「さすがセガ」とうならされた、メガドライブミニ、
となっています。

■2019年のキーワードは「中国発」と「80年代」
 このほかトークでは、

 「『ポケモン』のサトシ初優勝」、「高畑勲展」、『なつぞら』、『海獣の子供』、『羅小黒戦記』、「『鬼滅の刃』がコミックス売り上げランキング独占」、「漫画家・清野とおるが壇蜜と結婚」、「ガクトすごい」、『異世界おじさん』、「ガンダム40周年」、「上海ワンフェス」、「サラッと完結していった実写版『X-MEN』」、『スパイダーマン』、『仮面ライダージオウ』、「アジア文学ブーム」、「キズナアイの分裂」、「老老介護」、『リングフィットアドベンチャー』、『デスストランディング』、『シンカリオン』、「エンディングは『Get Wild』」

 など、2019年を振り返る話題が飛び出し、会場をわかせました。

 この年のキーワードは、各ジャンルで取り上げられた「中国発」「80年代」。新しい勢力と、オタクの高齢化を感じさせたのが印象に残りました。
 普段は興味のないジャンルのオタクネタを、知らないなりに楽しめるというのも、 日本オタク大賞ならではの醍醐味。
 日本オタク大賞では、2020年も様々な作品やニュースに注目してまいります。

ライター/福山幸司

ライター
福山幸司
85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter:@fukuyaman
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