(function(h,o,t,j,a,r){ h.hj=h.hj||function(){(h.hj.q=h.hj.q||[]).push(arguments)}; h._hjSettings={hjid:104204,hjsv:5}; a=o.getElementsByTagName('head')[0]; r=o.createElement('script');r.async=1; r.src=t+h._hjSettings.hjid+j+h._hjSettings.hjsv; a.appendChild(r); })(window,document,'//static.hotjar.com/c/hotjar-','.js?sv=');
Join us

Columns

アダム・ランバートの歌声がクイーンの音楽を新しい世代に伝えていく【今泉圭姫子連載】

Published on

ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第32回。今回は2020年1月に来日公演を行ったクイーン+アダム・ランバートの来日公演について、デビューからクイーンを追い続けてきた今泉さんにアダム・ランバートの過去のインタビューとともに執筆していただきました(これまでのコラム一覧はこちらから)


 

2012年6月、ヨーロッパ4都市で行われたクイーンのコンサートにアダム・ランバートが特別参加した時、私はアダムとこんな会話をしていました。

「クイーンとのコンサートに参加してみてどうだった? クイーンの楽曲の中で、どの曲がアダムとしては一番いい感じで歌えたの?」

興味津々、クイーン・ファン丸出しな質問をするとアダムはこう答えてくれました。

「すごく楽しかったよ。いい経験をさせてもらったよ。“Another One Bites The Dust”が僕には一番しっくりしたかな〜。あと“Dragon Attack”は今まで知らなかったんだけど、リハーサルをした時に、いい曲だなって思った」

そして「アダムの“Somebody To Love”も聴きたいなぁ」と言うと、「“Somebody To Love”もやっていて楽しい曲だよ。この曲って後半がゴスペル調になるんだけど、フレディがアレサ・フランクリンの大ファンで、それを公言した後に作った曲なんだよね」、とアダムから教えてもらいました。

Queen – Somebody To Love (Official Video)

 

そう、私はアダムが歌う「Somebody To Love」が聴きたい、と本人を前に言っていたのです。その時はまだ、オフィシャルには具体化していないクイーン+アダム・ランバートのプロジェクトでしたが、私の心の中では、クイーンが新しく何かを始める時、そこにいるのはアダムしかいないのでは、と自然に受け止めていたのだと思います。この頃のアダムは、セカンド・アルバム『Trespassing』が初の全米ナンバー・ワンに輝いていた時。2009年「アメリカン・アイドル」でその実力を見せ付け、ブライアンとロジャーを従えて、「We Are The Champions」を堂々と歌った時から3年の月日が流れ、ついに音楽チャートのトップに立った、イケイケの時でした。つまり、誰かのプロジェクトの一員となる必要のない人気者だったのです。そんなアダムを「アメリカン・アイドル」時代から見てきたブライアンは、クイーンの楽曲を歌えるのは彼しかいない、と思い続けていました。そして、良きタイミングで、アダムの心は動かされたのです。

『Trespassing』は素晴らしいアルバムです。ファレル・ウイリアムスとアダムの共作曲「Trespassing」について私は、「この曲はアダムにとっての“We Will Rock You”だよね」と言うと、「そうだね、でもそれをいうなら“Another One Bites The Dust”といったほうが合っているかもね」と、二人でノリノリなクイーン・トークでした。

Adam Lambert – Trespassing (AOL Sessions)

 

「アルバムには、自分の生きたいように生きよう、他の誰かと比較することなく、誰に指図されることもなく、自分自身を信じて!というメッセージが込められているんだ」と言っていました。『Trespassing』で掲げたテーマは、何を選ぼうと自分自身であるというアダムの強い意志を感じました。そして彼はその意志をクイーンという大きな舞台の上で貫き通すのです。

なぜ、アダムの話から始めたかというと、クイーンとポール・ロジャーズとのレジェンド同士のジョイントに、少々違和感を抱いていた私は、クイーン+ポールロジャースのコンサートを観に行くことはありませんでした。クイーンの歌をフレディ以外が歌うことは考えられなかったのです。そんな私に、「おい、今泉!クイーンの活動の新しいチャプターは、あんたが望んだアダムだったでしょ!」と自分に言い聞かせたかったというわけなのです。

実は、2014年のサマーソニックでのステージは、夜空に舞うクイーン・サウンドに乗った歌声がフレディではないことを実感し、2016年の日本武道館では、ステージの動作を見ながら、やはりフレディではないことを目の当たりにし、虚しい思いだけが残ってしまいました。アダムにとっては迷惑な話です。ですから、今回のコンサートも正直観るのが怖いというのが本音でした。アダムがどうのこうのではなく、フレディ・マーキュリーがこの世に存在しないことを、あらためて受け止めなくてはならないということと、繰り返し淋しい思いをするのなら、もう観なくてもいいのかな、という思いに押しつぶされていました。昨年、クイーンの楽曲を聴きながら見る花火大会に行ってきました。初冬の空の下、1時間のイベントでも寒さを感じず、ずっとクイーンを聴き、花火を楽しむ、そんな時間こそ自分が求めていたものだって思い込んでいたばかりでした。

