東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

経済にも影響 対策総動員で回避を

 新型肺炎の影響が経済に波及し始めた。中国の国外への団体旅行禁止で観光への打撃が顕在化する一方、株価も大きく下落した。体力のない中小企業対策など支援態勢を早急に整える必要がある。

 すでに直接の打撃を受けているのは観光関連産業だ。日本政府観光局(JNTO)によると、二〇一九年に日本に来た中国人は九百五十九万人と首位で、二位の韓国人(五百五十八万人)を大きく引き離している。消費額も一兆七千七百十八億円とトップで36・8%を占める。団体旅行客は全体の三割程度で禁止措置が長引けば訪日観光客は激減する。

 影響は幅広い業種へ広がりつつある。旅行業者のほか百貨店など各種店舗、ホテルや旅館など宿泊施設、航空や鉄道会社など運輸関連、遊園地やゴルフ場など娯楽施設…。その多くが中国からの観光客に頼るとともに、将来に向けた設備投資を行っている。

 このうち特に心配なのは中小の旅行業者や旅館、観光地の商店などだ。感染の終息を待たずに資金繰りが急速に悪化する可能性も否定できない。中にはすでに韓国からの訪日客減で打撃を受け、今回がダブルパンチになったケースもあるだろう。

 人員整理など雇用問題に発展する前に、政府や各自治体は緊密に連携して支援策を準備する必要がある。中小企業を念頭に置いた緊急融資制度の柔軟な活用など、対策を総動員して万全の構えを取ってほしい。

 金融市場の動きも気がかりだ。週明けの株式市場では、観光関連に限らず自動車や機械など幅広い銘柄で売り圧力が強まり株価は大きく下落した。

 感染拡大による景気後退を嫌気した投資家は株式市場から資金を引き揚げ、安全確保に向け円を買う気配をみせている。この動きが本格化すれば円高が株安を起こす負の連鎖が起きかねない。これを防ぐため政府・日銀は緊張感を持って市場動向を監視すべきだ。

 さらにくぎを刺したいのは、ネットなどでの差別的な動きの広がりや、不正確な情報の拡散だ。東京五輪を控える中、日本は世界中から来る人々を温かく迎え入れる姿勢をより強めている。

 しかしネットでは心ない言葉が飛び交っている。中国人客を敬遠する動きが強まる可能性もある。観光もまた海外の人々と接触し友好を深める場である。品位ある行動と、特に差別的な振る舞いへの厳正な対処を強く求めたい。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報