経営再建を目指してきた山形市の百貨店「大沼」が、資金繰りの悪化を理由に山形地裁に破産を申請した。山形本店などの店舗の営業はすでに終了し、県内から百貨店が姿を消した。
(河北町の女性)
「きょうはどうしたんだろうと思って。山形市に来るたびにここばかり利用していたから何だか寂しいと思い眺めていた」
大沼は2019年10月に消費税が増税されて以降、月の売り上げが前年に比べ2割から3割減り、今期は数億円の減収が見込まれていた。これに伴い資金繰りが悪化し、4億円程度という1月の取引先への支払いも難しい状況となったため、事業の継続を断念し、27日に山形地裁に破産を申請した。
(大沼・長沢光洋代表取締役)
「本当に申し訳ない。今まで大沼を支えてくれた取引先、業者、大沼を愛し応援してくれた地域の皆さんに重大な裏切り。本当にどうすることもできなかった」
大沼は、江戸時代中期にあたる1700年に創業し、松坂屋、三越に次ぐ歴史のある百貨店。山形市七日町の本店に加え、高度経済成長期には酒田市や米沢市にも出店し、売り上げはピークの1993年に196億円に達していた。
しかし、郊外への大型店進出や仙台市の店との競合もあり2001年から赤字に転落し、前期の売り上げは79億円に落ち込んでいた。大沼の廃業により全国の協会に加盟する百貨店が県内から消えたことになる。
(山形市民の男性)
「山形市民にとってはショック。私も小さい頃によく来ていた」
山形本店は26日をもって、旧米沢店で営業してきた米沢サテライト店、ギフトショップ新庄店とともに営業を終了した。山形本店では27日朝、テナント業者や取引業者が店内に出入りし、保管されている商品を運び出していた。
(テナントの従業員)
「大損害。年間で数億円規模の売り上げのためそれを考えると心が痛い」
負債総額は30億円ほどで、パートを含む191人の従業員には26日の営業終了後に全員の解雇が伝えられた。
(大沼・長沢光洋代表取締役)
「(従業員の)支援は人事中心にやっている。すぐに手を打たなくてはいけないので即座に始める」
大沼が発行した百貨店共通の商品券と買い物券については、取り扱いが決まるまで保管するよう求めている。すでに注文を受けた学生服については、受け取りに影響が出ないよう管財人と協議するとしている。
大沼では6月に債権者集会を予定している他、1月中にハローワークの協力を得て従業員の再就職に向けた説明会を開くことにしている。