ベンチャー企業

P&Gマーケを経て創業した起業家が挑むビューティxウェルネスD2C「MADE IN JAPANの高品質製品を世界へ」|竹内太郎 naturaltech 代表取締役

竹内太郎 naturaltech代表

多くのマーケターが活躍しているP&G。

近年では、日本マクドナルドの復活の立役者となった足立光氏や、低迷していたUSJを見事に再建した森岡氏、Facebookの日本法人社長だった長谷川晋氏、UCC珈琲で活躍している石谷桂子氏など優れた経営者、マーケターを輩出しているのがP&Gである。

今回は、新卒でDeNAに入社した後に、P&Gでマーケターとして第一線で活躍し、natural tech株式会社を創業した竹内太郎氏にお話を伺った。

現在ブームとなっているD2C領域で活躍している竹内太郎氏が、P&Gでの経験をどのように生かし事業を展開しているかという点も大変勉強になる内容となっている。

マーケティングやD2Cや外資系メーカーに興味ある方は是非ご覧になってほしい。

【プロフィール】
natural tech株式会社代表取締役社長
竹内 太郎 Taro Takeuchi
1990年生まれ。慶應義塾大学卒業。DeNAに新卒入社し、EC事業部でデジタルマーケティング、新規サービス担当などを経て、P&G マーケティング本部に転職。ブランド経営・コンセプト開発・広告開発・デジタル&オフラインで包括的なマーケティングプラン開発を担う。 SK-IIを担当した1年間で担当領域の売上を昨対200%成長させ、社長賞を受賞。その後、独立しnatural tech株式会社を創業。

企業サイト:https://naturaltech.jp/
mitas公式サイト:https://brands.naturaltech.jp/mitas/

P&Gで社長賞を受賞

-生い立ち、簡単な自己紹介をお願いします 

幼少期から父親の仕事の関係でアメリカ、イギリス、スイスに合計10年転々と移り住んでいました。

その後、大学生になるタイミングで日本に帰国し、慶應義塾大学に入学しました。大学期間中は、学業のかたわら俳優活動を行い、ドラマ(チームバチスタの栄光2)や自身が主要キャストとして出演した映画(百瀬こっちを向いて)などを経験しました。
俳優活動は大学期間中で卒業し、その後はDeNA->外資系のP&Gという会社に転職しました。

DeNAでがネットスーパー事業(E-commerce)や新規サービスの立ち上げ企画などを経験した後に、P&Gのマーケティング本部に転職しました。

P&Gでは最初にパンパースの日本市場のブランド経営・マーケティングを数年担当しました。その後に、高級化粧品ブランドのSK-Ⅱ(エスケーツー)の日本市場と中国市場、両方のブランド経営・マーケティングを担当し、インバウンド事業など大きく成長させることができました。

最終的には、SK-IIの国内インバウンドの売り上げを200%成長させて社長賞を受賞しました。

その後、P&Gを退職し、独立しました。現在は2社ほど経営しています。一つはマーケティングのコンサルティング会社で、もう一つは美容・健康分野でサプリメントのサブスクリプションサービスを展開しています。

第1弾の製品は、「mitas」という妊活・妊婦の方が飲まれる、葉酸サプリを妊活専門の著名な産婦人科医の先生と開発し販売しています。また、今年の春頃(2020年)には更年期の女性を対象とした認知症予防サプリメントなどを脳神経内科の著名な先生と開発・販売予定です。今後は若い女性から更年期の女性まで、女性のあらゆる悩みに特化したサプリメントや美容製品を展開し、体の内側からの健康や美容をサポートできる製品を開発・展開していきたいです。

 

-P&Gでの具体的な業務内容はどのようなものだったのでしょうか?

P&Gでのマーケティング本部での主な業務内容は、具体的に言うと、担当しているブランドの経営(売上管理)、消費者調査、コンセプト開発、オフライン(・オンラインの包括的なマーケティングのプランニングや開発です。

DeNAとP&Gの両会社を経て、デジタルもオフラインも両方のマーケティングスキルを徹底的に鍛えられました。

P&G 竹内太郎当時P&G時代の竹内氏

 

-話は変わりますが、P&Gのマーケターは数多くの優れた経営者やリーダーを輩出しています。竹内さんはそれについて何故だと思いますか?

2つほど理由があると思います。1つ目は、圧倒的な裁量権ですね。ブランド経営とマーケティングを両方見ることになるのですが、普通の企業では本当に考えられないくらいの業務幅だと思います。

P&Gでは1ブランドあたりに二人ほどしか新人マーケターがつきません。

国内有数のブランドで、非常に大きな売り上げがあるパンパースやSK-IIの日本経営も基本二人程度で担当していました。

日々の業務内容や売り上げに対する報告を日本にいる上司(ブランドマネージャー)とシンガポールにいるマーケティングディレクターにしていきます。

もちろん最終的な責任は上司やマーケティングディレクターが取るのですが、この経験が若いうちから製品開発、生産、売上予測、マーケティング、営業戦略、などを俯瞰して捉える力になります。

また、社内業務も全て英語です。

上司が日本人の時もありますが、インド人や中国人だったりすることもあるので公用語の英語を使いながら、様々な背景を持った人種・言語を使う人たちを巻き込んで事業のゴールを達成していく力は身につくと思います。マーケティング的なスキルはもちろんですが、気合いのような精神的な強さも求められます。

-なるほど。業務が全て英語というのは最初は中々苦労しそうですね。二つ目の理由はいかがでしょうか?

