今野忍、菊地直己、三輪さち子、斉藤太郎
通常国会の論戦が最初の山場を迎えます。27日から、安倍晋三首相ら全閣僚が出席し、衆参両院で相次いで予算委員会が開催。この日は衆院予算委です。「桜を見る会」問題やカジノを含む統合型リゾート(IR)事業の汚職事件、辞任閣僚らの公職選挙法違反疑惑などをめぐる首相と野党の攻防をタイムラインで速報し、記者が解説します。
通常国会の衆院予算委員会の初日は、午前中の論戦が終わった。午後は主に野党が質問する。
加藤勝信・厚生労働相は衆院予算委員会で、新型コロナウイルスによる肺炎に対する日本国民の対応について「過剰な心配はしていただく状況にはないと思っている」と述べた。「通常のかぜやインフルエンザの時のせきのエチケット、手洗い、うがいの励行などをお願いしている。そうしたことに努めていただきたい」と呼びかけた。
加藤氏が特に必要性を強調したのはマスクの着用。「せきをするときにつばきとかが拡散すると、感染につながる。マスクをしたり、ティッシュをしたりして、それを防いでいただきたい」と述べた。さらに「手で防ぐのはやめていただきたい。手から手への感染となるので、マスク、場合によっては衣服などで防ぐようお願いしている」と語った。
公明党の国重徹氏への答弁。
中国・武漢市(湖北省)の在留邦人の帰国をめぐり、自民党の二階俊博幹事長は27日午前、チャーター機を28日にも派遣する、との報告を政府から受けたことを明らかにした。自民党の緊急役員会後に記者団に語った。
安倍晋三首相は衆院予算委員会で、憲法9条を改正して「自衛隊を明記」することへの意欲を改めて語った。小野寺五典元防衛相(自民党)の質問に答える形で強調した。
首相は「(私が)自民党総裁として一石を投じた考えは、現行の憲法第9条の1項2項を残した上で、自衛隊の存在を憲法に明記することだ」と答弁。中東派遣など自衛隊が任務を果たしている事例を引き、「近年の調査でも自衛隊は合憲と言い切る憲法学者は2割にとどまっている。その結果、多くの教科書には自衛隊の合憲性には議論があるとの記述があり、自衛隊諸官の子どもたちもこの教科書で学んでいるという現実がある」と述べた。
さらに、「このような状況に終止符を打つことは、私たちの世代の責任ではないか。そのためにも憲法にしっかりと自衛隊を明記する」と語った。
安倍首相が提起する「9条の1項2項をそのままにして自衛隊を明記」という案をめぐっては、自民党内にも「『戦力の不保持』という2項をそのままに自衛隊を明記しても、自衛隊は戦力ではないのかという議論が残り、何も解決しない」(防衛相経験者)との指摘がある。だが、安倍首相はこの日の答弁で「政治の場において彼らの正当性をしっかりと明らかにしてく。そういう責任が政治家にはあるのではないか」と述べるなど、与党内の懸念には触れなかった。
新型コロナウイルスによる肺炎の拡大をめぐり、菅義偉官房長官は午前の記者会見で、中国政府が団体旅行の禁止を決めたことによる日本の観光や経済への影響について、「今回の件がどの程度の期間にわたって影響を及ぼすことになるのか、まずはじっくりと情報収集、状況を注視したいと思う」と述べた。
拡大する衆院予算委で答弁する菅義偉官房長官=2020年1月27日午前10時4分、岩下毅撮影
(みどころ解説=斉藤太郎記者)
衆院予算委員会の午後の質疑には野党議員たちが登場し、安倍晋三首相の答弁場面が増えそうだ。「桜を見る会」やIR汚職だけでなく、新たに持ち上がった河井案里参院議員(自民党)陣営への選挙資金「1億5千万円」問題をめぐる論戦も注目される。首相が答弁を誤れば、自民党議員からも厳しい批判にさらされる可能性があるからだ。
選挙違反疑惑が浮上している河井氏(参院広島選挙区)の陣営は、昨年7月の参院選で党本部から1億5千万円の資金を受け取っていたとされる。案里氏自身が23日、週刊文春の報道を受けて事実関係を認めた。
党内には波紋が広がる。
昨年の参院選で党本部が候補者に提供した資金は、同じ広島選挙区で公認された岸田派重鎮の溝手顕正・元防災担当相らを含め1500万円ほどだという。案里氏は相場の10倍の資金を受け取っていた計算になる。
金額ばかりでなく、広島選挙区の特殊な構図が、党内の不協和音を生んでいる。
溝手氏と確執があったとされる首相は、菅義偉官房長官らとともに案里氏を擁立。「官邸」上げて全面支援した格好で、その結果、溝手氏は次点で敗れた。「ポスト安倍」に向けて禅譲をうかがうとも言われる岸田文雄政調会長だが、心中穏やかなわけがない。
