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【社説】

山火事と温暖化 気温が3度上がったら

 今この瞬間にも広がり続けるオーストラリアの森林火災。日本の広さの半分近くを、のみ込んだ。気象学者は「気候危機との関係は疑いようがない」という。そして「あれが未来の地球の姿だ」と。

 昨年九月ごろから続くオーストラリアの森林火災は、首都キャンベラの近郊にまで及ぶ勢いだ。

 これまでにウルグアイ一国の総面積に迫る千七百万ヘクタールが焼失し三十人近くが亡くなった。

 世界自然保護基金(WWF)によると、希少な固有種を含む十二億匹以上の動物たちが犠牲になったといい、重いやけどを負ったコアラが、むさぼるように水を求める映像とともに、世界中に驚きと悲しみが広がっている。

 もともとの原因は、落雷とみられるが、ここまで被害を大きくしたのは、温暖化の影響だ。

 昨年オーストラリアでは、国全体の年間平均気温が過去最高で、平均降水量が過去最少だった。雨不足による乾燥が森林火災を悪化させている。

 森林火災の凶暴化は、オーストラリアだけではない。ブラジル・アマゾン川流域の熱帯雨林では昨年一月から八月にかけて、四万五千件近い火災が起きた。

 世界気象機関(WMO)は「(世界的な温度上昇の影響で)ハバナや日本では、壊滅的な台風やサイクロンの被害が発生し、北極やオーストラリアでは森林火災が発生した」と指摘する。

 森林火災の影響は、生態系の破壊だけにはとどまらない。

 森林は二酸化炭素(CO2)を吸収、固定する役割を果たしている。森が焼ければ、それらが一気に放出される。

 北極のツンドラ地帯で山火事が広がれば、土中に眠る泥炭が燃え上がり、やはり大量のCO2が排出されて、温暖化を進行させる地球規模の悪循環になっていく。

 現状のままでは、世界の平均気温は産業革命前より三度以上上昇し、未知の大災害が頻発するようになるというのが、もはや科学の常識だ。

 英BBCのサイトによると、英国気象庁などの研究チームは「大規模な森林火災は、今は異常な災害だ。だが『三度上昇』の未来では、日常の光景になるだろう」と予測する。

 というよりも、私たちは「三度上昇」の世界へすでに、足を踏み入れてしまったのではないか。

 いずれにしても、もうこれ以上、温暖化対策を先送りする余裕はないということだ。

 

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