二つ目は、徹底的な消費者理解です。

P&Gは180年以上続いている大企業ですが、そこまで長く続くには本当に消費者を理解しないといけません。消費者に目を向けていれば時代やトレンドが変わっても対応できるのです。

私もパンパースを担当していた頃は何人あったか覚えていないほど多くの妊婦さんに会いました。

新製品が出る際にはCM、販促物、店頭のPOP、コンセプト、パッケージのデザイン、など本当にありとあらゆるものを消費者調査にかけます。

消費者は本音を言わないことも多く、ふとした瞬間に「あ、この人今本音を隠したな」など細かいところにまで気づくことができるようになりました。

今自分でやっている会社(natural tech株式会社)でも、商品開発をする際にヒアリングやインタビューをする癖はこの時期に身につきましたね。

消費者調査の特徴としては、決してグループインタビューはしません。

必ず1体1でインタビューさせていただき、最低でも1時間半はみっちり話を聞きます。特に自分が使用者ではないカテゴリーの製品の場合は尚更消費者の理解は必須です。

-ご自身の会社でも同じような手法を取り入れているんですか?

はい。後ほど詳しく説明していますが、当社の第1弾の製品の温活もできる葉酸サプリmitasもこの徹底した消費者調査から生まれました。

何十人と妊婦さんを招待して、実際にヒアリングを重ねました。

コンセプトボードの回答、確信的な質問をした後の、消費者の答えるときのわずかな表情の違い、など細かいところも含めて、製品開発やマーケティングのプランニングのヒントになります。

妊活専門の産婦人科医も交えて、安全面も考慮しながら最終的には製品開発を行いました。

本当の意味で消費者を理解し、良い商品を作る

-話は変わりますが、竹内さんは昔俳優をやられていたと思いますが、なぜ辞める決断をされたのでしょうか?

父や祖父の影響で、俳優を始めるもっと前からいつか自分の事業・会社を立ち上げて、ビジネスの世界で成功したいと思っていたんです。父は金融分野で、作家の祖父は自営業として一定の地位を築き上げた人たちだったので、起業や自分だけのビジネスを作り上げることは昔から身近に感じてはいました。

大学中はとにかく何かチャレンジできるものが欲しくて、演技や映像も経験したことがない世界でしたし、やってみたいと思い、始めました。楽しかったし、それなりに達成感を感じる瞬間もあったのですが、昔から自分はビジネスの世界で生きようと決めていたこともあり、俳優活動をやめました。

 

-なるほど。その中でなぜサプリメントから始めたのですか?

当社(naturaltech株式会社)はビューティxウェルネステックのD2C事業を展開しています。最初はサプリメントから始めていますが、サプリメント以外の美容製品やサービスも今後は展開しようと考えています。

なぜサプリから始めたかというと、一言でいうとサプリメントをやっている会社って怪しいところが多いんです笑

本当にきちんと消費者をインタビューして商品開発から必死に考え抜いている企業が少ない。

とりあえずデジタルマーケティング(web広告)に長けた会社が、適当にOEM先に丸投げした商品をお客様に売るだけ、という会社ばかりです。

デジタルマーケティングの経験がある人からすると非常に参入障壁の低い領域です。

そんな業界で、P&Gで学んだフレームワークや消費者調査を持ち込んだら、本当の意味でお客様にとって良い商品ができ、選ばれ続ける製品を作れると言う自信がありました。

発売している葉酸サプリmitasを出すときも、既に多くの「Web広告屋」が蔓延っている市場でした。もはや普通のデジタルマーケティングだけかじった人では参入することすら躊躇う市場だったと思います。

当社は、「マーケティングの本質」は製品開発から、という信念があるので、消費者調査をした際に一般的なWeb広告屋が気づけないことにも気がつくことができました。

-製品開発はどのようなところに拘られているのでしょうか?

製品の品質も一級品でなければ長期的に選ばれることは難しいです。

当社が製品開発に力を入れているところは大きくいうと2点あります。
一つは、その領域における著名な医師とタッグを組んで監修・開発すること。2つ目は、日本国内のGMP認定工場で商品を製造することです。

今製造をお願いしている会社は、京都大学と共同開発研究などを行っている製造業者で、技術力や弊社の細かい指摘に対しての対応力がずば抜けていました。

そのため、1月に切り替わった新製品から、現在の工場への委託に変更しています。

おかげさまで、製品の品質は非常に高く、MADE IN JAPANの良い製品をお客様に届けられる体制が整っています。出元がよくわからない中国産などの製品を発売している他社もいます。

国内製造はコストが上がりますが、お客様にとっては最も高品質で、且つ、安心できる製品をお届けできると考えています。

サプリメントのような不透明な業界でも、安心してお客様が商品を選べるブランドを作り、最終的に業界の製造から始まる不透明さを改善したいと考えています。

-具体的に消費者インタビューで得た学びを生かした例はありますか?

