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2020年のグラフィックデザインのトレンド予測まとめ
- 2020/1/27
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海外のデザインサイトの予測などを参考に、2020年のグラフィックデザインのトレンドを探ってみました。ここ数年の主流であるミニマルデザインは今年もその流れを変えることはないのでしょうか。それに変わる新しいデザインのトレンドが生まれるのでしょうか。
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2020年のグラフィックデザインの背景
2001年にスタートした21世紀は2020年が最初の20年の締めくくりとなります。世紀初頭の未来予測にリストアップされていたものが、いよいよ現実化していく節目と言えるでしょう。AIや自動運転、IoTの進化・実用化など明るい面や、気候変動や政治的緊張など負の面の両方があります。
また、InstagramとiPadが登場した2010年に生まれた「アルファ世代 (Generation Alpha)」がいよいよ10代を迎えることとなり、マーケットもカルチャーもかつて見たことがないものが出現する可能性があります。政治、経済、環境、テクノロジーなど次の10年へ向けての大きな変化が、すでにグラフィックデザインへも影響をおよぼしています。2019年のグラフィックデザインの動きを踏まえて、2020年のトレンドを探っていきましょう。
ミニマリズム志向の強化
無駄な装飾を拒否し、必要な要素のみで構成するミニマリズム的アプローチは、2020年も弱まることはないでしょう。シンプルで直感的なイラストや読みやすいタイポグラフィは、ユーザーとのインタラクションの点でも有効です。
グラフィックデザインにおけるミニマリズムの代表はフラットデザインです。フラットデザインでわかりやすく構造化されたコンテンツはユーザー体験を向上させます。デザインにおけるミニマリズムの追求は2020年も多く見られるでしょう。これはデジタルコンテンツだけではなく、印刷物にもUXデザインの考え方が波及していくことも考えられます。
また、テキストに対しても装飾を徹底的に排除して、単一のフォントで文字の大きさのバリエーションも最小限にとどめる極端なミニマリズムのタイポグラフィもすでに登場しています。
ミニマルなラインアートとモノクロ(単色)写真
ラインアート
可能な限り不要なものをそぎ落とすというミニマリズムは、イラストにも影響を与えています。ミニマルなラインアートがWebページやアプリのデザインと調和するのはグラフィカルな理由からだけではありません。
コンセプトやメッセージ、機能をストレートにわかりやすくユーザーに伝えるという役割の点でもシンプルな線画は有効です。視覚的ノイズを排除する、という意味合いでモノクロ写真を採用するWEBサイトが増えると予想されます。
モノクロ(単色)写真
モノクロ写真はグレーの階調に限らず、UX・UIやブランディングに基づく全体的な色彩設計にしたがって色が決められます。このトレンドはデジタルメディアと印刷メディアの両方で目にすることになるでしょう。
新しいスキューモーフィズム
初期のiOSで採用されていたスキューモーフィズムは時計や計算機、メモ帳などを質感までリアルに再現していました。そのため、立体的でリッチなデザインのことをスキューモーフィズムであると解釈されることがありますが、それは正しくありません。現実世界に存在するものに似せることで、ユーザーが機能や操作方法を直感的に理解できるように助けることを主眼に置いたデザインがスキューモーフィズムの本質です。たとえばスマートフォンなどの設定画面のスライド式オン・オフスイッチは、リアルな質感のないフラットデザインであっても現実世界のスイッチを模倣しているため、スキューモーフィズム的表現でもあるのです。
2010年代前半にパソコンのOSやWebデザインのスタイルとしてフラットデザインが台頭してきたことで、リッチなスキューモーフィズムは隅に追いやられてしまいました。しかし、2019年にリリースされたiOS 13の「メモ」には従来とは異なるスキューモーフィズムが見られます。ペンやマーカーなどの描画ツールがフラットでミニマルな表現から立体感のあるものに変わりました。質感はありませんが、実物を模倣した3D表現になっています。新しいスキューモーフィズムを意味する合成語「ニューモーフィズム」(Neuomorphism)と呼ばれることもあります。この新しいスキューモーフィズムはWebサイトやアプリ、印刷物などへ広がっていくでしょう。
