JR赤字路線、「存廃論議」は今こそ始めるべきだ

災害で運休してから議論をしても遅すぎる

流氷や釧路湿原への観光輸送を担う釧網線。輸送密度は1970年代末の1397人/日から2
018年度380人と4分の1となり、年14億円の営業損失を出している(写真:takutaku/PIXTA)

国鉄分割民営化から33年が経過した2020年、JR各社が抱える赤字ローカル線の存廃がクローズアップされている。

JR東日本は災害で不通となった区間について地元と会議を重ね、経営難に陥ったJR北海道は「単独では維持するのが困難な線区」を公表。JR四国は鉄道網の維持に向けた懇談会を行い、JR九州も地元と議論を始めたい意向を示した。

論点となっているのは、沿線市町村や道府県の財政支援の体制だ。JRや国は、極端に利用の少ないローカル線の存続を求める自治体に対し、赤字補填や設備投資のための税金投入を求めている。鉄道を持続させたいなら、地元からの恒久的な支援が不可欠だ。

しかし、自治体の多くは冷淡だ。

今年1月10日、北海道庁は、北海道運輸交通審議会でJR北海道線への赤字補填や設備投資への補助を拒絶した。他地区でもJRローカル線の将来像について地元との話し合いは進んでいない。

ローカル線の存廃の物差しに使う輸送密度

JR各社がローカル線について本格的に地元協議を始めたのは、2010年代になってから。2014年から5年間で岩泉線や三江線など5路線221kmが廃線でバス転換され、山田線の一部は三陸鉄道に移管された。背景には、東北地方の災害で不通区間が増えたことと、JR北海道の経営危機がある。

JR東日本は、東日本大震災で不通となった大船渡線気仙沼~盛間をバス専用道にしてBRTバス高速輸送システムとして運行。鉄道事業としては2020年に廃線の予定(筆者撮影)

2020年もJRローカル線の整理が進む。

まず、JR東日本が、気仙沼線柳津ー気仙沼気仙沼間と大船渡線気仙沼ー盛間について4月1日付で廃線とする方向で最終調整をしている。

ただ、廃止とはいっても東日本大震災で被災し、2012年からBRT(バス高速輸送システム)が運行している。実質的にバス転換済みの区間といってよい。

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  • 流されないロスジェネa12a7d05d99c
    「地域の関係者の理解」というなら、鉄道に乗らず車移動をしている時点で、生活には必要無いと理解しているんですよね。

    殆どの人が使わない鉄道の維持に税金を投入するぐらいなら、みんなが使う道路や橋、トンネルの維持や更新に使うべきだと思います。

    地方が駄々を捏ねてワガママを言えば、交付金や補助金が出る行政は良い加減終わりにするべきです。
    up83
    down22
    2020/1/29 06:15
  • かず8534b1b475c6
    利用者負担が原則、地元が負担しないなら、さっさと廃線すべきだろう。後は、バス路線に転換したら良い。バスの場合は、赤字分を全部国が補填してくれる。
    up57
    down23
    2020/1/29 06:28
  • ろいさまd2450164ec73
    そもそも鉄道だけ、事業者が土地を取得し線路を敷設しその利益の一切合財を得るという仕組みがおかしい。

    ・飛行機:国、都道府県が空港を設置し(一分管理は民間委託)、航空会社に貸し出す。空に利用料なし

    ・自動車:国道、県道、市道など税金によって整備し、道路の利用料はかからない。一部、高速道路、有料道路などは、建設費償還までの間は受益者負担として利用料が発生。

    ・船:同様

    鉄道も同じように、国・都道府県で線路・駅を敷設し、運行したい事業者に貸し出せば良い。同じ路線を複数の事業者がつかても構わない。要するに上下分離方式である。

    また、予算が縦割りであることがおかしい。

    交通行政は一体で整備すべきだ。スイスなどは、通過するトラックの排ガスを減らすべく長大なトンネルを掘りスイス国内を通過するだけのトラックは鉄道経由にすることを義務付けた。
    そして、その建設費は道路予算からも流用したという。
    up32
    down2
    2020/1/29 09:26
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