例えば、商品開発の際はアンメットニーズ(unmet needs)という、ニーズはあるが満たされていないニーズを探し求めます。

今、当社で発売している、葉酸サプリmitasの開発アイデアも消費者インタビューで発見しました。

胎児の先天性障害のリスクを下げるために、厚生労働省が全国の産婦人科医に葉酸摂取を推奨し始めてから、今では多くの妊活している方や妊婦さんは葉酸を摂取しています。

今世の中にある葉酸サプリはどれも同じです。厚生労働省が発表している栄養を言われた通り配合して売っているだけです。

そんな中、当社はたくさんの妊婦さんとのインタビューを通して、体の冷えが不妊やあらゆる悩みにつながっていることがわかりました。

-具体的に教えてください。

実に80%の妊活中の方は、お風呂に入ったり、厚手の靴下を履いたり、なにかしらの温活をしていることがわかりました。

不妊の原因にもなる体の冷えを考えて、なんとか温活効果も実感できるようにしたい。

そう思い、妊活専門の産婦人科医と日々議論を交わしながら、最後はポカポカ実感ができる和漢素材(生姜、高麗人参、ナツメ、など)を配合した「温活もできる葉酸サプリ」を発売するに至りました。

結果としてお客様には大変満足いただいており、売り上げも非常に好調です。

このように、本当の意味で消費者を理解して、良い製品を作ろうという姿勢を持っている会社は少ないです。

日本は従来他社の真似ばかりするのが得意ですが、本来目を向けるべきは商品を買っているお客様目線で、どこに満たされていないニーズがあるかを発見しようとする姿勢だと思っています。

温活もできる葉酸サプリmitas温活もできる葉酸サプリmitas

最終的にはP&GのD2C版の企業を作りたい

-ビジネスモデルについて詳しく教えてください。

ビジネスモデルは最新のD2C(Direct to Consumer)モデルを採用しています。

P&Gなどはドラッグストア、スーパー、などの店舗に卸していますが、D2Cはそのような卸は一切せずにネットを通して、お客様に直接商品を販売するモデルです。

このモデルの良いところはお客様から直接生の声を吸い上げられることです。ドラッグストアなどに卸すとどうしてもお客様の声は聞くことはできません。

そうすると製品の改良や、販売のフォローアップなどがどうしても遅れてしまいます。

例えば、2020年1月に、当社の葉酸サプリmitasを大幅にパワーアップしました。これはお客様より「もっとこういう成分を入れて欲しい」「錠剤の飲みやすさを改善して欲しい」などのお声を頂いたからです。

まだ発売から半年程度しか経っていませんが、このようにスピーディーにお客様の生の声を吸い上げて、商品をどんどん改良していく。これが今後の新しいメーカー像になるべきだと感じています。

-将来はどのようにしていきたいと考えているのでしょうか。

最終的にはMADE IN JAPANのブランドを多数つくってグローバルで勝っていけるようにしたいです。

おこがましいですが、私がいた前職の「P&GのD2C版」と言ったらわかりやすいですかね?

-ありがとうございます。今はどのようなメンバーで働いているのでしょうか。

ベンチャーではありますが、私以外のP&Gのマーケティング出身者やDeNA出身などの大企業出身のメンバーで構成されています。

外部メンバーには、一流のパートナー企業ばかりです。京都大学などと共同開発や研究を行っている製造業者に始まり、グローバルレベルのデザイナー、とタッグを組ませていただいています。

とにかく良いものを作ろうと一心で毎日みんなヒアリングを重ねて、商品開発や販売を行っています。

参加歴が短いメンバーでも、ヒアリングを重ねるとどんどんそのカテゴリーのプロになっていきます。

人数を増やしても売り上げが上がるビジネスモデルではないので、筋肉質で少数精鋭の優秀なメンバーだけで企業文化を作っていきたいです。

新商品を続々と発売予定

-最後に今後の展開について教えてください。

具体的には言えませんが、第2弾、第3弾の製品を近々新発売予定です。

妊活・妊婦向けの商材やサービスも拡充していきますが、それだけでなく健康・美容のカテゴリーでニーズはあるが満たされていない領域で、製品を開発・発売していきたいです。

-ありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

編集後期:

いかがだっただろうか。今回は、DeNA、P&Gを経てnatural tech株式会社を創業された竹内太郎氏にお話を伺った。

真の意味で消費者に寄り添って商品を開発する竹内氏の考えに感服するばかりであった。

最新のビジネスモデルを取り入れ、ビューティxウェルネスの分野で革新的な商品開発を行い続ける竹内氏の今後に注目したい。

natural tech株式会社のホームページはこちらから
https://naturaltech.jp/

第1段製品 葉酸サプリmitasの販売サイトはこちらから
https://brands.naturaltech.jp/mitas/lp