リアリズムの味付け
上記のニューモーフィズムのように「フラットデザインやミニマリズムの縛りをゆるめて、リアリズムの要素を少しまぶそう」という手法が2020年では増えるかもしれません。ベベルやエンボス、チゼルなど3D効果を使ってボタンやアイコンに厚みを出したり、金属や革、木目の質感、ザラつき、光沢を加えたりといった、ミニマリズムの考え方であれば本来排除すべきちょっとした装飾を施します。
また、ソリッドな原色だけでなく、アースカラーやグラデーションを使うといったことが考えられます。これによって、ときには無機質で冷たいという印象のミニマルデザインに、人間味のあるあたたかいルック&フィールを与えるテクニックです。太く力強いフォントで組んだワードロゴなどに対しても立体感と質感を持たせることができます。
躍動するタイポグラフィ
グラフィックスの要素として文字の活躍する場面はますます多くなっていくでしょう。視認性・読みやすさが最重要課題であるミニマリズムのアプローチとは対照的に、タイポグラフィのありとあらゆる可能性を多くのデザイナーが探求しています。この流れは2020年もさらに大きくなると予想されます。
テキストをめぐってはいくつかの大きなトレンドがあります。そのひとつは、テキストのみで構成されたグラフィックです。写真やイラストなどの要素を一切使わないか最低限に抑えて、テキストだけでメッセージを伝える手法です。使われる文字は、カスタムフォントから手書きレタリング、そして過剰な装飾で表現されたものまで幅広いバラエティがあります。
ベベルやグラデーションで文字を立体的に見せることはもっとおこなわれそうです。また、文字で立体を形づくる、曲線に沿わせる、写真やイラストの中に一体化させるなどの手法はすでに見られます。視認性を無視してあえて過激なアレンジをほどこした、これまで見たことのないような表現が生まれるかもしれません。
映画のタイトルバックなどで使われる「キネティック・タイポグラフィ」(kinetic typography)と呼ばれる文字のアニメーションも重要なデザイン要素として存在感を示すでしょう。動くテキストで歌詞を示し、歌の世界を表現するプロモーションビデオなどで目にすることの多いキネティック・タイポグラフィですが、WebサイトやSNSでのブランディングでも活用されるでしょう。
ストリートカルチャー、パンクシーン、ディストピア
政治や経済の変化が激しく、将来への不安や社会への反発、草の根的活動などを反映して、2020年にはこれまで以上にストリートカルチャーに由来するグラフィック表現がおこなわれるだろうと予想されています。そこでは、異議申し立てのメッセージに使われるような、激しい手書きのタイポグラフィが使われます。また、極太やアウトラインのフォント、同じ言葉の繰り返し、あえて未完成なグラフィックという形をとるでしょう。
70年代のパンクカルチャーや90年代グランジに由来するアート表現は、反抗やいら立ちを意味するとともに、しがらみを断ち切って自由を歓喜するという若い世代のポジティブな感情の表現にもなります。このようなデザインをメジャーなブランドが採用すると予測する人もいます。文明が崩壊して荒廃した世界「ディストピア」をモチーフにしたデザインもサブカルチャー向けファッションなどで見られるかもしれません。
コラージュの新しい試み
異なる要素を組み合わせることで思いがけない世界を作り出すのがコラージュの魅力です。切り絵のコラージュはアート的なタッチを演出できますが、2020年には手荒く切り裂いた白い切り口や粗雑な切り方をそのまま残すようなスタイルが好まれるかもしれません。
また、写真とイラスト、幾何学図形と伝統的な模様、フラットデザインと手描きイラストといった、ミスマッチとも言えるコントラストの強い組み合わせが、新しいコンセプトやメッセージを伝えるために選ばれます。主にエディトリアルのイラストや、ポスター、書籍などの印刷物でこのスタイルを目にするでしょう。
サイバーパンク的未来の表現