午後1時半過ぎから質問に立つ野党統一会派の議員たちは、この1億5千万円問題についても追及する構えだ。丁々発止の論戦では、思わぬ本音が飛び出すこともある。首相の答弁次第では、桜を見る会の問題などをめぐり野党内に渦巻く「長期政権のおごり」への批判が、自民党内にも広がりかねない。
きょうの野党の質問者は江田憲司氏、大串博志氏、黒岩宇洋氏、今井雅人氏、大西健介氏の5人。午後5時ごろに散会する予定となっている。
元防衛相の小野寺五典氏(自民党)は質問で、中東海域への自衛隊派遣を取り上げた。小野寺氏は「不測の事態が起きて、(自衛隊法に基づき)海上警備行動を出した場合でも、活動には制約がある」と指摘した。
小野寺氏が特に指摘したのは「日本関係船舶」について。日本の会社が運航する外国船籍の船だ。日本に石油などを運ぶ船のうち、多くがこの日本関係船舶だという。
海上警備行動が発令された場合、自衛隊は日本船籍の船を守るために武器を使用することはできるが、日本関係船舶や外国籍の船を守るために武器を使用することはできない。小野寺氏は「拡声機で呼びかけて抗議したり、自衛官が自らを盾にして守ったりすることしかできない。迅速に対応できるのか」と質問した。
これに対し、河野太郎防衛相は答弁で「日本関係船舶には、呼びかけや近接といった実力行使をともなわない措置を行うことができる。外国籍の場合でも、通報や人命救助など人道上必要な措置は行える」として、対応できるとの考えを示した。
政府は、中東海域で航行する日本関係船舶の安全確保のための情報収集を目的として、海上自衛隊を派遣した。P3C哨戒機と護衛艦が任務に当たる。根拠法は防衛省設置法に定められた「調査・研究」で、不測の事態になれば自衛隊法に基づいて「海上警備行動」を発令する。活動期間は1年間で、延長する場合は再度、閣議決定する。
安倍政権は昨年末、派遣を決めたが、その後、イラン革命防衛隊司令官殺害と、それに報復するイランのミサイル攻撃があった。
中国・武漢市(湖北省)で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の拡大を受け、自民党は27日午前、党本部で緊急の役員会を開いた。会議の冒頭、二階俊博幹事長は「在留邦人の安全確保に最優先で取り組まなければならない」と指摘。国内での感染拡大防止に向けた水際対策の必要性を強調し、政府側に対応を求めた。
衆院予算委員会では、沖縄県でCSF(豚コレラ)に感染した豚が見つかったことを受けたやりとりも行われた。江藤拓農林水産相は「海を隔てた沖縄で発生したことは大きな衝撃だ」として、「沖縄固有種のアグー豚について、沖縄の協力と判断があれば、国が100%移動費、それから施設整備含めて隔離、種の保存のための移動をさせていただく」と述べた。
アグーは沖縄固有の豚で、小型の「島豚」が由来とされる。沖縄県が実施している殺処分の対象には、在来種のほか西洋種をかけ合わせて肉質が人気の「アグーブランド」も含まれる。肉質は独特の霜降りで、脂身の独特の甘みとうまみに定評がある。
沖縄戦や外来種の輸入などにより、アグーは1981年ごろには30頭ほどまで激減。その後ブランド化に成功し、現在は県内で約1100頭ほど飼育されている。CSF拡大の懸念がこれ以上あれば、海を渡っての隔離の必要性が出てくる。農水相の答弁は、その予算をすべて国が負担することを約束したものだ。
安倍晋三首相は、総事業費25兆円の経済対策の意義を語った。「三つの柱がある。一つは自然災害からの復旧・復興。米中貿易摩擦、英国のブレグジット(EU離脱)など、海外発の下方リスクへの万全の備え。加えて東京五輪・パラリンピック後の力強い成長を実現するためのものだ」と答弁。さらに、「次代の競争力の源泉となる分野への大胆な投資」として、すべての小中学生に1人1台のIT端末をそろえることをめざすと語った。
また、西村康稔経済再生相は経済対策の背景について、「我が国経済は緩やかな回復を続ける中にあるが、世界経済の減速を背景に輸出、生産は弱含んでいる。台風など相次ぐ自然災害、11月以降の暖冬、前回ほどではないが消費税引き上げに伴う影響がみられ、消費者マインドは依然として低水準」と語った。自民党の金子恭之氏への答弁。
拡大する衆院予算委で答弁する安倍晋三首相=2020年1月27日午前9時51分、岩下毅撮影
午前は与党による質疑で、昼前まで自民党議員の質問が続きます。質問者の「トップバッター」福井照氏は新型コロナウイルスをめぐる安倍晋三首相の対応について、「総理のご決断に改めて敬意と感謝を捧げたい」「安倍総理の完璧なまでのリーダーシップに敬意を表したい」と手放しに称賛を繰り返しました。