Queen – Super Fireworks Japan

 

一時も忘れることのないフレディの歌声、1曲1曲の節回しまで、耳にこびりついていて、その歌声を聴きたければCDをプレイすることで、確実にフレディはそこにいてくれます。ブライアンとロジャーがどんな思いでツアーを続けているのかを考えることもなく、自分の思いだけでコンサートへ行くことを躊躇していました。でも、映画『ボヘミアン・ラプソディ』の世界的成功は、自分の中でクイーンの存在がどれほど大きいものかを再確認することとなり、今自分が音楽と向き合う仕事をすることになった動機を再認識するきっかけにもなりました。そういう時って得てして戸惑いや迷いの中にいるもの。何かを見失いそうになると、神様は気づきのきっかけを与えてくれるものなのですね!初心忘れるべからず!!初めてクイーンを聴いた時の衝撃と、クイーンの音楽と共に歩んできたたくさんの思い出を閉じ込めずに、放出する時なのだと教えてくれたようでした。

2020年1月25日、私はさいたまスーパーアリーナにいました。ステージには、クイーンを象徴するエンブレムのデザインが施された冠がステージ前方に。そして「Innuendo」が会場に鳴り響きくと、冠が天井に上がり、中央からブライアンが登場し、「The Rhapsody Tour」は始まりました。私の右隣はドキドキが隠せない母親とキラキラの衣装でロック・コンサートに臨んだお嬢さんの親子連れ。左隣は、小学生低学年ぐらいの男の子を連れた家族。そして広い会場を見渡すと、明らかに前回のコンサートとは違う光景が目の前に広がっていました。映画からの新しいファンも参加してのクイーンのコンサート。映画のラストを飾った「ライヴ・エイド」から35年が経った今でも、クイーンの音楽が時代を超えて聴き続けられている奇跡の光景に感動するのです。

Photo by 岸田哲平

オープニングはブライアンのギターから始まる「Now I’m Here」。邦題の「誘惑のロックンロール」のイメージが強いのですが、“さぁ、僕たちはここにいるよ“というタイトルの意味からして、オープニングにぴったりな曲だと、今更ながらに思いました。公演前にソウル公演のセット・リストを見ていたのですが、70年代の曲を数多く演奏していたので、楽しみはありましたが、正直30曲近い楽曲を演奏していたことに驚きました。実際には、フル尺ではありませんでしたが、しっかりと曲の良さを伝えるアレンジで、次々とクイーン・サウンドのシャワーを浴びているような構成でした。

「In The Lap Of The Gods」のような、サード・アルバムの中のドラマチックな曲も演奏してくれました。サマーソニックのときにも選曲されていましたが、この曲は初期には欠かせないライヴでの1曲。でも、しばらく演奏していない時期もありました。思わずブライアン・メイに「ぜひ演奏してほしい」と直談判したこともありましたっけ。アダムの歌声で聴く「In The Lap Of The Gods」は、ファルセットを使いこなすフレディとは趣が異なりますが、力強さを感じさせるものでした。ジョン・ディーコンが音楽業界から引退した理由のひとつとして、フレディがいない場所での活動は考えられないとありましたが、クイーン・ファンにとってもフレディがいないクイーンは耐えられない事実です。でも、クイーン+アダム・ランバートの活動は、素晴らしいクイーンの楽曲をブライアンとロジャーが新しい時代に繋げていくという使命を背負い、アダムがフレディのモノマネではなく、シンガー、アダム・ランバートとしてステージに立ち、クイーンの音楽を新しい世代に伝えていくという大きな役割をしっかりと果たしているプロジェクトであることをあらためて確認できたのです。アダムの歌声はクイーン・サウンドを歌うようになってから、歌の上手さに広がりを見せ、力強さが増したようです。