新しいテクノロジーがもたらすこれからの社会を描くために、SF小説や映画の世界観が利用されるでしょう。映画『ブレードランナー』やサイバーパンクのようなネオンに彩られた超現実的世界が、ARなどの没入型体験の表現手段として選ばれます。
ブルー系・パープル系・ショッキングピンクといった色使いで非現実的ながらもどこか親しみやすいタッチのデザインが2020年には増えるでしょう。
モーショングラフィックスの進化
先端を行く技術とは言えないGIFアニメーションですが、SNSのスタンプなど目にする機会はどんどん増えています。ブランドのメッセージを伝えることを目的としたGoogleやIkeaのモーションロゴのようにクオリティの高いサンプルを探し出すのに時間はかかりません。
2020年もモーションロゴはさらに進化し、ユーザーの操作に応じてインタラクティブに反応するロゴやマイクロアニメーションの新しいアイデアが世界中のデザイナーから見せてもらえるでしょう。従来のように既存のロゴを動かす、という考え方ではなく、動くことを前提にしてロゴを作り出す、というアプローチが増えるかもしれません。
静止しているものより動くものが人の注意を引きつけます。この力をブランディングやアイキャッチとしてだけでなく、安全のための注意を喚起するために使う例もあります。
たとえば航空会社のデルタエアラインは乗客に対しておこなう安全のための注意をアニメーションにしています。アニメならでは演出でポイントがとてもわかりやすい説明となっています。複雑だったり抽象的な内容を長めのシークエンスで伝えるアニメーションへの需要も増えるでしょう。新しいカテゴリーとしてアート作品とは異なるイラストのタッチや演出ノウハウの開発が必要になります。
多様性に目を向ける「インクルーシブ」なアプローチ
インナーウェアのブランドaerie(エアリー)は広告写真を修正しないことを数年前に宣言しました。スーパーモデルのようなスリムな女性だけでなく、多様な外見のモデルを起用しています。着心地のよさを追求した製品とあいまって、米国市場では好意的に受け入れられています。2018年にはさらにインスリンポンプを付けたり、車椅子に載ったり、皮膚病を患う人々を起用したキャンペーンを展開しました。
デザイナーはセクシュアリティや人種についても意識を向ける必要があります。バービー人形で有名なマテル社は、性別・人種・職業・体型などの多様性を製品で表現し、「何にでもなれる」という可能性を女の子と両親に提示しています。
バイアスのかかったステレオタイプを排除し、多様性を受け入れるという姿勢は企業ブランドの向上にとってますます重要になっていくでしょう。ビジュアル表現に対するクライアントの要望が時代の流れに反すると感じたときには、現代のユーザーはどちらを好ましく感じるかということをデザイナーが提案する必要があるかもしれません。
ブランドを信頼してもらうために本当の姿を見せる
米国のヘルスケア企業CVS Health社は「Beauty in Real Life」(現実世界の美しさ)キャンペーンで女性モデルの写真と映像に修正加工を一切おこないませんでした。現実味のないスーパーモデルではなく、「リアルな」ユーザーのためのプロダクトであることを示し、ありのままの女性の美しさをサポートするのだというメッセージを伝えているのです。
アプリの進化のおかげで美しい「完璧な」風景写真やセルフィーをInstagramなどにアップすることができるようになりました。かつてはPhotoshopをあやつるプロにしかできなかった写真の加工は特別なものではありません。むしろ加工された写真が当たり前になっているといっていいかもしれません。そのようなユーザーに「加工された」美しい写真はあまりインパクトを与えなくなっています。よりユーザーに近い無修正の写真表現はファッションやコスメティック分野でさらに増えるでしょう。
オーガニック&ナチュラル
地球環境のサステナビリティ(持続可能性)に対する意識の高まりを反映して、オーガニックでナチュラルなデザインが2020年も採用される機会が多いでしょう。アースカラーや優しい色合い、ライトなタイポグラフィなどによって柔らかいテイストのグラフィックスが環境への関心の高いユーザーにマッチします。ミニマルデザインやフラットデザインでオーガニックなタッチの演出も試みられるでしょう。
東京オリンピックのメダルは「都市鉱山」とも呼ばれるリサイクル金属から作られます。このように、グラフィックだけではなく、パッケージや印刷物の素材に対する環境への配慮がデザイナーに求められる場面が増えるかもしれません。
