スマホを翻訳機に GoogleがAI研究成果を発表

ネット・IT
北米
2020/1/29 7:35

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【シリコンバレー=奥平和行】米グーグルは28日、人工知能(AI)に関する最新の研究成果をメディアに公開した。音声をリアルタイムで翻訳して文字で表示する技術などが柱で、この技術は数カ月以内に実用化を始めるという。差別の助長といったAIの負の側面への関心が高まっており、具体的な利用事例を示して社会の理解を深めたい考えだ。

米サンフランシスコでメディアを対象とした説明会を開き、AIの研究開発部門で責任者を務めるシニアフェローのジェフ・ディーン氏らが翻訳や画像認識、ロボットなど12分野の研究成果を説明した。

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翻訳では英語の音声をリアルタイムでスペイン語の文字として書き起こすことが可能な技術を披露した。「スマートフォンを長い会話に対応したリアルタイム翻訳機として使えるようにする」(担当者)としており、一部の言語を対象にスマホのアプリなどとして数カ月以内に提供を始める予定だ。

画像認識も注力分野のひとつと位置付けている。AIの主要技術である機械学習を活用し、インターネットにつながっていないスマホ本体だけで複雑な状況を把握できる様子を披露した。「メディアパイプ」と呼ぶ技術を活用することで5本の指の動きを詳細に把握できる。手話を文字情報に変換するといった用途を視野に開発を加速する。

「メディアパイプ」と呼ぶ技術によりインターネットへの接続がなくても詳細な画像分析が可能になり、手話の「解読」などへの応用を目指す(28日、米サンフランシスコ)

「メディアパイプ」と呼ぶ技術によりインターネットへの接続がなくても詳細な画像分析が可能になり、手話の「解読」などへの応用を目指す(28日、米サンフランシスコ)

こうした取り組みに加え、カナダの水産海洋庁などと協力し、深層学習を活用してシャチの鳴き声を検知し、保護につなげる活動に乗り出すと発表した。医療の分野では目の虹彩を撮影した画像を分析し、貧血の診断に活用する研究を始めることを明らかにした。

グーグルはAIの研究開発を中長期的な活動と位置付ける一方、スマホのカメラや文字起こしといった分野で実用化を始めている。説明会でディーン氏はAIの開発や活用に関する「指針」を2018年に定めたことなどを説明し、「社会で機械学習に対する不安が広がっているが、具体的な技術や影響を示すことにより払拭していきたい」と述べた。

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