衆院予算委員会で二日間にわたる質疑が終わった。安倍晋三首相は野党の質問に正面から答えようとはせず、自らを正当化したり、要求を突っぱねたりした。不誠実な答弁をいつまで続けるのか。
首相は先週、衆参両院での各党代表質問に対する答弁で、自らに都合の悪いことには口をつぐみ、説明に努めようとしなかった。代表質問に続く一問一答形式の衆院予算委員会でも、こうした不誠実な態度を続けたことは見過ごせない。
首相は「堂々と政策論争を行いたい」と語り、疑惑追及に注力する野党を批判する。
国権の最高機関であり、唯一の立法府である国会が政策論争の主要な舞台であることは確かだが、政権がうそをついたり、隠しごとをせず、正しい情報を国民の代表である国会に示すことが前提だ。
政権が情報を隠蔽(いんぺい)したり、情報に誤りがあれば、正しい審議や議決ができない。政権監視や国政の調査も、国会の重要な権能だ。
首相が堂々と政策論争をしたいのであれば、国民の疑問に答え、疑惑を一刻でも早く払拭(ふっしょく)することが先決だが、首相にそのつもりは毛頭ないようである。
「桜を見る会」の問題は、首相が地元支援者らを多数招待し、公職選挙法違反の便宜供与の可能性が指摘される重大事案だ。安倍政権の正統性にも関わる。
首相は、招待者が膨れ上がったのは「長年の慣行の結果」で、問題は招待基準が曖昧だったことだと強調。旧民主党政権の鳩山由紀夫首相時代の二〇一〇年にも地元支援者らが招待されていたとして自らを正当化しようとした。
しかし、一万八千人超にまで出席者が膨張したのは一二年の自民党の政権復帰以降であることは明白だ。招待者名簿の取り扱いについても菅義偉官房長官は、旧民主党政権時代を含めて文書管理簿に記載しない公文書管理法違反があったと指摘したが、旧民主党の例を挙げ、自らの振る舞いを正当化するのは明らかに筋違いである。
首相の不誠実な答弁は、現職衆院議員が逮捕された「カジノ汚職」、公選法違反の可能性が指摘され、二閣僚が相次いで辞任した「政治とカネ」の問題でも同様だ。国民の疑念に答えようとする姿勢はみじんも感じられない。
与野党論戦の舞台は、きょうから参院予算委に移る。首相は不誠実な答弁をいつまで続けるのか。自らの不遜な態度が、議会制民主主義の基盤を崩していることに、そろそろ気付くべきである。
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