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アナリストの視点(ファンド)
繰上償還の“実態”-注意すべき純資産額の水準は?
2018-06-29
近年、国内投信市場において新規設定ファンド数が頭打ちとなる一方、償還ファンド数が増加傾向となっている。国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETFを含む、以下同じ)のうち、2013年の新規設定ファンドは748本であったが、2017年には480本まで減少した。一方で、同期間の償還ファンドは188本から293本に増加した(図表1)。結果的に、2013年以降で見るとファンド本数は増加しているものの、増加率は鈍化傾向となっている。ファンドの“生存競争”は今まで以上に激しさを増しており、投資を行う際に長期にわたって運用されるかを見極めることがますます重要になっている。
図表1:ファンドの新規設定、償還本数の推移
※ 2018年は5月末まで
出所:モーニングスター作成
具体的に注意すべきポイントに入る前に、ファンドの償還について改めて説明したい。ファンドの償還とは信託財産の清算を行い、投資家に対して投資口数に応じた償還金を返還することを指す。償還には大きく分けて(1)ファンドごとに決められている信託期間の終了に伴う「定時償還」、(2)ファンドの規模(純資産額)が小さくなったなどの理由により、信託期間中の途中で運用が終了する「繰上償還」の2つがある。
今回は特に(2)繰上償還についての注意点を確認したい。繰上償還が発生すると、投資家は他のファンドに乗換をするか現金化するか等を考える必要があり、意図しないタイミングでポートフォリオの見直しを迫られることになる。また、税制面でも繰上償還が発生した場合にはその時点で損益が確定することになるため、利益が出ていれば課税されることになる。逆に含み損が発生している場合には値上がりを待つという選択肢を取ることができず、その時点で損失が確定してしまう。このようなデメリットを避けるために、具体的にどのような点に注意してファンドを選べばよいだろうか。
純資産額が繰上償還比率を大きく左右
繰上償還されたファンドの傾向を探るために、2015年12月末時点で運用されていた5,047ファンド中、2016年1月以降に繰上償還が決定し、かつ2018年5月末までに繰上償還した309ファンドを調べた。結果を見ると、繰上償還の最大の要因としては、ファンドの純資産額が大きく影響している(図表2)。2015年12月末時点で運用されていたファンドのうちその後償還したファンドの比率を「繰上償還比率」として見たところ、全体の繰上償還比率は6.1%となっている。同月末時点の純資産額の水準で区切って同比率を見ると、純資産額が10億円以上~30億円未満が3.1%にとどまっているのに対して、3億円以上~10億円未満になると13.2%と大きく差が開いており、10億円という水準が繰上償還の可能性が高まる一つの目安となる。
なお、繰上償還した309本のうち2015年12月末までの1年間で1億円以上の流入超過となったファンドは1本もなく、約8割のファンドが流出超過となっており、投資家の支持が低下していることが表れている。
図表2:純資産額別にみる繰上償還比率
※ 2015年12月末時点の純資産額別の本数を基準に、2016年1月以降に繰上償還が決定し、かつ2018年5月末までに実際に償還したファンドの割合を残高別に集計
出所:モーニングスター作成
インデックス、アクティブで見ると?
また、上記309本をアクティブファンド、インデックスファンド別に見ると、本数はそれぞれ25本、284本となっている。繰上償還比率はインデックスファンドが3.7%と、アクティブファンドの6.5%をやや下回ったものの、大きな差は見られなかった(図表3)。
図表3:アクティブ・インデックスファンド別にみる繰上償還比率
※ 条件は図表2に同じ
出所:モーニングスター作成
もっとも、過去数年で低コストのインデックスファンドの設定が相次いでいるが、これらのファンドの中には純資産額が10億円に満たないファンドも少なくない。主要な指数に連動するインデックスファンドを例として挙げると、2018年5月末現在で純資産額が10億円未満のファンドは「TOPIX連動型」が15本、「MSCIコクサイ(円ベース)連動型」が12本、「シティ世界国債(除く日本、円ベース)連動型」が14本あり、設定から5年未満のファンドがいずれも過半数を超えている。インデックスファンドは信託報酬の水準が注目されがちだが、長期で投資する上では、繰上償還を避けるために純資産額の水準にも注意するようにしたい。
(永長 祥典)
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