与党議員によるこうした「ヨイショ質問」は、実は珍しくありません。昨年10月の参院予算委員会でも、世論の賛否が割れていた日米貿易協定をめぐって、自民で外務省出身の松川るい氏が「安倍総理、茂木大臣の卓越した外交能力、交渉能力により、非常に良いタイミングで短期間にまとめてくださったことを、日本国民を代表して感謝したい」と質問。安倍政権の対応を褒めちぎりました。
議院内閣制のもとで政権を支える与党議員が、政策の方向性などで首相らと足並みをそろえること自体には、それほど違和感はありません。
しかし、国会の重要な役割は「行政監視機能」です。与党議員だからこそ、野党議員には入らない情報や資料を官僚から得ることもできるかもしれません。「ヨイショ」に終始するのではなく、時には政権に対案を突きつけるような骨太の議論を見せてもらいたいものです。
拡大する衆院予算委で質問する自民党の福井照氏=2020年1月27日午前9時1分、伊藤進之介撮影
安倍晋三首相が出席し、今年初めての予算委員会がいよいよ始まりました。衆院では今日と明日、参院では29、30日の2日間ずつの補正予算案審議、さらに31日には各院で集中審議が開かれることが決まっています。首相が出席する予算委員会は「国会の花形」。テレビで中継され、質問者には知名度が高く、鋭い質問で知られる「論客」たちが選ばれます。
ところが、首相が出席する予算委の日数はこのところ減る傾向にあります。昨年の通常国会は衆参計20日間で、第2次安倍政権では最短記録でした。第2次政権発足直後の2013年に比べると、3分の2以下になっています。
首相が出る予算委の日数はどう決まるのでしょうか。与野党の交渉で決まります。慣例的に、政府予算案が審議入りした直後の数日と、採決する直前に開催されます。それに加え、国民的な関心が高い問題が起きた場合には、首相が答弁に立つ集中審議というのも開かれます。
政権を取り巻く疑惑が多い時には、野党は予算委を開くよう求め、与党は渋る傾向があります。世論の動向を見極めながら、与野党が駆け引きします。予算委の日数は、与野党の国会攻防における重要な交渉カードなのです。
衆院予算委員会の冒頭は、中国・武漢市(湖北省)で発生した新型コロナウイルスによる肺炎拡大について取り上げられた。安倍晋三首相は28日の閣議で感染症法の「指定感染症」に指定する方針を明らかにした。首相は「新型コロナウイルスの感染拡大の防止に向けて、全力をあげて取り組んでいく」と答弁。自民党の福井照氏の質問に答えた。
拡大する首相官邸に入る安倍晋三首相=2020年1月27日午前7時14分、岩下毅撮影
中国・武漢市(湖北省)で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の拡大を受け、首相官邸は27日朝、危機管理センターに設けた「情報連絡室」を26日夜に「官邸対策室」に改組したことを発表した。態勢強化の一環だ。
衆院予算委員会が午前8時58分、始まった。安倍晋三首相が約2カ月半ぶりに国会の予算委の答弁に立つ。首相が「一問一答」形式の国会論戦に臨むのは、「桜を見る会」問題が噴出した昨年11月8日の参院予算委以来だ。野党からの厳しい追及が予想される。
桜を見る会の招待者名簿の違法管理問題、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐる汚職事件、公職選挙法違反が指摘された「辞任閣僚」関連先への家宅捜索――。野党が求めてきた予算委開催を与党が拒否している間に、政権をめぐるさまざまな問題が浮上した。
朝日新聞の世論調査では、昨年12月に内閣支持率は38%に下落。1年ぶりに不支持率が上回った。
そして迎えるこの日の衆院予算委。厳しく追及する場を待ち望んでいた野党議員たちの質問と、正念場を迎えた首相の答弁がかみ合うか。建設的な論戦が交わされるかが注目される。
午前の質問者は与党のみ。自民党の福井照氏、金子恭之氏、阿部俊子氏が防災・減災対策などを取り上げた後、午前11時ごろから小野寺五典・元防衛相が中東海域への自衛隊派遣をめぐり政府の見解をただす予定だ。正午から午後1時までの休憩時間をまたぐ格好で公明党の国重徹氏が質問し、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大への対策などを取り上げる見通し。
野党議員に質問時間が回ってくるのは、午後1時半過ぎとみられる。野党統一会派の江田憲司氏、大串博志氏、黒岩宇洋氏、今井雅人氏、大西健介氏の5人が次々と質問に立ち、桜を見る会問題やIR汚職事件などをめぐり首相を問いただす展開となりそうだ。午後5時ごろに散会する予定。
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