パスティーシュとヴィンテージスタイル
「パスティーシュ」(pastiche)は芸術分野で作品・作風・モチーフなどを表面的に模倣したり混成することです。ロココ、ヴィクトリアン、アール・ヌーヴォー、アール・デコなど過去のアート作品やデザインをモチーフとしてヴィンテージ感を演出するデザインは今に限らずひとつの「型」でもあります。
2020年のグラフィックデザインでは、ミニマリズム、フラットデザイン、3Dグラフィックス、モーショングラフィックスなどを過去のモチーフと融合させたり、コントラストを際立たせたりする動きが強まると考えられています。50年代以降の比較的新しいグラフィックデザインもパスティーシュの対象になるでしょう。アナログレコードジャケットやビデオゲームや古いコンピューター画面などもアイデアの元となります。
ミニマリズムの対極「マキシマリズム」デザイン
マキシマリズム(maximalism)は、ミニマリズムとは正反対の方向性です。過剰・豊潤・過密・無秩序がその特徴となります。単純にミニマルデザインとの差別化を図るケースもあるでしょう。
今やミニマリズムが主流となっている現在では、サブカルチャーや反体制の表現として、ストリートアートと通底するデザインとして選ばれる場合もあります。また、タイポグラフィのエッジーなスタイルとして、アウトラインやグラデーション、3D化にとどまらず、緻密で複雑なパターンや別の要素を組み合わせた過剰な装飾をほどこしたものもマキシマリズムのひとつと言えます。
液体をモチーフにしたデザイン表現
無重力空間を漂う水滴のように立体的な液体のかたまりで、オブジェやロゴ、タイポグラフィなどを描くスタイルです。抽象的コンセプト・動き・透明感・明るさなどを表現したい場合に選択肢に入るでしょう。また、墨流しのような優しい曲線で描かれる有機的なデザインもさまざまな場面で登場すると予想されます。
背景であったり、文字で切り抜かれたりといった使われ方から、Webサイトのビジュアルでアニメーションで提示されることもあります。
デジタルメディアだけに可能な最先端の映像表現
NHK「Eテレ」に相当する英国の「BBC Two」は2018年にリブランディングをおこないました。そのときに制作されたプロモーション映像はデジタルテクノロジーとアーティストの粋を集めた最先端の作品です。グラフィックスや映像表現のショーケースと言えます。
また、Apple社のAirPods ProのWebサイトページはスクロールに合わせて画像やテキストが変化します。基本的には製品のプロモーショナル動画と同じ内容ですが、まるで自分で映像を編集しているかのような感覚を抱きます。
従来のスクロールに合わせてグラフィックが変化するといった単純な構成とは別の次元のプレゼンテーションです。
まとめ
プロダクトやサービスに影響を与える社会全体の大きな動きは、サステナビリディ、多様性、テクノロジー、不安定といったキーワードで表現できるのではないでしょうか。2020年には、こういったものがブランディングやグラフィックデザインに影響をおよぼすことが予測されています。
また、デザイン表現の面では、ミニマリズムとその反動、タイポグラフィでの実験、時代の隔たりを超えたアートやデザインスタイルのマッシュアップ、ストリートカルチャーにインスパイアされたグラフィックスなどがトレンドの中で存在感を増すと考えられます。
【参考資料】
・Graphic Design Trends 2020: Breaking the Rules (https://graphicmama.com/blog/graphic-design-trends-2020/)
・10 stunning graphic design trends for 2020 (https://99designs.com/blog/trends/graphic-design-trends/)
・20 top graphic design trends for 2020 (https://www.creativebloq.com/features/graphic-design-trends-2020)
・Top Graphic Design Trends 2020: Breaking the Rules (https://www.youtube.com/watch?v=VPigkgekalc)




