プールシーンは、通常、ロケ地を探して撮影しますが、条件に合うロケ地が東京近郊になかったことから、台本のイメージにぴったりのプールを縦15×横6メートルのスケールでセットとして制作しました。それを撮り方の工夫で縦25×横8メートルのプールとして表現しています。
深さは1.3メートルあり、1平方メートルあたり1.3トンもの水の重量がかかるため、溶接した鉄板の上にタイルを敷き詰めた本格的な造りに。これだけ大がかりなセットを組めるスタジオを探すのにとても苦労しました。おそらく日本で初めての試みだったのではないでしょうか。映像に携わるさまざまな方がこのセットの見学に来られていました。
田畑政治や松澤一鶴ら水連メンバーが、東京帝国大学(現・東京大学)工学部の実験棟に置いたという設定の大日本水上競技連盟(水連)本部。ドラマではその地下に練習用のプールが登場します。「一年中練習ができる」と野田一雄が胸を張った当時としては画期的な温水プールは、水連メンバーたちが麻雀をしていたときに偶然見つけた、船舶実験用の巨大水槽を整備したもの。水連メンバーが帝大のプールで練習していたのは事実なので、東京大学に現存する日本最古ともいわれる室内25メートルプールを参考にし、浄水場やダムなどの施設をミックスして、空間のオリジナリティーを出しました。
田畑がたまたま点棒を落としたことから、床に開けられた切り穴を発見! 床のふたを開けてはしごを降りたところに水槽があり、舟が浮かんでいました。(第25回)
さまざまな制御盤が残されていたり、温水の排出口がむきだしのパイプなのも、工学部の施設だったという設定を表現するためです。
当初はロッカーで隠れていましたが、上階の水連本部にはプールを見下ろせる窓が! 下階からの温水の蒸気が充満し、スタジオ内は蒸し風呂のような状態に…リアルな空気感が映像を通しても伝わってきます。
水連本部には実験器具や船の模型など、実験棟だったころの名残がそこかしこに。一方、水泳の旗をはじめ、泳ぎ方の図解、フォームを研究するための人形など、水連本部らしい小道具も置いています。
水泳日本代表チームが強化合宿を行った、宿舎が併設されたプール。地下にあった水連の練習用プールとは違い、天窓から光が差し込む明るい印象のセットに変化させました。コースロープやコーステープをはり、ツートンカラーだった壁を真っ白に塗り替えたりして、欧米の雰囲気を感じさせる空間になるようデザインしています。
プール横に、控え室や宿舎を完備しているという設定。控え室にはロッカーやトレーニング器具を配置しました。
また、松澤の部屋では田畑や野田との内密のやりとりが行われることも。日本代表監督を務める松澤らしく、宿舎の部屋にも選手指導のための資料があふれています。
ちなみにこのYMCAプール、第28回のラストではレッドカーペットを敷きつめて、ロサンゼルスオリンピックの壮行式会場として登場。プールのセットは、このほかにも前畑秀子が初登場したプール(第26回)、田畑が宮崎康二と初対面した浜松中学のプール(第27回)などに姿を変え、さまざまなシーンを撮影しました。
また、プールセットの基礎に使ったセットの骨組は、壁や建具などを組み替えることで、新聞社や今後登場する東京オリンピック組織委員会のセットにも使用しています。ひとつの骨組みを変幻自在に変化させ、さまざまな空間を作り出しているのです。