精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験

「入院は社会的制裁、市役所も児相も同意」

4年間入院していた多摩病院の前に立つ米田恵子さん。奥の建物の4階の閉鎖病棟でほとんどの時を過ごした。この日のように雪の日もあったが、窓から眺めることしかできなかったという(撮影:梅谷 秀司)
精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。本連載では日本の精神医療の抱える現実をレポートしていく。
まずは精神科病院の「深い闇」に分け入っていきたい。

「2度とここから出られないと…」

世間では正月休みが明けたばかりの、1月6日午前10時。米田恵子さん(42歳)は東京都八王子市にある精神科病院「多摩病院」(持田政彦院長)から退院した。2016年2月の入院から、すでに4年近くの歳月が流れていた。

「まだ夢を見ているような感じで、日常のささいなことがすごく幸せです」

この連載は今回が初回です

退院から10日ほどたった1月半ば。取材に応じた米田さんは、そう笑顔で話した。病院では週に1度しか食べられなかった好物の麺類を好きなときに食べたり、少し夜更かしをしてテレビを見たりすることに、幸せを覚える日々だという。「何よりいちばんの幸せは、家族や友人と自由に連絡が取れることです」。

「逆に今のほうが本当は夢で、目が覚めたらやっぱり現実は閉鎖病棟内のままだった、と想像すると、怖くなって泣き出しそうになります。入院しているときは外で生活しているイメージがまったくできなくて、声を上げても誰も助けてくれず、2度とここから出られないと思ったこともありましたから」

米田さんはそう振り返ったあと、語気を強める。

「この4年間、家族とは面会はおろか、声を聞くことすらかないませんでした。入院当時、中学1年生だった次男は今では高校生。すっかり声変わりしていて成長がうれしい半面、一緒にいられなかった悲しみもあります。人生の貴重な時間を奪った病院のことは、決して許せません」

30代から40代にかけての、この4年間。米田さんが長期入院を余儀なくされた背景にはいったい何があったのか。

次ページ次々と子どもを奪われたショックで
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
  • 令和を生きる若者のための問題解決法講座
  • 精神医療を問う
  • 読んでナットク経済学「キホンのき」
  • 最新の週刊東洋経済
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
14

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
  • ショコラ528c18437271
    この記事こそ精神医療や児童福祉に日々携わっている方々を貶めるような操作的な悪記事だと思います。思わずコメントせずにいられませんでした。
    操作的とされる人からの申告のみで記事が構成されており、ほとんど裏がとられていない。
    この患者さんが問題というのではなく、記者の方の良心やモラル、リテラシーの問題。
    多子世帯でお子さんが何人も児相案件になっており、医療保護入院になっていることを考えたら、この方からの話を鵜呑みにした、こうした一見センセーショナルなネガティブキャンペーン記事を掲載するのはあまりにも軽率なのではと考えます。
    報道のプロフェッショナルとして、もっと丁寧な取材をしてから児童福祉や精神医療のプロフェッショナルを批判してほしいと思います。
    酷い記事。
    ほかの東洋経済のコラムや記事の信用性にもつながる問題だと思います。
    up254
    down46
    2020/1/28 07:19
  • ネコサメa48d3feb619d
    入院に至る背景が不透明なので擁護しようにも無理がある。
    むしろ病院を陥れたり一般読者に誤解を与える恣意的なものをこの記事から感じる。
    記事にも度々出ているが、まさにこれこそ操作的、支配的じゃないか。
    元凶の話をするのであれば根本的に悪いのは病気ではない。
    精神病を作り出す家族の中の負の遺産である。
    up236
    down59
    2020/1/28 06:57
  • ほどほど29a04a42f8cd
    精神病院に長期入院になる事情のほとんどは、家庭や社会で精神病者を受け入れる体制になっていないからだが。「厄介者」の存在をすべて医療機関である「病院」に押し付けるような社会の病理や問題を全く無視するとは、社会問題を扱うことを企図した記事としていかがなものかと。
    up117
    down28
    2020/1/28 07:10
  • すべてのコメントを読む
トレンドウォッチAD
台湾と中国のデジタルは違う<br>唐鳳・台湾デジタル大臣に聞く

台湾を代表する天才プログラマーの名声を得て15歳で起業した唐鳳氏。「デジタル民主主義」「開かれた政府」を体現した38歳の若き大臣が、これまでの実績、日本や中国との比較、IT教育やITの未来などについて胸の内を語りました。