▼ジェネリック
製薬会社社員は、ジェネリックを飲まない
医療用医薬品は、新医薬品(先発薬)とジェネリック医薬品(後発薬)に分けられる。先発薬と同じ有効成分を含み、有効性・安全性が先発薬と同等であるとして国から製造・販売が認められたのがジェネリック医薬品だ。
ただ、有効成分以外にも、製法や製造にも特許があり、これらの特許が切れなければ同じ添加物を用いたり、同じ工程で製造したりすることはできない。そのため、ジェネリック医薬品は厳密には先発薬とは異なっている。
谷本氏によると、ジェネリック医薬品は製薬メーカーが国内の自社工場で製造するばかりでなく、中国やインドなど海外から原料や製剤を輸入して製造されるケースが増え、工程の不備で発がん性物質が混入し、製品が回収される事態も起こっているという。「先発薬のメーカーが同じ工場で製造する、オーソライズドジェネリック(AG)と呼ばれる後発薬は比較的信頼性が高いといえそうです」(谷本氏)。
抗てんかん薬、抗がん剤、抗真菌薬以外は自社製品をすべて飲んだというA氏も、ジェネリックには抵抗があるという。「正直なところジェネリックは避けたいですね。できれば先発薬が安心です」と本音を明かす。B氏は「診療報酬ではジェネリックを使用することで保険点数が加算されるようになっています。それでも製薬メーカーの社員の中にはジェネリック医薬品は絶対に飲まないという人もいます」。
同じ治療薬なら古い薬より新薬を使ってみたいと思うのは医師も患者も同じだろう。しかし、谷本氏は「新薬は効果の点で期待できても、まれな副作用のデータが少なく値段も高いので、安易に飛びつくのは勧められません。クスリには、副作用はつきものです。新薬の発売後、半年から1年ぐらいたって使用経験の情報が集まるまで待つのも1つでしょう」と釘を刺す。
石川県生まれ。鳥取県育ち。九州大学医学部卒業。内科医。探査ジャーナリズムNGO・ワセダクロニクルと医療ガバナンス研究所の共同プロジェクト、「製薬会社と医師」に参加。著書に『知ってはいけない薬のカラクリ』など。
陳 維嘉
中国・上海市出身。1997年、九州大学医学部卒業。2005年、九州大学医学部医学博士。日本整形外科学会専門医。現在は、福岡徳洲会病院人工関節・リウマチ外科センター医長。国際医療支援室室長を務める。
田中伸明
熊本県人吉高校出身。鹿児島大学医学部卒業。日本神経学会認定医。厚生労働省、外資系コンサル会社などを経て、現在、心療内科ベスリクリニック理事長。ビジネスパーソンのメンタル障害の解決に尽力している。
