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 アスベスト(石綿)被害が起きた大阪府南部の泉南地域に石碑が建立された。19日に被害者や遺族ら約200人が集まった式典が開かれ、国を相手に集団訴訟を起こした原告団の共同代表・山田哲也さん(47)が「多くの労働者が石綿の危険を知ることなく働き、病気に苦しんだ。石碑は犠牲者が天国で安らぎ、被害者が勇気と希望を持って生きる糧になる」と語った。

 かつて泉南地域は国内最大級の石綿紡織品生産地だった。工場で粉じんを吸い込み、中皮腫肺がんなどを患った元労働者や遺族らが2006年5月以降、国の規制の不備を訴えて順次提訴。昨年10月に最高裁が被害の拡大を防ぐ対策を怠った国の責任を認め、同12月に集団訴訟は終結した。

 「産業公害の根絶を」。そう願う原告たちが国からの賠償金(計約6億円)の一部で高さ1・2メートルの「泉南石綿の碑」を建立。石碑のそばには、「新緑を 吸い込みいや増す悲しみぞ 息ほしき人のあるを知るゆえ」とする歌碑のほか、地域の歴史や訴訟の歩みをたどるパネルも置かれた。(太田航)