Photo by 岸田哲平

ロジャーの「I’m In Love With My Car」の歌声は、昔とまったく変わらないハスキー・ヴォイスで歌い上げ、ブライアンが花道で歌うアコースティック・パートでは、予想通り「Teo Torriatte (Let Us Cling Together)/手をとりあって」を披露し、ブレディがスクリーンに登場して「Love of My Life」「’39」と続いていきます。先日ブライアンが出版した『QUEEN IN 3D』の改訂版を読んでいると、いかにクイーンが日本を愛しているかを、あらためて知ることができました。昔はちょっとした彼らの日本に関する発言が嬉しかったものですが、そんなドキドキが甦ったかのようでした(そうそう、本には、ブライアンとロジャーが苦手な裏方の仕事のことは、今でもジョンが引き継いでやっていると書いてありました。嬉しい情報でした)。「Teo Torriatte」では、会場が日本語歌詞での大合唱になりました。「Love of My Life」では、以前フレディは会場の美しい光景と歌声に「Beautiful」と言っていましたが、今はフレディの代わりに、ブライアンが同じタイミングで「Beautiful」と言ってくれます。そんな細やかなシーンに、胸がキューンとするのです。

Photo by 岸田哲平

ソウルでは演奏された「Fat Bottomed Girls」の代わり、日本では何度もテレビCMに使われヒットした「I Was Born To Love You」を演奏。フレディが生きている時にはライヴで歌われることのなかったこの曲は、今では欠かせない1曲となりました。もともとクイーンとしてプリ・レコーディングしていたものでしたが、収録の機会がなく、フレディのソロ作品として世の中に出ました。その後『Made In Heaven』でクイーン・ヴァージョンとして再登場している楽曲です。

もちろん「You’re My Best Friend」「Spread Your Wings」といったジョンの作品も聴きたかったのですが、それはアダムのヴォーカル・スタイルには合わないのかもしれません。「The Show Must Go On」のような熱唱する楽曲こそ、アダムらしさが聴けるのだと思います。映画の中で披露した「Doing All Right」を少しだけ歌ってくれたのはスペシャルでした。「みんな映画は見た?」とブライアンが呼びかけていましたが、スマイル時代の楽曲「Doing All Right」は、映画の中で、ロジャーとジョンがフレディと出会うきっかけとなった曲として披露されていました。これは映画からファンになった人たちへのプレゼントでした。もちろん、「The Prophet’s Song」(2回目の来日のみ演奏)「March of the Black Queen」「Father To Son」も聴きたかった、と欲をかいてしまいますが、15枚のオリジナル・アルバムから30曲ほどを選ぶのは至難の技。それでも数多くの楽曲をうまくアレンジして演奏してくれたことに感謝するのです。

クイーンのステージは、昔から美しいライティングに定評があり、ステージセットの豪華さも見どころでした。そして今回も、ゴージャスな映像と華やかなライティングをバックに、素晴らしい演出のもと、近年ではなかなか見ることができないド派手なショウとパフォーマンスを、2時間15分に渡って披露してくれました。これぞロック・コンサートだといわんばかりに。シンプル・イズ・ベストな時代ではありますが、天文学者であるブライアンの宇宙を創造させる映像を見ながら、どこか違う世界へと誘われたような気持ちを味わい、フレディが会場のどこかで見てくれているような、そんな気持ちにもなりました。

Written by 今泉圭姫子


 



“日本のファン投票によって選曲されたベスト盤”
クイーン『グレイテスト・ヒッツ・イン・ジャパン』

2020年1月15日発売
SHM-CD+DVD / SHM-CD
配信まとめリンク
https://umj.lnk.to/queen_best



今泉圭姫子のThrow Back to the Future』 バックナンバー


今泉圭姫子(いまいずみ・けいこ)

ラジオDJ、音楽評論家、音楽プロデューサー
1978年4月、湯川れい子氏のラジオ番組「全米Top40」のアシスタントDJのオーディションに合格し、この世界に入る。翌年大貫憲章氏とのコンビでラジオ番組「全英Top20」をスタート。以来現在までにラジオDJ以外他にも、テレビやイベント、ライナー執筆など幅広く活動。また、氷室京介のソロ・デビューに際し、チャーリー・セクストンのコーディネーションを行い、「Angel」のLAレコーディングに参加。1988年7月、ジャーナリスト・ビザを取得し、1年間渡英。BBCのDJマーク・グッドイヤーと組み、ロンドン制作による番組DJを担当。
1997年、ラジオ番組制作、企画プロデュースなど活動の場を広げるため、株式会社リフレックスを設立。デュラン・デュランのジョン・テイラーのソロとしてのアジア地域のマネージメントを担当し2枚のアルバムをリリース。日本、台湾ツアーも行う。
現在は、Fm yokohama「Radio HITS Radio」に出演中。

HP:http://keikoimaizumi.com
Twitter:https://twitter.com/radiodjsnoopy
Radio:Fm yokohama「Radio HITS Radio」

Don't Miss

We use cookies to personalise and enhance your experience on this site. By clicking Accept or continuing to use the site, you agree to our use of marketing and social media cookies as described in our Privacy Policy. You can make additional choices and learn more about our use of cookies by clicking Cookie Choices below.